折伏(読み)しゃくぶく

デジタル大辞泉の解説

しゃく‐ぶく【折伏】

[名](スル)《「じゃくぶく」とも》
仏語。悪人・悪法を打ち砕き、迷いを覚まさせること。摂受(しょうじゅ)と共に衆生を仏法に導く手段。「邪教の徒を折伏する」
転じて、執拗に説得して相手を自分の意見・方針に従わせること。「対立する相手を折伏する」

せっ‐ぷく【折伏/折服】

[名](スル)相手を打ち負かして、自分に従わせること。→しゃくぶく(折伏)
「人と議論するに、己の説を主張し彼れを―することを為さず」〈中村訳・西国立志編

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世界大百科事典 第2版の解説

しゃくぶく【折伏】

調の意で,摂受(しようじゆ)の対語。仏教における化導弘通(けどうぐづう)の方法で,摂受が相手の立場や考えを容認して争わず,おだやかに説得して漸次正法に導くことであるのに対して,折伏は相手の立場や考えを容認せず,その誤りを徹底的に破折して正法に導く厳しい方法で,摂受は母の愛に,折伏は厳しいながら子をおもう父のいましめにたとえられる。摂受,折伏ともに《勝鬘(しようまん)経》にみえるが,これを重要問題としたのは法華仏教で,中国法華仏教の大成者智顗(ちぎ)は,法華経安楽行品(あんらくぎようぼん)における他人の好悪長短を説かないことをもって摂受とし,《涅槃(ねはん)経》にみえる正法を護持するために武器をもち,正法を誹謗毀訾(きし)する者を斬首することをもって折伏とした。

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大辞林 第三版の解説

しゃくぶく【折伏】

( 名 ) スル
〘仏〙 相手の悪や誤りを打破することによって、真実の教えに帰服させる教化法。破邪。 ⇔ 摂受しようじゆ

せっぷく【折伏】

( 名 ) スル
相手をくじいて、己に従わせること。 「其のお説教たるや…読者を-せずんば止まずといふ/復活 魯庵」 → しゃくぶく(折伏)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

折伏
しゃくぶく

仏教における教化法。摂受(しょうじゅ)の対語。衆生(しゅじょう)教化の方法に摂受、折伏の2種があり、折伏は相手の悪を指摘し屈伏させて正信に導き入れる方法、摂受は相手の善を受け入れ、摂(おさ)めとって、徐々に浅から深へと導いていく方法。『勝鬘経(しょうまんぎょう)』十受章にこの摂折(しょうしゃく)二門の原拠がある。中国隋(ずい)代の天台智(ちぎ)は『摩訶止観(まかしかん)』10下において「夫(そ)れ仏法に両説あり。一に摂、二に折。安楽行(あんらくぎょう)(品(ほん))に不称長短といふは是(こ)れ摂義なり。大(般涅槃(はつねはん))経に執持刀杖乃至斬首(しゅうじとうじょうないしざんしゅ)といふは是れ折義なり」と述べ、両経の化儀(けぎ)(教化の方法)を相対して、法華(ほっけ)は言説布教であるから摂受、涅槃は武力による破折のゆえに折伏とする。また『法華玄義』九上に「法華は折伏、権門(ごんもん)の理を破す……涅槃は摂受、更(さら)に権門を許す」とあり、両経の教理を相対して、前述の説とは逆に、純円の法華を折、雑円の涅槃を摂と判じている。また六祖湛然(たんねん)の『法華文句記(もんぐき)』の不軽品(ふきょうほん)釈は、法華のなかでも安楽行品14は摂受、常不軽菩薩品(じょうふきょうぼさつほん)20は折伏である理由10をあげる。
 日蓮(にちれん)は『開目抄』下で「無智悪人の国土に充満の時は摂受を前とす。安楽行品のごとし。邪智謗法(ほうぼう)の者多き時は折伏を前とす。常不軽品のごとし」と述べて、末法の世の日本国は邪智謗法の国であるから、折伏を用いよと説いた。日蓮が他宗を責めた有名な四箇格言(しかかくげん)、すなわち念仏無間(むげん)(念仏は無間地獄に落ちるもの)、禅天魔(禅は天魔の行為)、真言亡国(真言は国を滅ぼすもの)、律国賊(律宗は国賊)はその一表現である。[浅井円道]
『田中智学著『折伏とはなにか』(1968・真世界社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

おり‐ふ・す をり‥【折伏】

[1] 〘自サ四〙 手足をまげて横になる。
万葉(8C後)三・三七九「竹玉(たかだま)を 繁(しじ)に貫き垂れ 鹿猪(しし)じもの 膝折伏(をりふして)手弱女の おすひ取り懸け」
[2] 〘他サ下二〙 折って伏せる。折って横にする。
※万葉(8C後)四・五〇〇「神風(かむかぜ)の伊勢の浜荻折伏(をりふせ)て旅寝やすらむ荒き浜辺に」

おれ‐ふ・す をれ‥【折伏】

〘自サ四〙 腰を曲げて体を倒す。また、折れ曲がって倒れる。
※枕(10C終)二二六「をれふすやうに、また、なにごとするとも見えで、うしろざまにゆく」

しゃく‐ぶく【折伏】

〘名〙 (「じゃくぶく」とも。剛強なものを折破摧伏(さいふく)する意) 仏語。煩悩や迷妄をおさえ、悪人や悪法を折(くじ)き伏せること。破邪(はじゃ)。〔勝鬘経義疏(611)〕
※日蓮遺文‐開目抄(1272)「無智悪人の国土に充満の時は、摂受を前とす。〈略〉邪智諦法の者多き時は折伏を前とす」
[語誌]原語は梵語 abhibhava で、「克服する」の意。伏滅、勝伏とも訳す。仏教で衆生を教え導くための二つの方法の一つで、煩悩の克服を主眼とする。普通はもう一つの方法「摂受(しょうじゅ)」(衆生の善をおさめとって導く)の前段階と解されるが、日蓮は邪智謗法の横行する末法の世には折伏こそがふさわしいとした。

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世界大百科事典内の折伏の言及

【不受不施派】より

…謗法からの布施供養はその邪を正すべき相手からの施物である。受容すると,邪を正す〈折伏(しやくぶく)〉の根拠は失われる。謗施の不受はこうして生まれ,不施はこれに付随して生じた。…

※「折伏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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