(読み)キ

デジタル大辞泉 「幾」の意味・読み・例文・類語

き【幾】[漢字項目]

常用漢字] [音](呉)(漢) [訓]いく
〈キ〉
比較的小さな数について問う語。いくつ。「幾何きか
少しずつ。それとなく。「幾諫きかん
(「」と通用)細かいきざし。「幾微
こいねがう。「庶幾
〈いく〉「幾重いくえ幾多幾度幾年幾人幾分
[名のり]おき・ちか・ちかし・のり・ふさ
難読幾何いくばく幾許いくばく庶幾こいねが丁幾チンキ

いく【幾】

[接頭]名詞に付く。時には形容詞に付くこともある。また、接尾語が付いて副詞をつくることもある。
数量の不明・不定の意を表す。「人」「日」
数量の多い意や年月の長い意を表す。「千万」「千代」「久しく」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「幾」の意味・読み・例文・類語

いく【幾】

  1. 〘 接頭語 〙 主に名詞の上に付く。時には形容詞の上に付くこともあり、また、この形に接尾語が付いて副詞をつくることもある。
  2. 数、量、時間、程度などが不明あるいは不定であることを表わす。いくらかの。どのくらいの。どれほどの。
    1. [初出の実例]「新治 筑波を過ぎて 伊久(イク)夜か寝つる」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  3. 数、量、程度などの多いこと、はなはだしいことを表わす。いくらもの。多くの。
    1. [初出の実例]「秋入初(いりそむ)る肥後の隈本正秀幾日路も笘(とま)で月見る役者船〈珍碩〉」(出典:俳諧ひさご(1690))
  4. 「いく」と複合してできた名詞または副詞に助詞「も」が付き、その下に否定の語がきた場合は、その名詞または副詞のあらわす数、量、程度などが、たいしたものではないことを示すことがある。どれほどの。たいした。
    1. [初出の実例]「秋立ちて幾(いく)日もあらねばこの寝ぬる朝開(あさけ)の風はたもと寒しも」(出典:万葉集(8C後)八・一五五五)

幾の補助注記

本来、数詞として不定数を表わす。単位となるような数詞、十(そ)や千(ち)など、また助数詞「つ」「日(か)」「年(とせ)」「人(たり)」など、およびこれに類する名詞などがつく。あるいはまた、接尾語「ら」「だ」「ばく」などを伴って副詞をつくる。

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普及版 字通 「幾」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

(旧字)
12画

[字音]
[字訓] きざし・かすか・あやうい・いく

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
(し)+戈(か)。〔説文〕四下に「なり。殆(あやふ)きなり。(いう)に從ひ、戍(じゅ)に從ふ。戍は兵守なり。(幽)にして兵守するきなり」という。を幽、幽微の意より危殆の意を導くものであるが、は絲(糸)の初文。戈に呪飾として著け、これを用いて察のことを行ったのであろう。〔周礼、天官、宮正〕「王宮の戒令禁を掌り、~其の出入をす」、〔周礼、地官、司門〕「管鍵を授けて、~出入する不物のす」など、みな呵・察の意に用いる。ことを未発のうちに察するので幾微の意となり、幾近・幾殆の意となる。

[訓義]
1. きざしをしらべる、きざしをみつけてはらう。
2. きざし、ことのはじめ、かすか、しずか、ことのあらわれぬもの。
3. あやうい、あやうい状態に近い、ほとんどその状態となる。
4. いのる、ねがう、こいねがう、のぞむ。
5. ほとんど、つきる、おわる。
6. いく、いくばく、しばしば。

[古辞書の訓]
名義抄 ホトホト・チカシ・シメス・コレ・イヅレ・マツ・ネガフ・ノゾム・アヤフシ・ヤウヤク・スミ・イクバク/庶 コヒネガフ/何 イクバク・イクソバク/多 イクバクバカリ 〔字鏡集〕 ヤウヤク・アヤフシ・ネガフ・アキラカス・ホ(ト)ホ(ト)シ・イクハク・ノゾク・シメス・ホトホト・チカシ・イツレ・マツ・ハカリ・コレ

[声系]
〔説文〕に声として(機)・畿など十四字を収める。ほかに血部五上珥()を示す字()、鬼部九上に鬼俗の意を示す字()があり、がそのような呪祝の法と関係のある字であることが知られる。なお〔広韻〕に「なり」とあり、みな察の呪儀に関する字であろう。

[語系]
kii、gii、git、xitは声近く、幾殆・幾近の意がある。声の字には、の声義を承けるものが多い。

[熟語]
幾家・幾回・幾歳・幾時・幾多・幾度・幾重・幾人幾処・幾般・幾番幾片幾遍・幾位・幾音・幾運・幾何・幾会幾諫・幾希・幾危・幾及幾許・幾権幾幸・幾策・幾死・幾珥・幾事・幾初・幾臣・幾深・幾尽・幾先・幾卒・幾殆・幾頓・幾敗・幾微・幾望・幾亡・幾密・幾慮
[下接語]
見幾・失幾・庶幾・心幾・神幾・尽幾・先幾・造幾・知幾・沈幾・投幾・年幾・万幾・赴幾・亡幾

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