労働者が一定時間内に遂行すべき標準作業量のことで,タスクまたはノルマとも呼ばれる。ただしロシア語のノルマnormaは,社会主義企業において労働者に課せられる標準作業量が本来の意味である。課業は,合理的な生産管理および労務管理を行うための最も基本的かつ重要な情報の一つであり,課業の合理的な設定は生産管理,労務管理の不可欠の前提である。今日では課業は,通常,作業についての動作研究と時間研究によって,次のように科学的に設定される。すなわち,動作研究によって,実際の作業をいくつかの要素動作に分解し,むだな動作を除去しあるいは不合理な作業方法を改善して,唯一最善の作業方法つまり標準作業方法を発見する。次に時間研究によって,この標準作業を構成する各要素動作に実際に必要な時間を測定,算定し,それらの時間を集計し,集計された時間量を平均的作業者のそれに修正し,さらに余裕時間を勘案して標準作業時間を決定する。こうして,標準作業方法,標準作業時間が定められ,その結果,標準作業量すなわち課業が科学的に設定される。以上のような動作研究,時間研究による課業の科学的設定を最初に試みたのは,F.W.テーラーの科学的管理法である。19世紀末のアメリカの多くの工場では,単純出来高給制度(能率給)が採用され,しかも出来高賃率の切下げがしばしば行われ,労働者はこれに組織的怠業systematic soldieringという手段をもって対抗したため,生産能率の低下が大きな社会問題となった。テーラーは,この問題を真に解決するためには,賃金支払形態を変えるだけでは不十分であり,従来根拠なしに定められていた賃率を科学的に決定し,安定させることこそが必要であると考え,その前提として,作業に対する標準を時間研究,動作研究によって科学的に設定した。さらに彼は,設定された課業の達成をはかるため,課業達成の場合とそうでない場合とによって賃率に差別をつける,いわゆる差別的出来高給制度を採用した。
執筆者:中村 圭介
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…その結果,労使の対立が激化・拡大した。テーラーの方法は,労使双方が合意できる方法で賃率を定めようとしたもので,科学的手法により作業を分析し,〈公正な1日の作業量である課業task〉を設定,賃率の基礎としようとした。テーラーの課業=目標の設定手法は,作業を要素作業に分割し,おのおのの作業時間をストップウォッチで測定し標準化したのち,合計して一定の余裕率を乗じて標準時間とするものであった。…
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[科学的管理]
その一環に先述のF.W.テーラーがいた。彼は1903年発表の《工場管理》で,工場管理の課題を低労務費・高賃金の実現に求め,1日の作業量=課業taskを動作研究・時間研究によって科学的に算出し,課業達成者には高賃率の賃金,そうでない者には低賃率の賃金を与えるという提案を行った。この場合の課業は,中心的な作業それぞれについて熟練労働者を5~6人から7~8人集めて作業を行わせ,動作研究を通して最速最適な動作のつながりをそのなかから発見し,これを標準的な仕事のやり方として確定する。…
※「課業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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