暖か(読み)アタタカ

デジタル大辞泉 「暖か」の意味・読み・例文・類語

あたたか【暖か/温か】

[形動][文][ナリ]
(暖か)暑すぎもせず、寒くもなく、程よい気温であるさま。あったか。「―な小春日和 春》「―な雨がふるなり枯葎かれむぐら子規
(温か)物が冷たくなく、熱すぎもせず、程よい温度であるさま。「―なスープ
(温か)思いやりのあるさま。「―な家庭」
(暖か)金銭が十分にあるさま。「懐が―だ」
(暖か)色合いが、赤・黄系統で柔らかい感じのするさま。「壁の色が―だ」
穏やかなさま。すなおだ。
かねも見ずに―に請取をせうわいなあ」〈浄・生玉心中
ずうずうしいさま。いい気なさま。
「―な事言はれなと声をとがらし申しける」〈浄・文武五人男〉
[派生]あたたかげ[形動]あたたかさ[名]あたたかみ[名]
[類語](1あたたかい温暖生あたたかいほかほかぽかぽか温和優しいあったかほやほやぬるぬくい生ぬるいぬくぬくぬくもり暖気春暖ほっくりほくほくほっこりほかほかぬくみぬるみ暖まるぬくもるぬるむ暖める/(3優しい温かい温厚寛厚寛仁かんじん親切情け深い慈悲深い心が籠もる心を籠めるハートフル

あったか【暖か/温か】

[形動]あたたか」に同じ。「―な春の日」
[派生]あったかげ[形動]あったかさ[名]

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「暖か」の意味・読み・例文・類語

あたた‐か【暖か・温か】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙
  2. 外気や物の温度が低くないさま。熱があるさま。
    1. (イ) 寒くなくて気持のよいさま。また、冷たくなくて気持のよいさま。気候や温度が程よいさま。《 季語・春 》
      1. [初出の実例]「そのあたたかなるほどは、かく、しありきて、母に食はす」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      2. 「一、水ぬるむ 一、あたたか」(出典:至宝抄(1585))
    2. (ロ) あついさま。熱気暑気のあるさま。
      1. [初出の実例]「あたたかにもあらず、寒くもあらぬ風、梅にたぐひて鶯をさそふ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
    3. (ハ) 衣類などが、それを身につけたとき、体をあたためて心地よさそうであるさま。
      1. [初出の実例]「人々は、冬になると、暖かな、着物を、着て、夏は、薄き、着物を、着ますか」(出典:小学教授書(1873)〈文部省〉)
  3. 財産が豊かであるさま。経済的にゆとりがあるさま。
    1. [初出の実例]「挊(かせ)ぐに貧乏の足遅くそろそろ手前も暖(アタタカ)になれば」(出典:談義本・艷道通鑑(1715)三)
  4. 物事がおだやかにすらすらとゆくさま。
    1. [初出の実例]「仏はおろか地獄へもあたたかに、二人連れでは落られぬ」(出典:浄瑠璃・心中天の網島(1720)上)
  5. いい気なさま。人を馬鹿にしたさま。ずうずうしく、こしゃくなさま。
    1. [初出の実例]「美しいかほをして人の男に心をかけ、ようもようもあたたかに此舟へは乗られたなふ」(出典:浄瑠璃・大覚大僧正御伝記(1691頃)二)
  6. 相手への態度がきびしくないさま。また、愛情がこまやかなさま。思いやりがあるさま。
    1. [初出の実例]「此寺は、教寺にて談義があまりにあたたかすぎたと云わぬばかりぞ」(出典:三体詩素隠抄(1622)二)
  7. 色あいがやわらかく、冷たい感じがしないさま。
    1. [初出の実例]「私は画伯の画の温かな色調に感動させられた」(出典:第2ブラリひょうたん(1950)〈高田保〉画伯)

暖かの語誌

( 1 )古くは、現代の「あたたか」よりは温度が高く、むしろ「あつい」に近い意も表わした。平安朝仮名文では、「あたたか」の例自体が少ない。
( 2 )「ひややか」が「冷ゆ」「冷やす」などの語幹とかかわるヒヤに接尾語ヤカを付して生まれたのから類推して「あつし(熱・暑)」の語幹とかかわるアタもとに派生した語形か。


あった‐か【暖か・温か】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 「あたたか(暖)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「今夜はあったかでござへすねへ」(出典:洒落本・寸南破良意(1775)年季者)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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