(読み)ギョ

デジタル大辞泉 「漁」の意味・読み・例文・類語

ぎょ【漁】[漢字項目]

[音]ギョ(漢) リョウレフ)(慣) [訓]すなどる あさる
学習漢字]4年
〈ギョ〉
魚をとる。「漁獲漁業漁港漁船漁村漁夫半農半漁
あさる。「漁色
〈リョウ〉魚をとる。「漁師禁漁出漁大漁不漁密漁
[補説]「リョウ」は「猟」の音を借用したもの。
難読漁火いさりび

りょう〔レフ〕【漁】

《「猟」との混同による慣用読み魚介などの水産物をとること。すなどり。いさり。また、その獲物。「に出る」「ニシン」「昆布
[類語]漁獲漁労密漁入漁出漁

りょう【漁】[漢字項目]

ぎょ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「漁」の意味・読み・例文・類語

あさり【漁】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「あさる(漁)」の名詞化 )
  2. あさること。魚貝類をとること。また、えさを探すこと。すなどり。いさり。
    1. [初出の実例]「阿佐里(アサリ)する海人の子供と人は云へど見るに知らえぬうま人の子と」(出典:万葉集(8C後)五・八五三)
    2. 「あまどもあさりして貝つ物もてまゐれるを召し出でて御覧ず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
  3. 捜し求めること。探ること。
    1. [初出の実例]「あな物ぐるほし、盗人あさりすべしなどこそいふめれ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)見はてぬ夢)

漁の語誌

( 1 )無名抄」に「或人云く、あさりといひ、いさりといふは同じ事なり。それにとりて朝(あした)にするをばあさりと名づけ、夕(ゆふべ)にするをばいさりといへり。これ東の海士(あま)の口状なり」とある。ここで「いさり」を夕漁、「あさり」を朝漁とするのは、「いさり火」や「万葉集」の「朝には海辺にあさりし」〔九五四〕からの連想によるものであり、「夕なぎにあさりするたづ」〔一一六五〕によれば、朝夕に関わるのではないことがわかる。
( 2 )「いさり」は「沖辺をみればいさりする」〔三六二七〕などとあって海上の漁、「あさり」は磯や潟の漁で、むしろ「色葉和難抄」のいう「清(輔)云、あさりとはしほのひるまに、海士の浜に出て、砂子なかを、あしにてほる様にして蛤をとるをいふなり」の方が当たっていよう。


いさり【漁】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「いざり」 )
  2. 魚貝をとること。漁をすること。→「あさり(漁)」の語誌。
    1. [初出の実例]「しかの浦に伊射里(イザリ)する海人(あま)家人(いへびと)の待ち恋ふらむに明かし釣る魚」(出典:万葉集(8C後)一五・三六五三)
  3. いさりび(漁火)」の略。
    1. [初出の実例]「ひさかたの月は照りたりいとまなく海人の伊射里(イザリ)はともしあへり見ゆ」(出典:万葉集(8C後)一五・三六七二)
  4. 夜の漁。九州の五島あたりから沖縄の八重山にいたる島々で、灯火をつけてする漁。

漁の語誌

磯や潟で貝を採る「あさり」に対して、舟で沖に出てする漁。平安以降は「いざり火の」「いざり舟」が、「火(ほ)」と掛けられた「ほのか」を導き出すことばとして夜中に燃え盛る恋情を表出するようになった。


すな‐どり【漁】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 魚、貝などをとること。すなどること。りょう。
    1. [初出の実例]「亦、梁(やな)を作(うち)て取魚(スナトリ)するもの有り」(出典:日本書紀(720)神武即位前(北野本室町時代訓))
    2. 「しほがまの浦にはあまやたえにけんなどすなどりのみゆる時なき」(出典:大和物語(947‐957頃)五八)
  3. を業とする人。漁夫。漁師。〔黒本本節用集(室町)〕
    1. [初出の実例]「漁子(スナドリ)のいと賢しらに、浄らなる網をうてども」(出典:海潮音(1905)〈上田敏訳〉鷺の歌)

ぎょ【漁】

  1. 〘 名詞 〙 海や河で魚や貝類などをとること。すなどること。
    1. [初出の実例]「但縁海百姓、以漁為業」(出典:続日本紀‐天平勝宝四年(752)正月辛巳)

りょうレフ【漁】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「りょう」は「猟」との混同により生じた「漁」の慣用的な読み ) 海・川・池などで、魚介類をとること。また、その獲物。すなどり。いさり。ぎょ。→りょう(猟)

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普及版 字通 「漁」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

(異体字)
19画

[字音] ギョ
[字訓] すなどる

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 形声
声符は魚(ぎよ)。古い字形は釣魚の形に作るが、のちの字形は魚声。〔説文〕十一下に作り、「魚を捕るなり」という。竹部字条五上に重文としてを録し、が漁の初文。は禁苑。魚は古く祖祭に用い、また霊沼に放ったもので、金文の辟雍(へきよう)儀礼をしるす〔(いつき)〕や〔井鼎(けいてい)〕には、王が辟雍の大池に漁し、また賜魚の礼をしるすものがある。〔詩、小雅、魚藻〕〔詩、周頌、潜〕は、その礼を歌う詩である。

[訓義]
1. 魚をとる、すなどる、いさる、あさる。
2. すなどりする人、漁夫。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕漁 スナトリ

[語系]
漁・魚ngiaは同声。〔説文〕が漁の正字とするngiaも同声。は聖所に用いる漁撈の方法を示す字であろう。のように、儀礼的な要素を加えた字形があることも注意される。

[熟語]
漁庵・漁隠・漁詠・漁塩・漁謳・漁翁・漁屋・漁家・漁歌・漁舸・漁課・漁火・漁竿・漁磯・漁具・漁戸・漁罟・漁刻・漁叉・漁・漁子・漁師・漁者・漁舎・漁舟・漁墅・漁唱・漁樵・漁色・漁食・漁侵・漁人・漁征・漁船・漁筌・漁荘・漁・漁・漁村・漁奪・漁釣・漁笛・漁畋・漁灯・漁伯・漁夫・漁父・漁利・漁梁・漁猟・漁郎
[下接語]
観漁・禁漁・涸漁・耕漁・樵漁・侵漁・筌漁・大漁・田漁・佃漁・陶漁・不漁・捕漁・夜漁

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