優しい(読み)ヤサシイ

デジタル大辞泉 「優しい」の意味・読み・例文・類語

やさし・い【優しい】

[形][文]やさ・し[シク]《動詞「す」の形容詞化で、5原義
姿・ようすなどが優美である。上品で美しい。「―・い顔かたち」「声が―・い」
他人に対して思いやりがあり、情がこまやかである。「―・く慰める」「―・い言葉をかける」
性質がすなおでしとやかである。穏和で、好ましい感じである。「気だての―・い子」
悪い影響を与えない。刺激が少ない。「地球に―・い自動車」「肌に―・い化粧水」
身がやせ細るような思いである。ひけめを感じる。恥ずかしい。
「なにをして身のいたづらに老いぬらむ年のおもはむ事ぞ―・しき」〈古今雑体
控え目に振る舞い、つつましやかである。
「繁樹は百八十に及びてこそさぶらふらめど、―・しく申すなり」〈大鏡・序〉
殊勝である。けなげである。りっぱである。
「あな―・し、いかなる人にてましませば、味方の御勢は皆落ち候ふに」〈平家・七〉
[派生]やさしげ[形動]やさしさ[名]やさしみ[名]
[類語](2温かい温か温厚寛厚寛仁かんじん親切情け深い慈悲深い心が籠もる心を籠めるハートフル/(3柔和もの柔らか内気弱気引っ込み思案気弱内弁慶陰弁慶臆病大人しいこわがり小心小胆怯懦怯弱意気地なし小心翼翼弱腰薄弱惰弱柔弱軟弱優柔不断やわやわ弱弱しい女女しい弱音を吐く・音を上げる・悲鳴を上げる・気が弱い腰が弱い煮え切らない肝が小さい・肝っ玉が小さい・温順柔順従順温柔温良順良素直穏和おだやか物静かおとなしやか控えめ内向的人見知りしんねりむっつりシャイ心静か安らか安穏のどか悠長悠然悠悠悠揚浩然どっしり気長伸び伸び伸びやかのんびり屈託無い自然体のんどりしなやかしとやかなよやかなよなよしっとり物柔らか静静しずしずソフトおっとり婉然えんぜんしおらしい閑語たおやかナイーブ心優しい柔和温雅鷹揚おうよう静心しずこころ従容しょうよう悠悠閑閑おおどかつつましい奥ゆかしい泰然自若平静冷静しみじみしっぽりしんみり静まる温顔温容春風駘蕩たいとう穏便粛粛静謐せいひつ静粛

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精選版 日本国語大辞典 「優しい」の意味・読み・例文・類語

やさし・い【優・易】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]やさ〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「やせる(痩)」の形容詞化 )
  2. [ 一 ] ( 恥 ) 人の見る目に対して身も細る思いである。
    1. 自分の行為や状態などにひけ目を感じる。人や世間のおもわくに対して気恥ずかしい。きまりが悪い。肩みがせまい。みっともなくて恥ずかしい。
      1. [初出の実例]「世の中を憂しと夜佐之(ヤサシ)と思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」(出典万葉集(8C後)五・八九三)
      2. 「御ぐしなどもいたく盛り過ぎにけり。やさしきかたにあらねど、えびかづらしてぞつくろひ給ふべき」(出典:源氏物語(1001‐14頃)初音)
    2. 周囲や相手に心づかいして、ひかえめにふるまうさま。つつましやかである。
      1. [初出の実例]「しげきは百八十におよびてこそさぶらふらめど、やさしく申すなり」(出典:大鏡(12C前)一)
  3. [ 二 ] ( 優 ) 姿や言語、振舞いなどに、こまやかな心づかいや、たしなみの深さなどが感じられるさま。また、それを優れたものとして評価すること。
    1. 優美である。優雅である。風雅の心がある。情趣深い。風情がある。
      1. [初出の実例]「人づてともなく、いひなし給へる声、いと若やかに愛敬づき、やさしき所そひたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
    2. ( 歌合・歌論の評語として ) 主に歌の姿・詞または素材について、優美で風情があるさま。
      1. [初出の実例]「此の歌難じ申すべき事も侍らざめり。それがなかにも、下はふ蘆は今少しやさしうぞ見たまふる」(出典:類従本元永元年十月二日内大臣忠道歌合(1118))
    3. 本能衝動などに心をまかせず、己を抑えて、自分の立場にふさわしくふるまう思慮あるさまに対して、他人が心に感じて用いるほめことば。多く、優位にある者から用いる。立派である。感心である。殊勝である。けなげである。
      1. [初出の実例]「亦卞和(べんくゎ)も不懲ず玉を奉ける極めて(やさ)し」(出典:今昔物語集(1120頃か)一〇)
    4. 他人に対して、心づかいがこまやかなさま。思いやりがある。情深い。暖かい心配りがある。
      1. [初出の実例]「さるにても御身はやさしき心を持ち給へる人かな。人の疲れを助けて、我が飢ゑをしのぎ給ふ志、ためしなき次第なり」(出典:御伽草子・梅津長者物語(室町時代小説集所収)(室町末))
    5. 人の態度・性格などが、従順である。おとなしい。温和である。すなおでものやわらかである。
      1. [初出の実例]「やさしやな田を植るにも母の側」(出典:俳諧・太祇句選(1772‐77)夏)
  4. [ 三 ] ( 易 ) たやすいさま。
    1. 行き届いた心配りをしないさま。不用意である。
      1. [初出の実例]「人、此を聞て、不知ざらむ所へ(やさし)く不可行ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)一六)
    2. わかりやすい。平易である。理解しやすい。
      1. [初出の実例]「まづ観音さまの音の字を見ねへ。やさしく書けば(しちひゃく)といふ字だが、むづかしく書くと(ろっぴゃく)といふ字だ」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)初)
    3. 簡単である。容易である。
      1. [初出の実例]「なる可くやさしい問を選んで、どうぞ無事に答へて呉れればよいがと」(出典:嗚咽(1919)〈加藤武雄〉)

優しいの派生語

やさし‐が・る
  1. 〘 自動詞 他ラ四 〙

優しいの派生語

やさし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

優しいの派生語

やさし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

優しいの派生語

やさし‐み
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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