〘形口〙 さか
し 〘形シク〙 (「さかし(盛)」と同語源か)
※
万葉(8C後)三・三四〇「古
(いにしへ)の七の賢
(さかしき)人たちも欲
(ほ)りせしものは酒
にしあるらし」
※霊異記(810‐824)上「景戒性を禀(う)くること儒(サカシク)あらず、濁れる意澄(すま)し難し。〈興福寺本訓釈 儒 左可之久〉」
※
源氏(1001‐14頃)藤裏葉「さかしき人も、女の筋には乱るるためしあるを」
③ 判断力がしっかりしていて、心がまどわない。強気である。気丈である。正気である。
※竹取(9C末‐10C初)「心さかしきもの念じて射んとすれどもほかざまへいきければ」
※源氏(1001‐14頃)明石「神の鳴りひらめくさま更にいはむ方なくて、落ちかかりぬとおぼゆるに、ある限りさかしき人なし」
④ 気がきいていて、とりえがある。
※土左(935頃)承平四年一二月二六日「こと人々のもありけれど、さかしきもなかるべし」
[二] なまいきな才知、分別があって、すきがない。
① 才知、分別だけあって、人間味が欠けている。かしこぶって、さしでがましい。こざかしい。
※枕(10C終)二五九「さかしきもの、今様の三歳児(みとせご)。〈略〉下衆の家の女あるじ」
② 他人のことについて、あれこれと口ぎたなくいうさまである。小うるさいさまである。
※俳諧・冬の日(1685)「
たそがれを横にながむる月ほ
そし〈
杜国〉 となりさかしき町に下り居る〈重五〉」
[三] 丈夫である。頑健である。壮健である。
※
蜻蛉(974頃)上「おのがさかしからん時こそ、いかでもいかでもものし給はめと思へば、かくて死なばこれこそは見奉るべき限りなめれなど」
※貴理師端往来(1568頃)「ここもともみなみなさかしく候」
[
補注]
原義については、「しっかりとすきのないさま」「判断力に自信を持っているさま」「精神的に自立しているさま」などと
諸説あるが、いずれにせよ、本来は
頭脳の明晰さを表わす語ではないとされる。多く肯定的に用いられるが、体言形「さかしら」、また、中世以降に見られる、
接頭辞のついた「こざかし」は、多くマイナスの意味で用いられる。
さかし‐が・る
〘自ラ四〙
さかし‐げ
〘形動〙
さかし‐さ
〘名〙