巫女(読み)ミコ

デジタル大辞泉 「巫女」の意味・読み・例文・類語

み‐こ【巫女/神子】

神社に属し、神楽を舞ったり神事に奉仕して神職を補佐する女性。かんなぎ
祈祷・卜占ぼくせんや死者の口寄せをする女性。東北地方いたこ、沖縄地方のゆたなどの類。ふじょ。「恐山おそれざんの―」
古代ギリシャや古代ローマにおいて神に仕え、神の意思を託宣した女性。
[類語]霊媒占い師易者八卦見手相見陰陽師巫女ふじょ市子いたこゆた口寄せかんなぎシャーマン尼僧修道女シスター

ふ‐じょ〔‐ヂヨ〕【×巫女】

神に仕えて神意を伝える女。未婚の処女とされる場合が多い。みこ。かんなぎ。
[類語]霊媒占い師易者八卦見手相見陰陽師巫女みこ市子いたこゆた口寄せかんなぎシャーマン

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精選版 日本国語大辞典 「巫女」の意味・読み・例文・類語

み‐こ【巫女・神子】

  1. 〘 名詞 〙 神に奉仕して、神楽(かぐら)などをする者。また、祈祷を行ない、神託を告げたり、口寄(くちよせ)などをしたりする者。未婚の女性が多い。かんなぎ。ふじょ。いちこ
    1. 巫女〈年中行事絵巻〉
      巫女〈年中行事絵巻〉
    2. [初出の実例]「金の御嶽にあるみこの、打つ、鼓」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
    3. 「聞て悦ぶ神子(ミコ)の口、問てたもって愁ひの根元」(出典:浮世草子世間娘容気(1717)二)

ふ‐じょ‥ヂョ【巫女】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「ぶじょ」とも ) 神につかえてその託宣を人に告げる女。かんなぎ。みこ。
    1. [初出の実例]「羌児が旧曲は残溜を移す 巫女が別粧は暁の風に染む〈村上天皇〉」(出典:新撰朗詠集(12C前)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「巫女」の意味・わかりやすい解説

巫女/神子 (みこ)

神霊・死霊をはじめもろもろの精霊の憑依をうけて,その意思を人々に託宣する呪術宗教者。男女を区別して前者を覡,後者を巫と記す。《和名抄》に巫を加牟奈岐(かむなき),覡を乎乃古加牟奈岐(おのこかむなき)としているところをみると本来,巫女がもとであったことがわかる。各地域で活躍する巫女にはそれぞれ地域ごとの呼称が非常に多い。また語源についても神の子を意味する〈みかんこ〉の転としたり,貴人の子を敬って称する語としたり,神と人との間に介在して神意を人々に伝達する役がらから神そのものとみられたとする説などあって定かでない。けれども,その性能から神社巫女と口寄せ巫女の2種に大別できる。

神社に奉仕する女性のうち神楽(かぐら)や湯立の神事で重役を果たす神女である。鈴振り神子,湯立神子,神楽神子とも称される。これにもローカルタームがあって,宮中の神事に奉仕した御巫(みかんこ),伊勢神宮の斎宮(いつきのみや),賀茂神社の斎院またはアレオトメ,熱田神宮の惣の市(そうのいち),鹿島神宮の物忌(ものいみ),厳島神社の内侍(ないし),美保神社の市(いち)などが著名である。けれども現在では,本来の神がかり現象を示すものはほとんどみられない。多くは祭礼にあたり神事のなかで神楽を舞うだけの神楽神子で,著しく芸能化してしまった。その神子神楽のなかで託宣の遺風がわずかにみとめられるのが備前・備中・備後に伝わる荒神神楽や弓神楽,石見の大元神楽であろう。これらのなかでは神子(女)と太夫(男)とが一対となって活躍した時代が長くつづいたが,今日では神子が衰滅して,もっぱら男子によって担われている。その典型は大元神楽の託太夫(たくだゆう)で,藁蛇の託綱(たくづな)によりかかって神がかり,託宣する。本来神子の職掌であった神託が男性にゆだねられた例は,修験道の山伏・行者に多くみられ,木曾の御岳行者による憑(よ)り祈禱,東北の葉山行者ノリワラ・憑り人による託宣儀礼などに顕現する。

神霊や死霊の憑依をうけて精霊の意思を人々に伝える巫女をいう。ときには行方不明となった生者の口寄せもするが,それを生口(いきくち)と称する。これに対し死霊の場合を死口(しにくち),神霊の憑着による託宣を神口(かみくち)と区別し,巫法に若干の違いをみせている。神霊を下ろす神口は神社巫女の手法と類似するが,この神下ろしは,いかなる口寄せにあたっても冒頭に必ず試みねばならないとしているところに,古風さをしのばせている。もっとも広く,また活況を呈するのは死霊の口寄せで,北は青森県から南は沖縄にいたるまで分布する。東北地方の民間巫女はもっぱら死口を業とするが,死後の期間によって新口寄せと古口寄せの二つに分ける。前者は死後100日までの新ボトケを対象とし,その新ボトケが肉親,縁者,知友に語りかけるという方式で展開する。後者は100日を超えた古ボトケをよび出すが,その際,家の祖先の知るかぎりのホトケが順次に現れ,それとの対話をこころみるしかたとなる。したがって前者がその死の直後,初七日か四十九日までに施行されるのに対し,後者は年忌とか盆・彼岸を期して行われ,それを年忌口・彼岸口などとよぶ。幼児の死,不慮の災害による非業の死者については特別念入りの口寄せを実施する。会場いっぱいを造花で飾る〈花寄せ〉,同一死者に対し2回施す〈二度の梓(あずさ)〉,七座の供膳をそなえて丁重に行う〈七(なな)くらよせ〉,あるいは霊前に小型の舟をつくって供え,口寄せの終わったのち死者の霊や供物のすべてを舟にのせて海へ流す〈舟っこ流し〉など,手のこんだ形式がみられる。

 口寄せ巫女の名称も地方ごとに多彩である。東北地方では,イタコイチコ,アサヒ,アズサ,アリマサ,オガミサマ,オガミン,ワカオナカマ,ミゴ,オシンメイなどもっとも多様である。これにつづいては越後のマンチ,佐渡のアリマサ,信州のノノウ,北関東のオオユミ,ササハタキ,瀬戸内のコンガラサマ,土佐のイツ,北九州のホウニン,イチジョウ,南九州のメシジョウ,ネーシ,ガラス,沖縄のユタ,カンカカリャ,ムヌチなどが著名である。これらの成巫過程は大きく二分され,東北地方を代表するイタコなどは,盲女が初潮前に師匠をもとめて弟子入りし,4,5年の修業時代をへたのち,〈神憑け〉と称する入巫儀礼を通過して一本立ちする。これに対し沖縄のユタなどは原因不明の巫病にかかり苦悩ののち捜神の遍歴を重ね神霊の憑依をうけて神ダーリ(神がかり)に入り,精霊の託宣をこころみる。前者を修業型,後者を召命型とよぶこともできる。こんにち伝統的巫女は衰退一途をたどるが,このなかから新宗教教祖が多く輩出している。
シャマニズム
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「巫女」の意味・わかりやすい解説

巫女
みこ

神霊に奉仕する女性、童女のこと。古来、日本には宮廷や神社に仕え、神職の下にあって祭典の奉仕や神楽(かぐら)をもっぱら行うものと、民間にあって神霊や死霊の口寄せなどを営む呪術(じゅじゅつ)的祈祷(きとう)師の二つの巫女の系統がある。前者の例では、神祇(じんぎ)官に仕える御巫(みかんなぎ)(大御巫、坐摩(いがすり)巫、御門(みかど)巫、生島(いくしま)巫)、宮中内侍所(ないしどころ)の刀自(とじ)、伊勢(いせ)神宮の物忌(ものいみ)(子良(こら))、大神(おおみわ)神社の宮能売(みやのめ)、熱田(あつた)神宮の惣(そう)ノ市(いち)、松尾神社の斎子(いつきこ)、鹿島(かしま)神宮の物忌(ものいみ)、厳島(いつくしま)神社の内侍(ないし)、塩竈(しおがま)神社の若(わか)、羽黒神社の女別当(おんなべっとう)などがあり、いずれも処女をこれにあてた。これに対して、民間の巫女には、市子(いちこ)の語が全国的に用いられている。市子は、斎子(いつきこ)の転訛(てんか)であるともいう。また、東北地方では、巫女のことを一般にいたこといい、これらの巫女はほとんど盲目である。そのほか、関東の梓(あずさ)巫女、羽後(うご)の座頭嬶(ざとうかか)、陸中の盲女僧、常陸(ひたち)の笹帚(ささはた)きなどの称がある。これら二つの系統の巫女は、その起源をたどれば、もともと神に仕えるのが女性であったことに由来する。たとえば、邪馬台(やまたい)国の卑弥呼(ひみこ)が鬼道に仕えたとする記事や、記紀の伝承にみえる天照大神(あまてらすおおみかみ)、倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)、倭姫命(やまとひめのみこと)、神功(じんぐう)皇后などには、神に仕える女性としての原型がみられる。沖縄では現在も主として女性のみが神に仕えることができる、という根強い信仰がある。のろやゆたがこれで、のろは女職で、その名称は神託を宣(の)ることに由来し、各集落のウタキ(拝所)やカムアシャギなどで祭祀(さいし)を行ったりオモロ(古謡)を歌い舞う。これに対し、ゆたは、いたこ、市子などと語源的に同系のものと思われ、中年を過ぎて突発的に神がかり状態になり、その資格を得ることが多い。神がかりをしていろいろの占いや死霊・生霊の口寄せを職とする。本州では、のろにあたる女性司祭者の地位が、早く男性神職にとってかわられ、神社巫女として神職の補助的な役割を担うようになったと考えられている。

[茂木貞純]

『山上伊豆母著『巫女の歴史』(1972・雄山閣出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巫女」の意味・わかりやすい解説

巫女
みこ

神子とも書く。神に奉仕する女性の総称。本来は,神社において憑坐 (よりまし) として神託を伝えるのを務めとし,このため清浄な女性であることが条件とされ,未婚の女性を任命し,結婚とともに退職させるのが決りであった。現在では,その職能は縮小され,神楽舞や湯立神事などの儀式に奉仕するのが務めとなっている。一方,これらの神社に奉仕するものとは別に,諸方を旅して暮す歩き巫女と呼ばれる存在もあった。地方によってイチコ,イタコ梓巫女などさまざまな呼称がある。彼女らは口寄せ,卜占などを行いながら村々を回って生活したが,のちには,その語る神歌や神句は遊芸化し,彼女らも本来の性格を失って,多くの者が絵解比丘尼 (→絵解き ) や遊女に化した。 (→シャーマン )  

巫女
ふじょ

巫女」のページをご覧ください。

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旺文社日本史事典 三訂版 「巫女」の解説

巫女
みこ

古代,神に仕え神託を告げた女性
シャーマンの系統。邪馬台国 (やまたいこく) の女王卑弥呼 (ひみこ) や垂仁天皇の皇女倭姫命 (やまとひめのみこと) などが有名。伊勢神宮の斎宮など純粋性こそ失ったが広く後世に残っている。

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普及版 字通 「巫女」の読み・字形・画数・意味

【巫女】ふじよ

みこ。

字通「巫」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の巫女の言及

【いたこ】より

…東北地方の津軽・南部地域で活躍する巫女の名称。多くは盲目の女性で,初潮前の少女期に師匠を決め弟子入りする。…

【満功】より

…佐々木喜善(きぜん)の《聴耳草紙》に採録されている長須田(ながすだ)マンコの話では,生まれたばかりの赤子を鷲(わし)にさらわれ,13年後に地獄山で愛児と再会する母の名前がマンコである。マンコは後に愛児が修行する寺の近くの地獄山に庵を建てて住み,巫女となって毎日念仏を唱えたとされる。地獄山には今日でもマンコ屋敷跡があって,あたりには賽(さい)の河原のように小石を積んだ小さな塔がたくさんある。…

【ムーダン】より

…その機能は司祭,巫医,卜占予言,霊媒,神話の伝承者,芸能娯楽的機能等であるが,最も重要なのは芸能娯楽的機能である。ムーダンは本来〈歌舞降神〉の巫女を意味し,歌舞に巧みなことが巫女としての資格の重要な要素である。 朝鮮のシャーマンは入巫形態から降神巫と世襲司祭巫の二つに分類される。…

【口寄せ】より

…シャーマン(巫者)が超越霊の憑依(ひようい)をうけて自我喪失の形で発する言葉,またはそうした呪儀を行う宗教職能者をさす。日本のシャーマンは,神社に所属する巫女(みこ)のように神楽や湯立てに奉仕するうちに祭神の憑依(神がかり)によって神託を述べる神社巫女と,民間にあって神仏の憑霊によるかあるいは死霊(ホトケ)の憑依をうけ,その意向を宣告する口寄せ巫女の2種に類別される。かつては前者の活躍がめだったが,神道教説の体系化にともない神社祭祀から巫祝的要素を排除する傾向がたかまるにつれ,神社巫女の形骸化がすすみ,託宣の機能は消滅した。…

【神託】より

…神が,不思議な夢や神憑(かみがかり)などを通して,その意志を人間に伝達すること。託宣と同義に使われる場合もある。一般には〈神のお告げ〉をさすが,厳密には〈神の言葉〉をいう。神託を得る方法は,民族により,宗教によってさまざまに異なるが,共通して,夢,占い,瑞祥(吉兆),供犠の動物の内臓の形状,天変地異,動物の鳴き声などをあげることができる。いずれも,人間の日常的判断を超える難問の解決に,神の意志が求められる場合に限られる。…

※「巫女」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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