決る(読み)シャクル

デジタル大辞泉 「決る」の意味・読み・例文・類語

しゃく・る【決る/×抉る/×杓る/×刳る】

《「さくる」の音変化》
[動ラ五(四)]
中がくぼむように、えぐる。「シャベルで砂を―・る」
すくうようにして上げる。しゃくう。「船底の水を―・る」
あごを前に出して頭部をやや後ろに引く。「あごを―・る」
すくうようにして動かす。あやつる。「つり糸を―・る」
そそのかす。おだてる。
「作さんも誰かに―・られたと見えて、来なくなってしまうし」〈魯文安愚楽鍋
[可能]しゃくれる
[動ラ下二]しゃくれる」の文語形
[類語]すくくむさらうしゃくう掬い上げる掬い取る・掬い出す・掻い出す汲み取る汲み上げる汲み出す汲み干す汲み入れる汲み込む

きま・る【決(ま)る/極まる】

[動ラ五(四)]
不確か・未決定であった物事が最終的にはっきりして、動かない状態になる。さだまる。決定する。「方針が―・る」「有罪と―・る」
変わらないで同じである。一定している。「毎朝―・った道を通る」「買う店が―・っている」
(「…にきまっている」の形で)疑う余地がなく、当然である。きっとそうである。また、必ずそうなる。「冬は寒いに―・っている」「そんなことを言われれば、だれだって怒るに―・っている」
スポーツや勝負事で、技がうまくかかったり、ねらいどおりに運んだりする。また、勝負がつく。「背負い投げが―・る」「速攻が―・る」「東土俵で―・る」
(「きまっている」「きまってる」の形で)物事の型や服装などが、きちんとかっこうよくおさまる。さまになる。「背広が―・っている」
歌舞伎などで、演技が高潮に達するか、ひと区切りついたとき、役者が形をつけたままでその動きをとめる。「花道七三しちさんで―・る」
男女の仲がうまくまとまる。
「今夜はお楽しみだの、―・ったのと、一座の女郎衆に言はれたが」〈洒・部屋三味線〉
[類語](1決する定まる固まるまとまる決定する確定する決着がつく

さく・る【決る/×抉る/×刳る】

[動ラ五(四)]土などをすくい取る。また、掘りうがつ。掘る。
「枝はくじけて其先が庭の土を―・った」〈長塚

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「決る」の意味・読み・例文・類語

きま・る【決・極】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 物事がある状態に定まって、変わらないようになる。決定する。決着がつく。
    1. [初出の実例]「コレサ、そんなきまらぬ事をいいっこなしさ」(出典:黄表紙・心学早染艸(1790)中)
    2. 「定(キマ)った収入のない上に」(出典:疑惑(1913)〈近松秋江〉)
  3. ( 「…にきまっている」の形で用いる ) 当然である。きっと…である。
    1. [初出の実例]「叱られるに極ってゐるから」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
  4. 態度や服装などがきちんとする。かしこまる。
    1. [初出の実例]「羽織で極まって来ずともの事だ」(出典:歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)序幕)
    2. 「君は夏でも御苦労千万に二枚重ねで乙に極まって居る」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉七)
  5. 物の型などがきちんとかっこうよくできる。ぴたりとはまる。
    1. [初出の実例]「さしみにして一ぱいきまろふとおもった所が」(出典:咄本・さとすゞめ(1777)初鰹)
  6. 歌舞伎の演技や踊りなどで、最高潮に達したり、一区切りついたりしたとき、演者が動きを一瞬停止して、形をつける。
    1. [初出の実例]「唄一ぱいによろしく極る」(出典:歌舞伎・助六廓夜桜(1779))
  7. 相撲柔道剣道などで、しかけたわざが相手にうまくかかる。勝負がきまる。
  8. 野球で、投手の投げたボールが思ったところに行く。
  9. 男女の仲がうまく成立する。安永天明一七七二‐八九)頃の江戸の流行語。
    1. [初出の実例]「此六蔵が性根(しゃうね)を見た其上ではきまってくれるといふ腹か」(出典:浄瑠璃神霊矢口渡(1770)四)
  10. きちんと無駄のない仕方である。つつましく暮らす。
    1. [初出の実例]「かのすひものもげいこへはひとりきてゐてもめったに出しませぬ。あのやふにきまってこそ永久なれ」(出典:洒落本・北華通情(1794))

しゃく・る【決・抉・刳】

  1. ( 「さくる(決)」の変化した語 )
  2. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 中がくぼむようにえぐる。すくいとる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    2. すくうようにして上下前後左右にゆする。
      1. [初出の実例]「押せどしゃくれど、動ばこそ」(出典:浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)一)
    3. あけるために戸をすくうように動かす。戸をすくうようにしてあける。
      1. [初出の実例]「車戸の明くるを人や聞付んと、しゃくって明くればしゃくって響き」(出典:浄瑠璃・心中天の網島(1720)下)
    4. (あご)を下からすくうように動かして示す。→顎でしゃくる
      1. [初出の実例]「お政が『彼方(あっち)へ』と顋(あご)でしゃくる」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
    5. うまいことを言って人の気持を動かす。そそのかす。扇動する。おだてる。
      1. [初出の実例]「文使あるいはいさめまたしゃくり」(出典:雑俳・柳多留‐五(1770))
    6. 操縦する。あやつる。
      1. [初出の実例]「乗ってゐる初年兵が韁(たづな)でしゃくると、『ふ、ふ、ふ』と鼻を鳴らした」(出典:初年兵江木の死(1920)〈細田民樹〉五)
  3. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙しゃくれる(決)

さく・る【決・抉・刳】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
    1. 溝などを掘る。掘って穴をあける。くりぬく。しゃくる。
      1. [初出の実例]「羣臣、共に視て横源(よこしまのうなかみ)を決(サクリ)て海に通(かよ)はせて逆流(さかふるこみ)を塞ぎて田宅(なりところ)を全せよ」(出典:日本書紀(720)仁徳一一年四月(前田本訓))
    2. 前へすくうようにして上げる。しゃくう。しゃくる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 堤防などが切れてくずれる。決壊する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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