賜る(読み)タマワル

デジタル大辞泉 「賜る」の意味・読み・例文・類語

たまわ・る〔たまはる〕【賜る〔賜わる〕/給わる】

[動ラ五(四)]
「もらう」の意の謙譲語目上の人から物などをいただく。ちょうだいする。「日ごろお客様からご愛顧を―・っております」
「禄ども、しなじなに―・り給ふ」〈桐壺
「与える」の意の尊敬語。鎌倉時代以降の用法。目上の人が物などをくださる。「臣下に金一封を―・る」
神の許可を得て、通行を許してもらう。
足柄あしがらのみ坂―・り顧みずあれえ行く」〈・四三七二〉
補助動詞動詞連用形、また、それに「て」を添えた形に付いて用いる。
㋐「…てもらう」の意の謙譲語。…ていただく。
「まげて許し―・らん」〈徒然・八七〉
㋑「…てくれる」の意の尊敬語。鎌倉時代以降の用法。…てくださる。
われをも舟に乗せて―・り候へ」〈謡・隅田川
[類語](1押し頂く貰う受ける受け取る収める収受する受納する受領する受給する受贈する譲り受ける貰い受ける授かる頂く頂戴ちょうだいする拝領する拝受する申し受ける/(2与える授ける恵む施すやるあげる差し上げるくれるくださる供する供与提供授与恵与

たも・る【賜る/給る】

[動ラ四]《「たまはる」が転じた「たもうる」の音変化》
くださる。
「半分はみどもにも―・れ」〈虎明狂・連歌毘沙門〉
(補助動詞)動詞の連用形に接続助詞「て」を添えた形に付いて、目下の者に対して丁寧に言う気持ちを表す。…てくださる。
「逢はせて―・れ」〈松の葉・一〉

とうば・る〔たうばる〕【賜る】

[動ラ四]《「たまわる」の音変化》たまわる。いただく。
「御返りはかならずあらむ。―・りてまうでこむ」〈宇津保藤原の君〉

たうば・る【賜る/給る】

[動ラ四]とうば(賜)る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「賜る」の意味・読み・例文・類語

たまわ・るたまはる【賜・給】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
  2. [ 一 ]
    1. 物や言葉などを受ける、もらうの意の謙譲語で、くれる人を敬う。いただく。頂戴する。また、人などをよこしていただく。たばる。とうばる。
      1. [初出の実例]「諸王、諸臣の被(タマハル)封戸の税は」(出典日本書紀(720)天武五年四月(寛文版訓))
      2. 「此の賜ふ帯を多麻波利弖(タマハリて)、汝等(いましたち)の心をととのへ直し」(出典:続日本紀‐神護景雲三年(769)一〇月一日・宣命)
      3. 「ちからをよばで、わが郎等競の滝口をめして、これをたぶ。給はてすててんげり」(出典:平家物語(13C前)四)
    2. 特に、神から通行の許しをいただく。神の許しを得て通らせていただく。
      1. [初出の実例]「足柄の み坂多麻波里(タマハリ) かへりみず あれは越(く)え行く」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三七二)
    3. ( 中世以降の用法 ) 物などをくれるの意の尊敬語。くださる。たばる。たもうる。たもる。
      1. [初出の実例]「候(さぶら)ふかぎりの人々に薫物(たきもの)大きにまろがして、衣筥(ころもばこ)のふたに人のかずにしたがひておきならべて給はる」(出典:たまきはる(1219))
      2. 「御はからひにて給はり候へ」(出典:御伽草子・文正草子(室町末))
  3. [ 二 ] 補助動詞として用いる。動詞の連用形、また、動詞に「て」のついた形につく。
    1. ( [ 一 ]の補助動詞用法 ) 「てもらう」の意の謙譲語。…ていただく。
      1. [初出の実例]「今度の罪、己れに免(ゆる)し給らむと」(出典:今昔物語集(1120頃か)二〇)
    2. ( 中世以降、[ 一 ]の補助動詞用法 ) 「てくれる」の尊敬語。…てくださる。
      1. [初出の実例]「われをも船に乗せて賜はり候へ」(出典:謡曲・隅田川(1432頃))

たも・る【賜】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「たまわる(賜)」の変化した「たもうる(賜)」がさらに変化したもの。命令形は「たも」の形になることもある。→たもたもうる )
  2. [ 一 ] 下さる。くれる。
    1. [初出の実例]「二人に下さるると仰られたとおしゃったほどに、半分はみどもにもたもれ」(出典:虎明本狂言・連歌毘沙門(室町末‐近世初))
  3. [ 二 ] 動詞に「て」のついた形について、補助動詞として用いる。多く、目下に対し丁寧に言う気持を表わし、敬意はあまり高くない。…て下さる。…てくれる。
    1. [初出の実例]「馬にかっこうするほどのましてたもらうず」(出典:虎明本狂言・人馬(室町末‐近世初))

たもう・るたまうる【賜】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「たまわる(賜)」の変化したもの ) 下さる。補助動詞としても用いる。
    1. [初出の実例]「酒ての手しるしをはとてもたまうるまいものゆへ」(出典:史記抄(1477)七)

賜るの補助注記

「ロドリゲス日本大文典」で「タマワル・タマウル」について「尊敬せられる事の高い人から低い者へ物を与へることを意味する。tamǒru(タマウル)話し言葉に、タマワルは書き言葉に使はれる。例えば、カイテ tamǒre(タマウレ)等は同輩の間に使はれる〈土井忠生訳〉」とあることから、当時、「たまわる」「たもうる」が「いただく」の意ではなく「下さる」の意であること、「たもうる」の敬度は「たまわる」に比べあまり高くないことがわかる。後に「たもる」となる。


とうば・るたうばる【賜】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「たまわる(賜)」の変化した語 ) たまわる。いただく。頂戴する。
    1. [初出の実例]「是を以て百寮の者各往りて家地を請(タウハレ)」(出典:日本書紀(720)天武一二年一二月(北野本訓))

たま・る【賜】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙たばる(賜)
    1. [初出の実例]「母親に刀給(タマ)れといへるに」(出典:浮世草子武道伝来記(1687)六)

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