彼方此方(読み)アチコチ

デジタル大辞泉 「彼方此方」の意味・読み・例文・類語

あち‐こち【×方】

[代]指示代名詞。いろいろの場所方向をさす。あちらこちら。あっちこっち。「彼方此方から寄付が集まる」「彼方此方歩き回る」
[形動][文][ナリ]物事順序位置が逆になっているさま。あべこべ。「話が彼方此方になる」「靴下彼方此方にはく」
[類語]そこかしこここかしこあちらこちらおちこちそこここところどころ点点方方諸方各地各所随所どうこう何やかやそうこうあれこれとかくとこう何かと何かといえば何かにつけ何くれ何くれとなくかれこれなんだかんだなんのかのどうのこうのああだこうだあれやこれやとざまこうざま

あちら‐こちら【×方】

[代]あちこち」に同じ。「彼方此方名所を訪ね歩く」
[形動ナリ]あちこち」に同じ。
「―なる事を申してさまざまに難儀させ」〈浮・織留・六〉

かなた‐こなた【×方】

[代]遠称の指示代名詞。いろいろの場所・方向などをさす。あちらこちら。方々
「見渡す海原の―には三本檣マストの大きな漁船往来ゆききして居る」〈荷風・ふらんす物語

あっち‐こっち【×方】

[代]あちこち」に同じ。「彼方此方の知人宅を泊まり歩く」

あなた‐こなた【×方】

[代]指示代名詞。あちらこちら。あれこれ。
「君の御身には、かの一節の別れより、―もの思ひとて」〈・若菜下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「彼方此方」の意味・読み・例文・類語

あっち‐こっち【彼方此方】

  1. ( 「あちこち」の変化した語 )
  2. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙あちこち(彼方此方)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「あっちこっちへ云ひやって、仕めへにゃァつかみ合」(出典:洒落本・通仁枕言葉(1781))
  3. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙あちこち(彼方此方)[ 二 ]
    1. [初出の実例]「私と仇吉んとあっち此方(コッチ)なら、おまへもそんな愚智をいって」(出典人情本春色辰巳園(1833‐35)三)

あち‐こち【彼方此方】

  1. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙 他称。いろいろの方向または地点をさし示す。また、所々方々、あれこれ、いろいろ、などの意で副詞的にも用いる。あちらこちら。あっちこっち。
    1. [初出の実例]「牛の、あちこちありき困(こう)じたるに」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
    2. 「こちの心がサ、花といっしょにあちこちとちっていくやうな心もちがする」(出典:古今集遠鏡(1793)三)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 逆になっているさま。あべこべ。反対。あちらこちら。あっちこっち。
    1. [初出の実例]「親が子を引合すべきに、子にて親を引合すはあちこちなり」(出典:随筆・蘐園雑話(1751‐72頃))

あちら‐こちら【彼方此方】

  1. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙あちこち(彼方此方)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「水音もあちらこちらや朧月〈玉井〉」(出典:俳諧・はりまあんご(1789))
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙あちこち(彼方此方)[ 二 ]
    1. [初出の実例]「あちらこちら成事を申て、さまざまに難儀させ、何十軒か此手を仕掛ける」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)六)
    2. 「裸身に羽織をあちらこちらに着て」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂)

あっちら‐こっちら【彼方此方】

  1. ( 「あちらこちら(彼方此方)」の変化した語 )
  2. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙あちこち(彼方此方)[ 一 ]
  3. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙あちこち(彼方此方)[ 二 ]
    1. [初出の実例]「『おめへの傍(そば)へ倚(よ)ると色かぶれがしてこまらア』『ヘン、きつい洒落さ。そりゃア、あっちらこっちらだよ』」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)三)

かなた‐こなた【彼方此方】

  1. 〘 代名詞詞 〙 他称。いろいろの方向、または地点をさし示す。あれこれ、いろいろなどの意で副詞的にも用いる。あちらこちら。あちこち。処々方々
    1. [初出の実例]「七夕祭、かなたこなたとせさせ給へり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
    2. 「継母の讒に依て、那辺這辺(カナタコナタ)漂泊し給つるが」(出典:太平記(14C後)三二)

あなた‐こなた【彼方此方】

  1. 〘 代名詞詞 〙 他称。あちらこちら。ほうぼう。
    1. [初出の実例]「宮よりはじめ奉りて、女みこたち、あまたの北の方、あなたこなたあはせてここの所」(出典:宇津保物語(970‐999頃)春日詣)

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