(読み)マボロシ

デジタル大辞泉 「幻」の意味・読み・例文・類語

まぼろし【幻】


実際にはないのに、あるように見えるもの。また、まもなく消えるはかないもののたとえ。幻影。「死んだ母のを見る」「のようにはかない人生」
その存在さえ疑わしいほど、珍しいもの。「の名馬」
幻術を行う人。
「たづね行く―もがなつてにてもたまのありかをそこと知るべく」〈桐壺
源氏物語第41巻の巻名。光源氏52歳。紫の上と死別後、その一周忌法要を済ました源氏は、出家意向を固めて身辺の整理をする。
[類語]幻影幻視

げん【幻】[漢字項目]

常用漢字] [音]ゲン(呉) [訓]まぼろし
まぼろし。「幻影幻覚幻視幻想幻聴幻滅夢幻
まどわす。目くらまし。「幻術幻惑変幻

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精選版 日本国語大辞典 「幻」の意味・読み・例文・類語

まぼろし【幻】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 実在しないものの姿が実在するように見えるもの。また、たちまち消えるはかないもののたとえにいう。幻影。
      1. [初出の実例]「蠱道し呪ひし幻(マホロシ)し、諸薬を和合し」(出典:涅槃経集解巻十一平安初期点(850頃))
      2. 「定てこなたをなつかしう存てまほろしにみえたものじゃと存る」(出典:虎明本狂言・塗師(室町末‐近世初))
    2. 幻術を使う人。幻術者。魔法使。また、幻術。
      1. [初出の実例]「『さもまぼろしのやうにも』と聞え給へば、うちほほ笑みて『蓬莱の山にまかりたりつるや』」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
  2. [ 2 ] 「源氏物語」第四一帖の名。第二部の最終巻。光源氏五二歳の正月から年末まで。紫上の没後の、源氏の追憶悔恨の日々を、四季の変化を背景に、ほぼ一年にわたって描き、年明けの出家を暗示して終わる。

幻の補助注記

中古の仮名文学で[ 一 ]の意には、「ゆめまぼろし」という連語での例はあるが、「実在・現実」の意の「うつつ」に対する「非実在・非現実」を意味する単独の語としては「おもかげ」「ゆめ」の方が一般的である。


げん【幻】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。空(くう)の十喩の一つ。一切のものが因縁によって生じた仮のもので、実体がなく、空であることをたとえるのに用いる。
    1. [初出の実例]「実には非牛、非仏。唯是法性の幻(ゲン)(〈注〉マボロシ)也」(出典:雑談集(1305)一)
    2. [その他の文献]〔維摩経略疏‐三〕

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普及版 字通 「幻」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 4画

[字音] ゲン
[字訓] まどわす・まぼろし

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
予の倒文。〔説文〕四下に「相ひ詐(いつは)りて惑はすなり。反予に從ふ」とし、〔書、無逸〕「民、胥(あ)ひ張(ちうちやう)して幻(げん)を爲すこと或(あ)る無し」の文を引く。相幻惑することをいう。金文字形は糸の上端にほつれの見える形。もし予の倒文とすれば、予は杼(ひ)の形。その倒文は、経緯(けいい)が乱れ紛乱する意となる。それより幻惑・変幻、また幻化・幻術の意となったのであろう。〔漢書、西域伝〕に幻人を眩人に作る。幻・眩の間に、声義の関係があろう。

[訓義]
1. みだれる、まどわす、たぶらかす。
2. かわる、真幻のほどが知られない、まぼろし。
3. 眩と通じ、まどう、てじな。

[古辞書の訓]
名義抄〕幻 マボロシ 〔字鏡集〕幻 マボロシ・マホル

[語系]
幻huan、眩・)・hyuen、衒kiuanはみな声義が近い。絢xyuenも声義近く、紛乱し、して、ものが乱れ明らかでないことをいう。一系の語である。

[熟語]
・幻影・幻化幻怪・幻覚幻偽幻戯幻境・幻形・幻工幻忽・幻師・幻視・幻術幻象・幻身・幻人・幻世幻設・幻想幻灯幻魄・幻泡幻沫・幻夢・幻滅・幻杳・幻・幻惑
[下接語]
虚幻・如幻・誕幻・浮幻・変幻・泡幻・夢幻・妖幻

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

デジタル大辞泉プラス 「幻」の解説

広島県、中尾醸造株式会社の製造する日本酒。リンゴ酵母を使用した吟醸酒タイプ。

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