賢しい(読み)サカシイ

デジタル大辞泉 「賢しい」の意味・読み・例文・類語

さかし・い【賢しい】

[形][文]さか・し[シク]《「さか」と同語源か》
才知がすぐれ判断力があるさま。かしこい。賢明である。「―・いやり方」「競争社会を―・く生き抜く」
才知のあるように見せかけるさま。こざかしい。「―・い口をきく」
心がしっかりしている。気丈である。
「心―・しき者、念じて射むとすれども」〈竹取
すぐれて見えるさま。じょうずである。気がきいている。
こと人々のもありけれど、―・しきもなかるべし」〈土佐
健康であるさま。
「おのが―・しからむときこそ、いかでもいかでもものし給はめと思へば、かく死なば」〈かげろふ・上〉
[派生]さかしげ[形動]
[類語](1賢い利口鋭敏機敏俊敏明敏鋭いさと目聡い過敏敏感炯眼けいがん利発聡明怜悧れいり慧敏穎悟えいご英明英邁賢明犀利さいりシャープ耳聡い耳が早い早耳地獄耳目が早い先見の明予覚飛耳長目気が利く嗅ぐ嗅ぎ付ける嗅ぎ出す嗅ぎ当てる嗅ぎ取る嗅ぎ分ける虫の知らせ虫が知らせる第六感予感直感ひらめき察知インスピレーションぴんとぴんと来る鼻が利く感じ取る気が付く/(2小利口あざといずるいこすいこすっからいあくどい狡猾ずる賢い小賢しい賢しら悪賢い老獪海千山千抜け目が無い要領がいい悪い悪辣奸悪邪悪奸佞陰険性悪悪性俗悪凶悪極悪罪悪悪徳背徳悪行悪事悪逆巨悪諸悪暴悪卑劣陋劣ろうれつよこしまさがない腹黒い腹汚い人悪い人が悪い人悪口さがない悪たれ悪たれる意地悪い意地悪邪慳突っ慳貪けんけんつんけんとげとげしいつんつん素気無すげなそっけないつれないよそよそしいにべないけんもほろろ冷たい気がないぎすぎすぶっきらぼう

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精選版 日本国語大辞典 「賢しい」の意味・読み・例文・類語

さかし・い【賢】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]さか〘 形容詞シク活用 〙 ( 「さかし(盛)」と同語源か )
  2. [ 一 ] 才知、分別があって、しっかりしている。
    1. 知徳が衆にぬきんでて優れている。
      1. [初出の実例]「古(いにしへ)の七の賢(さかしき)人たちも欲(ほ)りせしものは酒にしあるらし」(出典:万葉集(8C後)三・三四〇)
    2. 理性的ですきがない。かしこい。賢明である。
      1. [初出の実例]「景戒性を禀(う)くること儒(サカシク)あらず、濁れる意澄(すま)し難し。〈興福寺本訓釈 儒 左可之久〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
      2. 「さかしき人も、女の筋には乱るるためしあるを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)藤裏葉)
    3. 判断力がしっかりしていて、心がまどわない。強気である。気丈である。正気である。
      1. [初出の実例]「心さかしきもの念じて射んとすれどもほかざまへいきければ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「神の鳴りひらめくさま更にいはむ方なくて、落ちかかりぬとおぼゆるに、ある限りさかしき人なし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    4. 気がきいていて、とりえがある。
      1. [初出の実例]「こと人々のもありけれど、さかしきもなかるべし」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二六日)
  3. [ 二 ] なまいきな才知、分別があって、すきがない。
    1. 才知、分別だけあって、人間味が欠けている。かしこぶって、さしでがましい。こざかしい。
      1. [初出の実例]「まさにさかしき事せんや」(出典:落窪物語(10C後)一)
      2. 「さかしきもの、今様の三歳児(みとせご)。〈略〉下衆の家の女あるじ」(出典:枕草子(10C終)二五九)
    2. 他人のことについて、あれこれと口ぎたなくいうさまである。小うるさいさまである。
      1. [初出の実例]「たそがれを横にながむる月ほそし〈杜国〉 となりさかしき町に下り居る〈重五〉」(出典:俳諧・冬の日(1685))
  4. [ 三 ] 丈夫である。頑健である。壮健である。
    1. [初出の実例]「おのがさかしからん時こそ、いかでもいかでもものし給はめと思へば、かくて死なばこれこそは見奉るべき限りなめれなど」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
    2. 「ここもともみなみなさかしく候」(出典:貴理師端往来(1568頃))

賢しいの補助注記

原義については、「しっかりとすきのないさま」「判断力に自信を持っているさま」「精神的に自立しているさま」などと諸説あるが、いずれにせよ、本来頭脳の明晰さを表わす語ではないとされる。多く肯定的に用いられるが、体言形「さかしら」、また、中世以降に見られる、接頭辞のついた「こざかし」は、多くマイナスの意味で用いられる。

賢しいの派生語

さかし‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙

賢しいの派生語

さかし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

賢しいの派生語

さかし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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