1 大きなヘビの総称。おろち。うわばみ。「鬼が住むか蛇が住むか」
2 《「蛇之助」の略》大酒飲み。酒豪。
「どちらへ似ても―の子孫」〈浄・淀鯉〉
《「へみ」の音変化》有鱗(ゆうりん)目ヘビ亜目の爬虫(はちゅう)類の総称。体は円筒形で細長く、四肢を欠く。全身うろこにおおわれ、腹部のうろこを起伏させながら体をくねらせて進む。舌は先が二つに分かれ、空気の振動やにおい、温度差を感じ取る。目は1枚の膜に覆われ、まぶたは固着していて動かない。卵生または卵胎生。カエル・ネズミ・小鳥や鳥の卵を捕り、丸飲みする。アオダイショウなど無毒のもの、マムシ・ハブなど有毒のものがある。南極を除く各大陸に広く分布するが、熱帯・亜熱帯に多い。一般に、執念深いなどとして人に嫌われるが、神の使いなどともされる。くちなわ。ながむし。かがち。《季 夏》「―逃げて我を見し眼の草に残る/虚子」
「へび(蛇)」に同じ。
「四つの―五つの鬼(もの)の集まれる穢(きたな)き身をば」〈仏足石歌〉
《形が朽ちた縄に似ているところから》ヘビの別名。《季 夏》
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出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
〘名〙 「
へび(蛇)」の
異名。《季・夏》 〔十巻本和名抄(934頃)〕
※徒然草(1331頃)二〇七「大きなるくちなは、数もしらずこりあつまりたる塚ありけり」
[語誌]平安時代には「へみ」とともに無毒の蛇の総称であった。「へみ」はすでに「仏足石歌」などの資料に見えるが、「くちなは」は平安以降の和文脈で用いられることが多い。
〘名〙
① 大きなヘビの総称。また、古代中国の想像上の動物。龍に似て、手足がない。おろち。うわばみ。大蛇。だ。
※古本説話集(1130頃か)五五「釈迦仏(さかほとけ)、道をおはしけるに、黄金(こがね)を多く埋みたるを御らんじて、そのじゃの上な踏みそと仰せられければ」 〔詩経‐小雅・斯干〕
② 富士権現で土産として売っている麦わらのへビ。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)四「みやげに買った蛇の舌でうそを付」
③ 大酒飲みをいう。酒豪。大酒家。蛇之助(じゃのすけ)。うわばみ。
※浄瑠璃・淀鯉出世滝徳(1709頃)上「親茂庵といふたも命を酒にかへられた、鯉殿の母ごぜももとはここにつとめた人、どちらへにても蛇(ジャ)のしそん」
④ 取引市場付近で仲買人などによって行なわれる賭博の一つ。数枚の銅貨をかさね、一番下の銅貨の裏表にかけるもの。〔取引所用語字彙(1917)〕
〘名〙 ヘビ。じゃ。
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一七「繊(ほそ)き蛇(ダ)の」
〘名〙
① 爬虫類有鱗(ゆうりん)目ヘビ亜目に属する動物の総称。体は細長い円筒形で、縄状を呈する。体表は小鱗でおおわれ、四肢は退化・消失している。口は大きく開き、きわめて大きな獲物でも飲みこむ。舌は細長く、先端は二またに分かれる。腹面のうろこは前進運動をたすける。口内に毒牙を持つもの(毒ヘビ)もあり、人畜に被害を与える。シマヘビ、アオダイショウ、ニシキヘビ、マムシ、コブラ、ハブなど。へみ。くちなわ。ながむし。《季・夏》
※源平盛衰記(14C前)一四「大なる蛇(ヘビ)はひ出て、重盛の右の膝の下へはい入けり」
② (比喩的に) 執念深いこと。また、その人。
[補注]上代には「へみ」と呼ばれていたが、平安時代に「くちなは」が現われ、「へみ」と共存した。
※仏足石歌(753頃)「四つの閇美(ヘミ)五つの鬼(もの)の 集まれる穢(きたな)き身をば 厭(いと)ひ捨つべし 離れ捨つべし」
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世界大百科事典内の蛇の言及
【能面】より
…ほかに阿形では天神,黒髭(くろひげ),顰(しかみ),獅子口など,吽形では熊坂(くまさか)がある。能面の鬼類では女性に属する蛇や般若,橋姫,山姥(やまんば)などのあることが特筆される。(3)は年齢や霊的な表現の濃淡で区別される。…
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