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出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
肺炎は、
原因となる病原体(病因微生物)などの種類により、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、
病理形態学的な分類では、
患者さんの背景による分類では、
院内肺炎ガイドライン(2008年改訂)では、生命予後予測因子5項目(①悪性腫瘍または免疫不全、②血中酸素濃度、③意識レベル、④年齢(70歳以上)、⑤脱水)とCRP(C反応性蛋白)20㎎以上などが重視されています。
肺炎のなかで最も頻度の高いものです。かぜ症候群に引き続き起こる市中肺炎では、肺炎球菌、インフルエンザ菌、連鎖球菌(とくにミレリグループ)によるものが多くなっています。慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎(はんさいきかんしえん)、気管支拡張症などをもつ患者さんには、インフルエンザ菌、肺炎球菌、モラキセラ(ブランハメラ)、
市中肺炎の原因微生物の上位7種を表2に示します。院内肺炎では、発症前に抗菌薬が使用されていると、MRSA(メチシリン
原因別の特徴は以下のようになっています。
・肺炎球菌性肺炎:市中肺炎の起炎菌としての頻度が最も高い。
・インフルエンザ菌性肺炎:慢性気道感染患者の気管支肺炎としてみられる。
・黄色ブドウ球菌性肺炎:気管支(
・レジオネラ肺炎:クーリングタワーの稼働時期に集団発生がみられる。
・クレブシエラ肺炎:高齢者、アルコール多飲者に発症しやすい。
・緑膿菌性肺炎:院内肺炎の代表的菌種で、化学療法歴の長い症例では、緑膿菌の持続感染がみられる。
15~25歳の若年者に比較的多く、頑固な乾いた
③クラミジア肺炎
鳥類との接触歴のある人に多く、高熱、乾いた咳、頭痛、筋肉痛などがみられます。
肺炎を起こすウイルスは、呼吸器系ウイルス(
発熱、全身
痰は粘性膿性から、のちに特異的なさび色の痰になります。肺炎の重症度は、呼吸困難の程度、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青色になる)の有無、意識障害の有無などにより判断されます。
検査所見としては、白血球増加、CRP高値などの炎症反応が特徴的です。胸部X線検査では、気管支内空気(エアブロンコグラム:気管支空気像)や肺胞空気像を伴う
痰の検査をして、肺炎の原因菌を探します。膿性痰(うみ状の痰)では細菌感染症が疑われます。細菌培養検査、グラム染色、痰の染色所見、血清診断(抗体価)以外に、肺炎球菌やレジオネラの尿中抗原検出キットによる迅速診断ができます。
化学療法が主ですが、補助療法(免疫グロブリン製剤やGCSF製剤や好中球エラスターゼ阻害薬など)や呼吸管理なども重要です。体力の弱っている高齢者では、口から薬をのむことができず、逆に食欲不振が増して
●化学療法
肺への移行がよい薬としてマクロライド、クリンダマイシン、テトラサイクリン、リファンピシン、ニューキノロン系薬剤、アミノ配糖体系抗菌薬があります。肺炎球菌、連鎖球菌では、ペニシリン、マクロライド、セフェム系抗生物質が効果的です。
黄色ブドウ球菌は近年MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が増加しており、多剤に耐性ができている(薬が効かない)場合、バンコマイシンが使用されます。マイコプラズマ肺炎ではテトラサイクリン系、マクロライド系抗生物質が有効です。
●一般療法、補助療法
全身の栄養状態の改善、痰が出にくい時の療法、脱水に対する処置、低酸素血症に対する酸素療法などが必要です。人工呼吸管理を必要とする場合もあります。
呼吸器専門医のいる病院(とくに国立病院機構の呼吸器専門病院など)を受診し、相談する必要があります。
岡田 全司
高度高齢化社会を迎えて、肺炎の重要性が増しています。抗菌薬の発達にもかかわらず、肺炎は全死亡原因の第4位、高齢者に限ってみると第1位です。高齢者肺炎のほとんどは、
肺炎による死亡は60代では10万例あたり5人程度ですが、80代では、10万例あたり約70~160人で10倍以上になります。85歳以上では、10万人あたり年間2000人以上が肺炎で死亡し、毎日200人以上が肺炎で治療されていると推定されます。
誤嚥性肺炎は、
不顕性誤嚥は、特別な現象ではありません。元気な高齢者であっても、夜間は嚥下機能が低下するため、容易に誤嚥してしまいます。とくに、鎮静薬、向精神薬などの薬を服用している場合は、嚥下反射が抑えられ、不顕性誤嚥を起こしやすいものです。加齢とともに、のどぼとけの位置は下がり、嚥下の時にのどをふさぐのに時間がかかるようになるからです。
しかし、不顕性誤嚥のすべてが肺炎を発症するわけではなく、軽度の炎症であれば、そのまま治癒します。むせているからといってすぐに絶食にして予防する必要はありません。しかし、体位変換ができない場合や重症
誤嚥性肺炎は適切な抗生物質の投与で治ることが多いものです。ただし、肺炎の原因である不顕性誤嚥が減らなければ、いったん改善した肺炎が悪化します。そこで、誤嚥を減らす予防策が重要となります。あお向けに寝かして放置していると誤嚥が悪化するので、頭部や上半身をベッドで高くしたり、口腔ケアなどを行うと有効です。口腔ケアは、肺炎の原因となる口腔内の病原微生物を減らし、その結果として肺炎を減らすのに有効です。たとえ歯がなくともブラッシングをしたり、就寝前にポピヨンヨードでうがいすることも有効な方法です。栄養状態の低下、筋力の低下、意識レベルの低下が誤嚥を増やすため、日ごろよりこれらに対処しておきましょう。
また、嚥下を改善する物質が知られています。アンジオテンシン
加齢とともに増える不顕性誤嚥を完全になくすことは困難ですが、誤嚥を防ぐ対策は無数にあります。自分に合った予防策を立てましょう。
寺本 信嗣
肺炎は病原微生物が肺胞に進入して、肺胞壁に
年齢層別では、乳児期は細菌によるものが最も多く、幼児期では細菌とウイルスによるものが多く、学童期では肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジアによるものが多くなると報告されています。
原因となる細菌で最も多いものはインフルエンザ菌、ついで肺炎球菌となります。
肺炎は肺の局所症状ばかりでなく、併発する上・下気道感染症状と重なることが多く、全身症状として発熱、
また、1~5歳未満の幼児では、多呼吸が細菌性肺炎を疑わせるよい指標であるとの報告があります。
肺炎の診断は、急性呼吸器症状に加えて、胸部X線写真で新たに現れた異常
肺炎があっても、外来での治療は可能ですが、発熱が持続し、咳が強く水分も十分にとれないなど、全身状態が不良な場合には入院治療が必要となります。細菌培養の結果はすぐには判明しないため、胸部X線写真や血液検査の結果から、細菌かウイルスかマイコプラズマかを推定し、治療を開始します。
細菌やマイコプラズマに対しては抗菌薬が使用され、とくにマイコプラズマではマクロライド系の抗菌薬が使用されます。ウイルス性では、インフルエンザウイルスなど一部のものには有効な抗ウイルス薬が使用されますが、それら以外には有効な薬剤がなく、使用されません。
そのほか、気管支を拡張する気管支拡張薬や、痰を切りやすくする
坂井 貴胤
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
多くの場合,細菌やウイルスによって起こる肺の急性炎症で,病理形態学的には肺胞内への炎症性滲出をおもな特徴とする疾患。かつては肺結核と並んで1,2位を争う,致命率の高い重篤な呼吸器疾患として恐れられたが,化学療法の進歩普及により容易に制御しうる疾患となった。日本でも,1900年には,肺炎・気管支炎が死因の第1位で,人口10万人に対する死亡率は226.1であったが,96年には,死因第4位,死亡率56.9となっている。しかし今日でも,重症疾患の末期に起こる末期肺炎,乳幼児,老人の肺炎などは依然として致命率が高い。
肺炎の分類は従来,発生機序,病理形態学,病原体などの観点から行われてきた。発生機序からみると,外界より特異的病原体が肺に侵入して起こる急性特異性肺炎(原発性肺炎)と,全身性重症疾患,老衰,手術後などのため防御力の低下によって上気道細菌叢で汚染された分泌物を吸引して起こす吸引性肺炎(二次性肺炎)とに分類され,そのほか,腸チフス,ブルセラ症,ペストなどの系統的感染症の経過中にその病原体により起こる転移性肺炎が挙げられる。病理形態学的にみると,肺内の炎症性変化の広がりと分布により,肺葉全体に炎症性変化の及ぶ大葉性肺炎lobar pneumonia(クルップ性肺炎)と,主として気管支とその周囲の肺胞組織に散在性に炎症を起こす気管支肺炎bronchopneumonia(小葉性肺炎)に分けられる。病因もしくは病原菌により分類すると,表のようになる。この分類は,化学療法などの治療法を選択するうえにきわめて有用である。これらのうち,ウイルス性肺炎およびウイルス様微生物による肺炎には,自覚症状が一般に軽く,X線像で特徴的陰影を呈し,白血球増加を示さず,痰中に病原細菌を証明せず,寒冷凝集反応が陽性を示す原発性非定型肺炎primaryatypical pneumonia(略称PAP。異型肺炎)が含まれ,その30~40%はマイコプラズマ肺炎で,他は不明のウイルスによる肺炎と考えられている。また,ウイルス性肺炎は2次的に細菌性肺炎を合併して悪化することがある。なお,これら肺胞内への炎症性滲出を主体とする肺炎に対し,肺の間質に炎症を起こす疾患があり,これを間質性肺炎と呼んで前者と区別している。前者は,間質性肺炎に対し,肺胞性肺炎と呼ばれることもある。
化学療法剤の早期投与により,従来いわれている典型的症状をみることはまれになったが,肺炎双球菌による大葉性肺炎についてみると,倦怠感,頭痛,食欲不振などの前駆症状が2~3日続いたのち,悪寒・戦慄を伴って40℃に及ぶ高熱を発し,胸痛,ついで呼吸困難が出現する。胸痛を緩和するため患側を下にして横臥することもあり,110~140に及ぶ頻脈,顔面の紅潮,口唇ヘルペスがあり,呼吸は浅く鼻翼呼吸となりチアノーゼ状態となる。高熱は5~10日間続き(稽留(けいりゆう)熱),その後多量の発汗とともに数時間で解熱する(分利性解熱)か,ときに数日間にわたって徐々に解熱する(渙散(かんさん)性解熱)。咳は病初は痰を伴わない乾性咳嗽(がいそう)(からせき)であるが,しだいに黄色膿性,ときに鉄さび色の痰を出す。重症例では,不安,せん妄,嗜眠,昏睡などの神経症状,便秘,鼓腸などの消化器症状や黄疸を起こすことがある。
胸部打聴診で濁音,捻髪音,気管支音,水泡性ラッセル音が聞かれ,著しい白血球増加があり,X線像では肺葉に一致した陰影をみる。気管支肺炎では,症状は潜行的で熱型も不規則となる。病原菌により肺炎像にも特徴があり,ブドウ球菌や肺炎杆菌による肺炎では膿瘍の形成がみられることがあり,ウイルス性肺炎では白血球数は正常範囲内にあるかときに減少し,X線像の変化に比べて症状は軽いなどである。
症状経過と胸部所見,X線像,白血球数,痰の細菌検査などによって診断する。
ウイルス性肺炎では,病初および回復期血清について抗体価の変動をみる。とくに病原菌の検索は治療計画を立てるうえにも重要であり,細菌性肺炎では菌血症もみられるので血液培養も行い,痰のみならず経気管吸引または経皮吸引針生検などにより,病巣局所から直接検体を採取する工夫もされている。また,細菌の分離同定とともに薬剤感受性検査も併せて実施する。そのほか,気管支ファイバースコープを用いて経気管支肺生検を行い,サイトメガロウイルス肺炎の核内封入体や,ニューモシスチス・カリニ肺炎の原虫Pneumocystis cariniiの検出も行われる。
化学療法剤の進歩普及は肺炎の治療を容易にし,入院治療させずに外来通院治療もひろく行われるようになった。治療の中心は化学療法であるが,一般療法,対症療法も軽視できない。
(1)一般療法 絶対安静とし保温に留意する。食事は,有熱時は果汁,スープなどの流動食とし,解熱後は消化しやすい高カロリー食とする。有熱時は水分,電解質の喪失が著しいので,輸液も行われる。
(2)対症療法 胸痛に対して鎮痛剤,局所の温湿布のほか,脊柱から胸骨まで大きな絆創膏をはり,呼吸運動を制限すると,痛みが緩和される。咳は胸痛,不眠,衰弱の原因となるため鎮咳剤を用いるが,痰の喀出を妨げないようにする。解熱剤は,再発熱により体力を消耗させ,熱型をみだして化学療法の効果判定を妨げるので一般には使用しない。呼吸困難には酸素吸入をするが,老人とくに慢性閉塞性肺疾患を合併しているときは,動脈血ガス分析を行いつつ慎重に実施する。循環障害を合併した場合は,強心剤,昇圧剤,ときに抗生物質と併用して副腎皮質ホルモンの投与も行う。
(3)化学療法 ペニシリン系,クロラムフェニコール,セフェム系,マクロライド系,アミノグルコシド系,ホスホマイシンなど多種類の抗生物質や抗真菌剤,抗原虫剤が用いられる。肺炎の病原菌も種々多様であり,かつ薬剤に対する感受性も同一菌種でも異なることがあるので,起炎菌の分離同定と薬剤感受性の結果で薬剤を選択することが望ましいが,病初は起炎菌を推定し薬剤の抗菌スペクトルを併せ考えて治療する。起炎菌を確定できない場合には,抗菌スペクトルを広げるため多剤併用も行う。ウイルス性肺炎にも,2次性細菌性肺炎を防止するため抗生物質を与える。なお,これら抗生物質には,薬剤アレルギー,アナフィラキシーショック,肝障害,造血器障害などの副作用があることもあるので,注意が必要である。
肺胞中隔,肺胞道,小葉間間質などの肺間質に浮腫,細胞浸潤,ついで繊維性肥厚,さらに細気管支拡張による小囊胞形成へと進む病理形態学的特徴をもつ一群の疾患をさす。前記の肺炎に対して,肺臓炎pneumonitisなる用語で区別することもある。原因の明らかなものとして,ウイルス,弱毒細菌による感染,制癌剤,降圧剤の副作用として起こるもの,膠原(こうげん)病の肺病変によるものなどがあるが,狭義には原因不明のものを扱う。
乾性咳嗽と動作時の息ぎれで発病し,急性型では発熱,倦怠感があり,慢性型では関節痛,レイノー症状(手の指が白~紫色になる症状)などの膠原病に似た症状を呈する。X線像はすりガラス状,小輪状陰影などがみられるが,ついには蜂巣状陰影を呈する。呼吸機能検査では拘束性障害と低酸素血症がみられる。診断は,開胸肺生検もしくは経気管支肺生検により肺組織の小片を採取し,病理組織学的に診断する。治療には副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤が用いられ,予後は急性型で1ヵ月以内に死亡するものから慢性型で10年余に及ぶものまである。
執筆者:木村 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
肺実質に炎症のあるものをいい、肺間質に病変のあるものは間質性肺炎または肺臓炎pneumonitisという。細菌、マイコプラズマ、ウイルスなどの感染により原発性または続発性にくることが多いが、真菌、寄生虫、原虫によるもの、物理的、化学的あるいは原因不明のものもある。
細菌性肺炎は、一肺葉以上のものを大葉性肺炎、一肺区域以下のものを気管支肺炎(または巣状肺炎)と大別されるが、第二次世界大戦後、化学療法の発達により、このような病理解剖学的な分類よりも起炎菌の検索を重視し、起炎菌名を冠した分類が一般に行われている。すなわち、ブドウ球菌性肺炎、大腸菌性肺炎のようによばれるが、グラム陽性球菌性肺炎とグラム陰性桿菌(かんきん)性肺炎とに大別することもある。健康成人に原発性におこる肺炎は、主としてグラム陽性球菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎であり、入院患者あるいは基礎疾患をもっている患者におこる肺炎は、圧倒的にグラム陰性桿菌性肺炎が多い。
細菌性肺炎の発症はほとんどが急性で、悪寒、戦慄(せんりつ)、発熱、咳(せき)、痰(たん)、胸痛、呼吸困難などの自覚症状がある。痰の多くは膿(のう)性で、ときに血痰、銹(さび)色痰が認められる。発熱は39~40℃となるが、高齢者では発熱の程度がかならずしも重症度を示さないので注意が必要である。チアノーゼや意識混濁も多い。細菌性肺炎では化学療法前に喀痰(かくたん)あるいは血液培養によって起炎菌の検出を試みることが必要である。血沈は亢進(こうしん)し、白血球増加が認められる。治療の根本は化学療法である。起炎菌が決定されたときは、その起炎菌が感受性を示す抗生物質を選択するが、通常は起炎菌が未定で推定しながら化学療法を行う。肺炎はインフルエンザの流行に一致して急増することが多く、また基礎疾患として心疾患や肺疾患を合併することが多い。グラム陰性桿菌性肺炎の予後は不良である。
マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマ・ニューモニエMycoplasma pneumoniaeの感染によっておこる。4年の周期で流行がみられるといわれ、年度によって異なるが、全肺炎の30%くらいを占め、若年者に多い。もっとも多い症状は発熱と咳である。X線写真ではベール状の淡い陰影が下肺野にみられることが多い。マイコプラズマに対する抗体価および寒冷凝集反応が、回復期には急性期の4倍以上に上昇するものが多い。喀痰、咽頭(いんとう)ぬぐい液からマイコプラズマが分離される。エリスロマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールが有効で、予後はよい。
ウイルスによっても肺炎がおこる。下気道感染をおこすウイルスとしては、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、麻疹(ましん)ウイルス、サイトメガロウイルスなどがある。ウイルス感染はおもに上気道感染で、成人ではめったに肺炎になることはないが、小児では肺炎となる。ことにRSウイルスとアデノウイルスが、小児のウイルス肺炎をおこすおもなウイルスである。ウイルス肺炎は寒冷地に多く、ときに爆発的な流行をみることがある。予後は一般に良好である。小児、高齢者、心肺機能に障害のある場合では、細菌感染を合併すると予後不良のこともある。
リケッチアによる肺炎としては、Q熱による肺炎、ロッキー山紅斑(こうはん)熱、つつが虫病による肺炎があり、原虫によるニューモシスチス‐カリニpneumocystis carinii肺炎もある。そのほか、アレルギー性肺炎、リポイド肺炎、放射線性肺炎、薬物性肺炎、嚥下(えんげ)性肺炎などがある。
[山口智道]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報
…炎症の〈炎〉は,肺炎,中耳炎,虫垂炎などと日常使われている言葉で,身体の一部分の器官の名前の後に付けて,その部分に起こった熱や痛みを伴う病気を示している。炎症とは,このように〈炎〉の付く病気や,また〈炎〉の付かない病気でも日常よくみる“はれもの”とか“できもの”のように熱,痛み,はれを伴う病気の総称であり,腫瘍とか循環障害とか奇形などとは異なった疾患群を示す医学用語である。…
※「肺炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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