イタリア語でめん類のこと。広義には,小麦,豆,米など穀類の粉に,水,牛乳,卵などの液体とバター,油,塩,酵母,その他ピュレー状にしたホウレンソウなどの諸材料を,用途に応じて混入してこねあげた練り粉一般を指す。狭義には,パスタ食品のことで,スパゲッティ,マカロニ,ラザーニャ,フェットゥチーネなどを作るための,小麦粉と卵を基本材料とする練り粉とその製品の総称。パスタの起源については定かでないが,現在残る記録から13~14世紀にはすでにあったと推定されている。これはパスタの主原料である硬質小麦が,中世前半に生産が普及してきたといわれていることと関連しよう。
パスタ食品は,工業生産によって作られる乾燥パスタと,おもに家庭やレストランで作られる手打ちパスタに大別される。乾燥パスタは,硬質小麦(デューラム)をひいた精製粉であるセモリナ粉に,卵,水,塩などを加えて混ぜ合わせ,射出成型機に通し,残留水分が12~13%になるまで乾燥させて作られる。硬質小麦はグルテンの含有量が多く,パスタ製造の過程およびゆでる過程で小麦粉のデンプンを固める作用をもっている。したがって,乾燥パスタの完成品は半透明の琥珀色に硬結し,長期間の保存にたえる。乾燥パスタは,形状によっていろいろな名前がつけられている。細長い棒状タイプは,直径2mm前後のスパゲッティを標準に,それより細いものがベルミチェッリ(バーミセリ),スパゲッティより太いものはほとんどが内部に穴があいており,ブカティーニ,マカロニ,リガトーニの順に太くなっていく。このほか,蝶の形をしたファルファッラ,貝の形をしたコンキーリエ,車輪の形をしたルオーテなど数多くある。
手打ちパスタは,通常の小麦粉100gに卵1個の割合でこね合わせ,めん棒またはパスタ・マシンを使って薄い板状にのし,いろいろな形に切り分ける。手打ちパスタは,そば状に細長く切ったタリオリーニ,きしめん状に5~6mmの幅をもたせて切ったフェットゥチーネのようにゆでてソースであえるものと,ペースト状にした肉,生ハム,ソーセージ,チーズ,卵などを詰める詰物用のパスタに分けられる。詰物をしたパスタには,方形状のラビオリ,半円形状のアニョロッティ,帽子状のカッペレッティ,円筒状のカネロニなどがある。このほか,いろいろなソースであえてオーブンで焼く長方形のラザーニャもある。
パスタ食品は大部分が,トマトソース,ミートソース,ナポリタンソース,ベシャメルソースであえたり,ソースに乳製品,加工肉類,魚介類などの具を入れたりする。さらに,オーブンで焼きあげるなど,料理の種類は多い。
執筆者:木戸 星哲
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…1861年,近代統一国家が成立すると,産業革命の影響も受けて,中世紀的雰囲気は一挙に崩れた。この時機に,アルトゥージはイタリア各地の郷土料理の境界を取り除いて,スープ,ミネストレ(パスタ,ポレンタ,リゾットなどの総称),オードブル,ソース,卵,パイ生地,詰物,揚物,ゆで物,煮物,冷製,野菜,魚料理,焼物,菓子,トルテ,シロップ,保存食,リキュール,アイスクリーム,その他の項目別に整理することによって現代イタリア料理の基礎を確立したのである。 イタリアはローマ帝国以来の歴史的背景と,地中海に突出している地理的条件から,その料理も多様性に富んでいる。…
…フランス料理(2)イタリア料理 古代ローマ以来の長い歴史を誇るイタリアでは料理も早くから発達し,ルネサンスの時代には,フランス料理に影響を与えて,その発達の契機になったといわれる。恵まれた気候風土がもたらす豊かな産物と,食べることをひじょうに重視する国民性が結びついて,数多くのパスタ,地中海の海の幸を生かした魚介料理,トマトやオリーブ(オリーブ油)の多用などに特徴づけられる,個性豊かな料理が生み出された。各地方の伝統的な郷土料理が受けつがれているのも特色の一つで,あまり手をかけずに材料の持味を生かす,家庭的で素朴な料理が多い。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」