追う(読み)オウ

デジタル大辞泉 「追う」の意味・読み・例文・類語

お・う〔おふ〕【追う/逐う】

[動ワ五(ハ四)]

㋐先に進むものに行き着こうとして急ぐ。あとをついて行く。追いかける。「母親のあとを―・う幼な子」「逃走者を―・う」「機影をレーダーで―・う」
㋑目標となるものに至り着こうとする。また、あるものを得ようとする。追い求める。「理想を―・う」「世の流行を―・う」「掘り出し物を―・って古本屋をまわる」

順序に従って進む。「順を―・って話す」「話の筋を―・ってみる」
㋑時間が経過するのに従って変化する。「日を―・って忙しくなる」
無理にその場所・地位などを去らせる。追い払う。追い立てる。「地位を―・われる」「子犬が―・っても―・ってもついてくる」「はえを―・う」
(「…に追われる」の形で)せきたてられて余裕のない状態である。「生活に―・われる」「仕事に―・われる」
せきたてて先に進ませる。「牛を―・う生活」
目的の場所を目ざして進む。
「和泉のなだより小津のとまりを―・ふ」〈土佐
貴人の行列先払いをする。先追う。
容儀をいつくしく整へ、御さきに―・ひて」〈継体紀〉
[可能]おえる
[下接句]あごはえを追う頭の上の蠅を追う跡を追うおとがいで蠅を追うかんを追う先を追う去る者は追わず鹿しか中原ちゅうげんに鹿を逐う二兎にとを追う日を追って
[類語]付け回す追い回す跡を追う跡をつける追いかける追い詰める追いつく追い越す追い抜く追い上げる追い込む尾行追跡追尾深追い急追猛追

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「追う」の意味・読み・例文・類語

お・うおふ【追・逐】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. 先に進むものに到達しようとして、あとから急いで行く。追いかける。
    1. [初出の実例]「夕猟に 千鳥ふみ立て 於敷(オフ)ごとに ゆるすことなく」(出典万葉集(8C後)一七・四〇一一)
    2. 「まことにやあらん、かいぞくおふといへば」(出典:土左日記(935頃)承平五年正月二六日)
  3. あとから行って、先のものに至り着く。追いつく。
    1. [初出の実例]「ここの草(さう)の本など入れて、御車にをひてたてまつれ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  4. 場所、物事など、ある目標をめざして進んで行く。追い求める。「理想を追う」
    1. [初出の実例]「あかつきに舟を出だして、室津をおふ」(出典:土左日記(935頃)承平五年正月一一日)
    2. 「我は新月の光を趁(オ)ひて、又同じところに来しに」(出典:即興詩人(1892‐1901)〈森鴎外訳〉未練)
  5. あとから事を行なう。
    1. (イ) 死後、その人の功績人柄をしのんで行なう。
      1. [初出の実例]「坂本財臣卒(みまか)りぬ。壬申の年の労に由りて、小紫の位を贈(オヒてたま)ふ」(出典:日本書紀(720)天武二年五月(北野本訓))
    2. (ロ) 少したってあとから物事を行なう。→追って
      1. [初出の実例]「かへりごと、やがておひて書く」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  6. (物事の順序、時の流れ、既成の道、先人の跡などに)そのまま従って行く。「順を追う」
    1. [初出の実例]「としまかりおいぬ。身のふかう、としををいてまさる」(出典:古本説話集(1130頃か)四〇)
    2. 「従来の弊を追(オ)って遊ばせておいちゃアいけねへヨ」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
  7. ある場所や地位から退け去らせる。追い払う。追放する。「職を追われる」
    1. [初出の実例]「うれたきや しこほととぎす 暁(あかとき)の うら悲しきに 追(おへ)ど追(おへ)ど なほし来鳴きて」(出典:万葉集(8C後)八・一五〇七)
  8. 順序や時がすすむ。回を重ねてくる。
    1. [初出の実例]「雑誌は号を逐(オ)ふて発売部数を増加し」(出典:黒い眼と茶色の目(1914)〈徳富蘆花〉四)
  9. ひとつの物事のあとに次の物事がつづく。
    1. [初出の実例]「廻れ右をすると、分隊長の声が追って来た」(出典:野火(1951)〈大岡昇平〉一)
  10. ( 「目で追う」の形で用いる ) 動きに従って視線を走らせる。
    1. [初出の実例]「サーシャは〈略〉、その若い人々を目で追った」(出典:ブルジョア(1930)〈芹沢光治良〉二)
  11. あるものをさぐってもとめる。さがしもとめる。
    1. [初出の実例]「なほ退屈しずに彼女等の生活を追ふなら」(出典:唐人お吉(1928)〈十一谷義三郎〉二)
  12. ( 「追われる」の形で用いる ) ある物事にせめたてられる。「仕事に追われる」
    1. [初出の実例]「祝言の日取りが早かったので、美濃屋は準備に追われた」(出典:湯葉(1960)〈芝木好子〉)
  13. 貴人が通るときに、お供の者が前方の人を去らせる。先を追う。
    1. [初出の実例]「前駈(みさき)警蹕(オヒ)て、奄然(にはか)にして至る」(出典:日本書紀(720)継体元年正月(前田本訓))
  14. (牛、馬などを)せきたてて先に進ませる。
    1. [初出の実例]「御牛を追(おひ)たりければ」(出典:徒然草(1331頃)一一四)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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