キング(B. B. King)(読み)きんぐ(英語表記)B. B. King

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

キング(B. B. King)
きんぐ
B. B. King
(1925―2015)

アメリカのブルースシンガーギタリスト。「キング・オブ・ザ・ブルース」という称号を与えられている。1950年代に普遍的なモダン・ブルースを確立し、そのスタイルはその後も打ち破られることなく、多くの追従者を生み出した。

 ミシシッピ州ミシシッピ川とヤズー川に挟まれたデルタ地帯のイッタ・ベナ近郊にあるプランテーションに小作人の子供として生まれる。本名ライリー・B・キングRiley B. King。4歳のころから教会で歌うようになり、両親の離婚後、同州キルマイクルで学校教育を受けながら、スピリチュアル(主に旧約聖書にもとづく教会音楽)に親しむが、母親と死別し、1930年代後半は主に農作業に従事して過ごす。ブラインド・レモン・ジェファソン、ロニー・ジョンソンLonnie Johnson(1894―1970)、Tボーン・ウォーカーといったブルースのギタリスト、それも単弦奏法を得意とするモダンなスタイリストのレコードを聞き、さらにチャーリー・クリスチャンジャンゴ・ラインハルトといったジャズ・ギタリストの演奏にも衝撃を受ける。同時にゴスペル・ソングやカントリー音楽にも興味をもち、農作業を離れて音楽で身をたてることを夢見るようになる。

 1946年、従兄でコロンビア・レコードに録音もしていたデルタ・ブルースマン、ブッカ・ホワイトBukka White(1906―1977)を頼って、多くのミシシッピ出身のブルースマンが集まっていたメンフィスに出る。黒人スタッフによって運営されていたラジオ局WDIAにDJの職をみつけ「ブルース・ボーイ・キング」(これが後に略されてB・B・キングとなる)の名前で知られるようになっていった。1949年にナッシュビルのブリット・レーベルに初吹き込み、翌年からロサンゼルスの独立レーベル、モダン・RPMと専属契約を結び、1951年に出した「スリー・オクロック・ブルース」がリズム・アンド・ブルース・チャートで数週間1位となる大ヒットとなり、一躍その名をとどろかせた。これ以降「ユー・ノウ・アイ・ラブ・ユー」(1952)、「プリーズ・ラブ・ミー」(1953)、「バッド・ラック」「スウィート・リトル・エンジェル」(ともに1956)とヒットを飛ばす。主にウォーカーの影響から出発し、単弦奏法ギターチョーキングを多用しながら、ボーカルとギターの緊張関係が生み出すダイナミズムを追求した。このころの曲が収録された代表的なアルバムに『シンギン・ザ・ブルース/ザ・ブルース』Singin' the Blues/The Blues(1956)がある。

 1960年代に入って「スウィート・シックスティーン」「ロック・ミー・ベイビー」といったヒット(『ロック・ミー・ベイビー』Rock Me Baby(1964)ほかに収録)で、ブルース歌手としても力のみなぎった作品を発表、押しも押されもせぬブルースの王者として認められ、革新的モダン・ブルース・スタイルの完成形を示す。ブルースマンとしては1960年代が全盛期となった。

 1964年には黒人聴衆を前にシカゴのリーガル劇場でライブ・レコーディングを行い、モダン・ブルースのなんたるかを示した。その後ABCパラマウントに移籍するがレイ・チャールズのような成功はしなかった。だが1960年代後半からイギリスのロック・グループからの絶賛をあび、また非黒人の聴衆を得て、ポップなマイナー調ブルース曲「ザ・スリル・イズ・ゴーン」(1971)で、世界に「B・Bあり」と知らしめる。このヒットにより日本にまでツアーを行い、日本でのブルース受容の第1ページとなった(『ライブ・イン・ジャパン』Live in Japan)。キングの人気の背景には並外れたスタミナ、ライブ志向(1990年代になるまで年間二百数十日のツアーを続けた)、気軽に見知らぬ人を楽屋へ入れたりする社交性、スター気取りのなさもあった。音楽面でもファンク、フィラデルフィア・ソウル、バラード、カントリー、ジャズとなんでもござれの積極性で、常に成功とはいいがたいものの継続的にアルバムを発表、『コンプリートリー・ウェル』(1969)、『ミッドナイト・ビリーバー』(1978)、『ブルース・サミット』(1993)といった力作も発表してきた(これら1960~1990年代の代表作は4枚組CD『キング・オブ・ザ・ブルース』(1992)等に収録されている)。エリック・クラプトンに招かれた20世紀最後の年の共作盤『ライディン・ウィズ・ザ・キング』(2000)はセールス面でも大成功を収めた。モダン・ブルースの革新者であると同時に、「ブルース大使」として世界中にブルースを紹介した功績も高く評価される。

[日暮泰文]

『B・B・キング、デイヴィッド・リッツ著、石山淳訳『だから私はブルースを歌う B・B・キング自叙伝』(2001・ブルース・インターアクションズ)』『チャールズ・カイル著、北川純子監訳『アーバン・ブルース』(2001・ブルース・インターアクションズ)』『Charles SawyerThe Arrival of B. B. King(1980, Double Day & Co., New York)』『Sebastian DanchinBlues Boy; The Life and Music of B. B. King(1998, University Press of Mississippi, Jackson)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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