襲う(読み)オソウ

デジタル大辞泉 「襲う」の意味・読み・例文・類語

おそ・う〔おそふ〕【襲う】

[動ワ五(ハ四)]
不意に攻めかかる。不意に危害を加える。襲撃する。「敵を―・う」「寝込みを―・う」「暴漢に―・われる」
不意にやって来る。急におしかける。「新婚家庭を―・う」
「清い香りがかすかに鼻を―・う気分がした」〈漱石草枕
風雨地震などが起こって、被害を及ぼす。「津波が三陸沿岸を―・う」
(多く受け身の形で)好ましくないことが、覆いかぶさるようにやってくる。「死の恐怖に―・われる」「激痛に―・われる」→おそわれる
家系・地位などを受け継ぐ。「先代の跡を―・う」
押しつける。のしかかる。
「船は―・ふ、海のうちの空を」〈土佐
[可能]おそえる
[類語](1猛攻猛撃猛爆猛襲痛撃奇襲夜襲電撃攻撃襲撃急襲強襲突撃進撃進攻侵攻攻勢ねらい撃ち征伐せいばつ総攻撃攻略直撃迫撃挟み撃ち挟撃出撃追い撃ち追撃アタック襲いかかる攻める攻めかかる攻め立てる/(5継ぐ受け継ぐ引き継ぐ受ける

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「襲う」の意味・読み・例文・類語

おそ・うおそふ【襲・圧】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙 ( 動詞「おす(押)」の未然形反復・継続を表わす接尾語「ふ」が付いて音が変化した語 )
  2. ( 圧 ) 上から押しつける。圧する。
    1. [初出の実例]「自(をのれ)(おし)を蹈て圧(ヲソハ)れ死ぬ」(出典:日本書紀(720)神武即位前(熱田本訓))
  3. 不意に敵に攻めかけたり、人に危害を加えたりする。襲撃する。また、突然に人の家におしかける。比喩的に、風雨、地震などが身に及ぶことにもいう。
    1. [初出の実例]「蘇我臣入鹿〈略〉山背大兄王を掩(オソ)はしむ」(出典:日本書紀(720)皇極二年一一月(岩崎本訓))
    2. 「北山時雨が、折々襲って来る時であるが」(出典:俊寛(1921)〈菊池寛〉)
  4. ( 受身の表現を伴うことが多い ) 物怪(もののけ)悪霊がなどが乗り移る。→襲われる
    1. [初出の実例]「内外(うちと)なる人の心ども、物におそはるるやうにて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  5. 衣を重ねて着る。上から布などでおおう。よそう。
    1. [初出の実例]「髪冠して純帛を襲(オソフ)」(出典:大日経治安二年点(1022))
  6. 官職や家督などを受け継ぐ。世襲する。襲名する。〔観智院本名義抄(1241)〕
    1. [初出の実例]「門下の俊才が入って後(のち)を襲(オソ)った」(出典:渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉一五)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝‐昭公二八年〕
  7. 習慣や制度などを踏襲する。習いうけつぐ。
    1. [初出の実例]「旧習を襲うて小作米は以前のままにすと雖も」(出典:日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉五)
  8. ( 受身の表現を伴うことが多い ) 病魔、恐怖の念、悪夢、さびしさなどが心身をさいなむ。
    1. [初出の実例]「ぴくりぴくりと痙攣が時々顔を襲うて」(出典:病院の窓(1908)〈石川啄木〉)

襲うの補助注記

漢文訓読に特有の語であり、和文系資料の用例は少ない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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