(読み)イソ

デジタル大辞泉 「磯」の意味・読み・例文・類語

いそ【×磯】

[名]
海・湖などの波打ち際。水際。特に、石の多い海岸。
波をかぶったり流れに洗われたりする岩石。
かんむりへりの名。
琵琶和琴わごんそうの胴の側面の名。
鞍橋くらぼね前輪まえわ後輪しずわの、に添って小高く盛り上がった部分の名。
[形動ナリ]《「富士は磯」の略から》
比較にならないさま。はるかに及ばないさま。
「うたてや久米の仙人も―なり」〈浮・御前義経記・二〉
未熟であるさま。浅薄であるさま。
「親父の悪性に合はせては、我等が遊びは―な事ぢゃが」〈浮・曲三味線・四〉
[類語]水際波打ち際海岸海辺うみべ海辺かいへん沿海沿岸海沿い浜辺海浜砂浜臨海湾岸州浜海水浴場リアス海岸シーサイドビーチ磯辺荒磯

き【磯】[漢字項目]

人名用漢字] [音]キ(漢) [訓]いそ
〈キ〉石が波に洗われる水際。「石磯」
〈いそ〉「磯辺
[難読]荒磯ありそ磯馴松そなれまつ

そ【×磯】

[語素]《「いそ(磯)」の音変化》他の語と複合して、いその意を表す。「あり」「離れ」「なれ木」

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精選版 日本国語大辞典 「磯」の意味・読み・例文・類語

いそ【磯・礒・石】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 石。岩。巖(いわお)
      1. [初出の実例]「伊蘇(イソ)の間(ま)ゆたぎつ山川絶えずあらば又もあひ見む秋かたまけて」(出典:万葉集(8C後)一五・三六一九)
    2. 岩石の多い波打ちぎわ。湖、池、浜、海、川などに用いる。
      1. [初出の実例]「浜つ千鳥浜よは行かず伊蘇(イソ)伝ふ」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    3. 特に海岸の波打ちぎわやその近くの海中で、岩塊や岩礁の多い所。「磯遊び」「磯釣り」
    4. 冠の縁(へり)の名。〔元和本下学集(1617)〕
    5. 琵琶、和琴(わごん)、箏の胴の側面の名。
      1. [初出の実例]「磯、是左右腋之総名也」(出典:楽家録(1690)七)
    6. 鞍の前輪、後輪の海に添う高いところ。
    7. 官許を受けていない色里や町家。官許の遊里(京都島原・大坂新町)を「沖」と呼ぶのに対していう。
      1. [初出の実例]「身躰(しんだい)をおもひの外なる磯にて舟をそこなひ」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)五)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「富士は磯」の略 )
    1. はるかに及ばないさま。
      1. [初出の実例]「磯(イソ)。富士は磯といふ上略なり」(出典:評判記色道大鏡(1678)一)
      2. 「古の田原藤太が勢田の橋は磯なり」(出典:浮世草子・武道伝来記(1687)七)
    2. 浅薄であるさま。未熟であるさま。下賤なさま。
      1. [初出の実例]「礒(イソ)なる色遊びは目緩(めまたるく)て」(出典:浮世草子・男色大鑑(1687)六)

そ【磯】

  1. 〘 造語要素 〙 ( 「いそ(磯)」の変化した語 ) 磯(いそ)。「ありそ(荒磯)」「はなれそ(離磯)」「そなれぎ(磯馴木)」など。
    1. [初出の実例]「離れ蘇(ソ)に立てるむろの木うたがたも久しき時を過ぎにけるかも」(出典:万葉集(8C後)一五・三六〇〇)
    2. 「あだ波の高師の浜のそ馴れ松馴れずはかけて我が恋ひめやも〈藤原定家〉」(出典:続古今和歌集(1265)恋二・一〇八八)

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普及版 字通 「磯」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 17画

(旧字)
17画

[字音]
[字訓] いそ・かわら

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(幾)(き)。〔説文新附〕九下に「大石、水に激するなり」とあって、岩に波のうち寄せるところ。〔万葉集〕には礒の字を用い、〔玉〕に「崟崎礒石巖なり」という。いわゆる岩場。またには「水中の磧なり。なり」とあって波打ちのかわら。に幾激の意があるのであろう。

[訓義]
1. いそ、かわら。
2. 水が石に激する、うちあたる、なでる。

[古辞書の訓]
立〕礒 イソ・カカム・セキ/ スサキナントナリ・イソナリ・マタ(タマ) 〔字鏡集〕 イソ・ナヅ・スル・タマ

[熟語]
磯激・磯釣・磯頭
[下接語]
倚磯・遠磯・廻磯・碕磯・漁磯・秋磯・石磯・磯・断磯・長磯・釣磯・湾磯

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「磯」の意味・わかりやすい解説

磯(海や湖の岸)
いそ

海や湖の岸で、水面付近に岩石が露出していて、砂礫(されき)などの堆積(たいせき)物がほとんどみられない波打ち際の場所のこと。また岩塊や大きな漂礫がごろごろしている海岸も磯あるいは磯辺(いそべ)といい、磯の広がる海岸を磯浜海岸または岩石海岸という。磯は、満潮面上にあるもの、潮間帯に位置するもの、干潮面下にあるものなどを含むが、それらは比較的平滑な岩棚(いわだな)もあり、また凹凸の著しいものもある。そのような磯の地形の特性は岩石の性質や波の条件などに左右される。磯には海藻が付着し、魚貝類も豊富に生息するので磯採集の対象となる。また磯浜海岸は海岸線が出入りに富み、海底地形も複雑である。その入り江には天然の港が形成されやすい。

[豊島吉則]


磯(鹿児島市)
いそ

鹿児島市街の北東端、吉野町の一地区。鹿児島湾に臨む景勝地で、磯の島津邸があり、邸内の磯庭園は国指定名勝。島津邸は万治(まんじ)年間(1658~1661)19代藩主島津光久(みつひさ)が別邸として建て、庭園は仙巌園(せんがんえん)ともよばれ、自然と人工美の調和のとれた回遊式の大庭園である。21代吉貴(よしたか)が琉球(りゅうきゅう)を通じて取り寄せた江南竹(モウソウチク)や28代斉彬(なりあきら)が日本で初めてガス灯を点じた石灯籠(いしどうろう)などがある。また付近には、斉彬建設の尚古集成館(しょうこしゅうせいかん)、反射炉跡、紡績所跡などがある。JR鹿児島中央駅前からバス30分。

[平岡昭利]


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改訂新版 世界大百科事典 「磯」の意味・わかりやすい解説

磯 (いそ)

砂浜海岸に対して,岩石海岸を磯あるいは磯浜という。岩礁性の海辺は,海藻をはじめ魚介類のかっこうの生息地となり,また砂浜に比べて海水の透明度が高いところから,古来より,箱めがねを用いて水中をのぞきながら,もりややす,あるいはかぎで魚を突くミツキ,カナギ,イソネギなどと各地で呼ばれる磯漁の舞台として,日本の沿岸漁業の中で重要な位置を占めてきた。
執筆者:


磯 (いそ)

琵琶,箏(そう),和琴(わごん)の胴の側面。箏や和琴は古くは箱造りもあり磯を別にとりつけたが,普通は彫槽(上板の裏面をかまぼこ形に刳(く)って裏板を張る)で,磯は上板の一部をなす。生田流の箏には磯にも金泥地や木画で装飾をほどこしたものもある。
執筆者:

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【冠】より

…平安時代中期に額充(ひたいあて)というものができ,多くこれを着けたが,後に額がかたく塗り固められるにいたって,従来の羅頭巾のなごりをとどめたものであったろう。(2)縁 磯ともいう。このような直立した縁ができたものも平安中期以後からのことである。…

【浦・浜】より

…一般に,海に突出した崎・岬に対して陸地が湾曲して湖海を抱えこんでいるところを浦といい,岩塊の露出した磯に対して砂泥や小石からなる海岸平地を浜という。日本の前近代を通じて漁村を表示する地名用語。…

【海岸】より

…うねりは波高にくらべて波長が大きい。うねりや風波は陸地に近づくと,海底での水粒子の摩擦により減速し,波長は短くなり,波高は高くなり,ついにある水深の所で砕けて,磯波として海岸に打ち寄せる。砕波帯より陸側では,水の動きは乱流状態となり,海浜底質は活発に動き,地形変化が激しい。…

【堆】より

…日本の海図ではこうした慣習名を図載している。すなわち出シ,グリ,ソワイ,ゾワイ,ソワ,曾根,バエ(碆),ハエ,シ(沚),岩,石,根,瀬,ビラシ,ツガイ(喰合),アサリ,モ(藻),モタレ,ヤマ(山),イソ(磯),場などの異称がある。【佐藤 任弘】。…

※「磯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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