精選版 日本国語大辞典 「彼此」の意味・読み・例文・類語
かれ‐これ【彼此】
[1] 〘代名〙 他称。
① あの事とこの事。あのものと、このもの。あれやこれや。
※早稲田大学図書館所蔵文書‐天平勝宝七年(755)五月七日・相摸国司牒「以二天平廿年一憑二彼国司一、割二得件地一、興二造倉屋一。為レ寺尤便。願計二彼此便一、欲レ得二相博一」
※名語記(1275)六「かれこれが間をあひとなづく」
② あの人とこの人。だれやかれや。
※土左(935頃)承平四年一二月二一日「かれこれ、しるしらぬ、おくりす」
[2] 〘名〙
① 納得せずに、なんのかのと文句をいうこと。ごたごた。
② およそ同じ程度。相当の値打。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「かかあが衣装(とば)を〈略〉タッタ三度しきゃアお晴をしねへときて居るから、なんぼ付(つか)ねへと云ても彼是(カレコレ)が物はあらうス」
[3] 〘副〙
[一] いろいろな物事にかかわる意。「と」を伴うことがある。
① とやかく。なんやかや。なんのかの。
※貞享版沙石集(1283)八「雑行は行躰はとりどりに殊勝なれども、かれこれと心みだるなり」
② (「かれこれする」の形で) いろいろなもの事に注意を散らして。うかうかと。
※狂言記・水汲新発意(1730)「いやいやあれは女の事なり殊にかれこれとして日もくるればいかがじゃ」
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一「彼是する内に遠方で人の足が響いた」
③ (「かれこれ言う」の形で)
(イ) なんのかのとうわさして。いろいろ評判して。
※俳諧・おらが春(1819)「彼是といふも当坐ぞ雪仏」
(ロ) なんのかのと文句をつけて。苦情をいろいろと。
※魔風恋風(1903)〈小杉天外〉後「お金の事なぞ彼此云ってられ無いって」
④ あれもこれも。いずれにつけても。何にしても。
※太平記(14C後)九「両家の体を一にして水魚の思を成べく候上、赤橋相州御縁に成候。彼此(カレコレ)何の不審か候べきなれ共」
[二] 彼と此と合わせる意。あとに数詞を伴う。
① あれとこれと合わせて。全部で。合計。
② およそ。大体。ほぼ。ほとんど。ぼつぼつ。
(イ) あとに概数を伴って用いる。
※雑俳・玉の光(1844‐45)「苦のないおかた・かれ是四十でもあろか」
あれ‐これ【彼此】
〘代名〙 他称。数多くの人や事物を指し示す。あれやこれや。
※史記抄(1477)一一「孔子は無二常師一ほどに、あれこれに問レ道、問レ礼たぞ」
※咄本・軽口露がはなし(1691)一「気のせくままにあれこれとさがし」
ひ‐し【彼此】
〘名〙 二つ以上の事柄をとりあげていう。あれとこれと。あれもこれも。
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)三「彼此(ヒシ)(〈注〉カレコレ)、愛憎のこころ、あることなし」 〔杜甫‐哀江頭詩〕
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