デジタル大辞泉
「興」の意味・読み・例文・類語
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きょう【興】
- 〘 名詞 〙
- ① おもしろいこと。たのしいこと。おもしろみ。おもむき。ふぜい。興味。興趣。
- [初出の実例]「中納言喜び給て、『〈略〉興ある事申したり』とのたまひて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ② その場だけのたわむれ。一時の遊び。座興。即興。
- [初出の実例]「世には心えぬ事のおほきなり。ともあることには、まづ酒を勧めて、強ひ飲ませたるを興とする事」(出典:徒然草(1331頃)一七五)
- ③ 詩経の六義(りくぎ)の一つ。中国、古代の詩の一形式で、ある事物に感じて自分の感興を述べたもの。ある事物から、それに関連して自然に呼び起こされた自分の心情をよんだもの。和歌に当てはめて用いられることもあった。
- [初出の実例]「和歌有二六義一。一曰風。二曰賦。三曰比。四曰興。五曰雅。六曰頌」(出典:古今和歌集(905‐914)真名序)
- 「興。たとへ歌の心。五月雨はみねの松風谷の水〈救済〉これは、その物にゆゑづきたるを、見なし聞きなしたとへたる、興の句なるべし」(出典:ささめごと(1463‐64頃)上)
- [その他の文献]〔詩経大序〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「興」の読み・字形・画数・意味
興
常用漢字 16画
[字音] コウ・キョウ
[字訓] おこる・おこなう・おもむき
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
同+(きよく)+廾(きよう)。同は酒器。と廾は四手。酒器である同を、上下よりもつ形。儀礼のとき、地に酒をそそいで、地霊を慰撫することが行われた。〔礼記、楽記〕に「上下(しやうか)のを興す」とあり、上帝には(降)、地霊には興という。〔周礼、地官、舞師〕に「小祭祀には則ち興せず」とあり、小祭祀のときにはその礼を略した。地霊に酒をいで祀るとき、おそらく呪詞が唱えられたと思われるが、その語はのち〔詩〕の発想法として一の定型をなし、これを興(きよう)という。わが国の序詞・枕詞の成立と相似た関係のものである。酒を人にそそぐことを(きん)といい、新しい建造の物や器物の制作の際にも用いる。〔礼記、文王世子〕に「を興(きん)するにを用ふ」とある興は、の略体とみてよい。〔説文〕三上に「すなり」とし、字を(よ)(かつぐ)に従い同に従うもので、共同してものを起こす意とするが、地霊をよび興すのが字の原義である。それよりして、すべてものが発動し、興起する意に用いる。興趣の意は、発想としての興の引伸義であろう。
[訓義]
1. おこす、地霊をよびおこす、酒をそそいで地霊をよびおこす。
2. おきる、おきあがる。
3. おこる、はじまる、さかんになる、うごく、あらわれる。
4. おこなう、用いる。
5. たのしむ、おもむき、おもしろい。
6. 詩の発想法。主題に入るための、序詞的な表現。もとは地霊にはたらきかける呪詞的な語で〔詩〕の国風に多く遺存する。
7. と通じ、はらう、きよめる。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕興 オコル・オコス・タトヒ・タフトブ・サカユ・タトフ・オホカタ・タカシ・タクラブ 〔字鏡集〕興 サカリ・オコル・ハジメ・ヨシ・タツ・コト・シルス・ムサボル・タトヒ・ウマル・ウゴカス・ツカサドル・クシノオモ・オコス・タトフ・タフトブ・サカユ・オホカリ・タカシ・タクラブ
[声系]
〔説文〕十二下に興声として一字を収める。は「(よろこ)ぶなり」と訓し、おそらく女巫が興舞することをいう字であろう。〔文選〕の李善の〔注〕などに「興は(えつ)なり」とみえる訓は、この字であると〔段注〕にいう。またを〔説文〕に爨部三上に属し、はその省文に従って、竈(かまど)を祭るに象る字とするが、字は興に従い、鬯(かんちよう)の儀を示すもので、その声義に関係がある。
[熟語]
興悦▶・興会▶・興▶・興玩▶・興寄▶・興趣▶・興尽▶・興託▶・興致▶・興味▶・興雨▶・興雲▶・興役▶・興家▶・興化▶・興壊▶・興懐▶・興革▶・興学▶・興感▶・興起▶・興義▶・興居▶・興挙▶・興業▶・興啓▶・興慶▶・興芸▶・興建▶・興功▶・興行▶・興国▶・興作▶・興讚▶・興師▶・興思▶・興事▶・興首▶・興戎▶・興鋤▶・興昌▶・興譲▶・興寝▶・興仁▶・興衰▶・興積▶・興羨▶・興繕▶・興替▶・興治▶・興築▶・興長▶・興騰▶・興動▶・興道▶・興廃▶・興敗▶・興発▶・興富▶・興舞▶・興奮▶・興文▶・興兵▶・興輔▶・興慕▶・興邦▶・興謗▶・興亡▶・興勃▶・興名▶・興滅▶・興門▶・興妖▶・興利▶・興立▶・興隆▶・興慮▶
[下接語]
一興・逸興・雲興・佳興・感興・義興・吟興・降興・高興・座興・再興・作興・詩興・酒興・秋興・夙興・春興・振興・新興・酔興・清興・盛興・即興・中興・迭興・日興・廃興・比興・悲興・不興・風興・復興・勃興・遊興・余興・隆興
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興
こう
5世紀、倭(わ)の五王の一人。中国の正史『宋書(そうじょ)』『梁書(りょうしょ)』にみえる。安康(あんこう)天皇に比定する説がある。
[編集部]
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興
こう
「宋書」倭国伝に記される倭の五王の1人。5世紀後半頃の王。済(せい)の世子で武(ぶ)の兄。済の死後に王となった。462年,中国南朝の宋に遣使して世祖孝武帝から安東将軍号を与えられた。名前のうえからは積極的な根拠に欠けるが,済と武との系譜関係から安康天皇である可能性が強い。允恭(いんぎょう)天皇とする説もある。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
興
こう
生没年不詳
5世紀に中国に朝貢した倭の五王の一人。安康天皇に比定されている。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の興の言及
【倭の五王】より
…《宋書》によると,460年にも倭国の遣使があったとするが,これも済の派遣したものであろう。済の死後,世子の興が立ち,使者を派遣すると,これを喜んだ孝武帝は,462年,興を安東将軍・倭国王に任命した。 興の死後,弟の武が立ち,使持節・都督倭百済新羅任那加羅秦韓慕韓七国諸軍事・安東大将軍・倭国王と自称し,478年,使者を派遣して,国書を送った。…
※「興」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」