走（読み）ソウ

デジタル大辞泉

そう【走】［漢字項目］

［音］ソウ（漢）　［訓］はしる
［学習漢字］2年
１ はしる。「走行・走者・走破／競走・疾走・縦走・馳走ちそう・独走・帆走・暴走・奔走」
２ 逃げる。「潰走かいそう・脱走・逃走・敗走」
３ はしり使いをする。「走狗そうく・走卒」
［名のり］ゆき
［難読］師走しわす

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

はしり【走】

1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「はしる（走）」の連用形の名詞化 )
2. ① すばやく進むこと。なめらかに動いて行くこと。滑走。
   1. [初出の実例]「走りなむども疾(とく)して」(出典：今昔物語集（1120頃か）二三)
3. ② 「はしりぎ（走木）」の略。
   1. [初出の実例]「橋桁を渡る者あらば、走(ハシ)りを以て推し落す様にぞ構へたる」(出典：太平記（１４Ｃ後）一四)
4. ③ 逃亡すること。出奔。かけおち。
   1. [初出の実例]「失物か走りか心中がかった者なら奇妙に所をさいて見せるぞ」(出典：浄瑠璃・新版歌祭文（お染久松）（1780）座摩社)
5. ④ はしる人。先ばしりの者。先に立って行くしもべ。先がけ。
   1. [初出の実例]「五人の人々是を見て、まづはしりをやりすごし」(出典：浄瑠璃・公平つるぎのりっくわ（1661‐72頃）五)
6. ⑤ 台所の流し。食器、食物などを洗った水を洗い台の隅の小穴から下へ走り流すところからいう。
   1. [初出の実例]「成身院と一乗院と走の水の事被_二申出_一、種々及_二問答_一」(出典：多聞院日記‐天正一三年（1585）九月一四日)
7. ⑥ 季節にさきがけて出る野菜、果物、魚鳥など。はつもの。はしりもの。
   1. [初出の実例]「笠間より茶上。はしり一斗五升つつ、わき六升つつ」(出典：多聞院日記‐天正一一年（1583）四月二七日)
8. ⑦ ( ⑥の意から ) 同種のものの中で、最初となるもの。
   1. [初出の実例]「寧ろさうした走りの外国作家の名に馴れてゐないので」(出典：東京の三十年（1917）〈田山花袋〉ＫとＴ)
9. ⑧ 俳諧で、前句の勢いに乗ってつける付合の手法。
   1. [初出の実例]「走(ハシリ) 敵よせ来るむら松の音 有明の梨打烏帽子着たりけり」(出典：俳諧・葛の松原（1692）)
10. ⑨ 俳諧で、一句の調子がなめらかですらっとしていること。
    1. [初出の実例]「句のはしりよく、心のねばりすくなからん」(出典：俳諧・去来抄（1702‐04）先師評)

わしり【走】

1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「わしる（走）」の連用形の名詞化 )
2. ① 走ること。ある方面にひたすら進むこと。
   1. [初出の実例]「是に語りやうあり、睦びやうあり、努々恋のわしりにはあらず」(出典：評判記・色道大鏡（1678）五)
3. ② 金を貸して利息をかせぐこと。金を有利に運用すること。また、その利息。
   1. [初出の実例]「百五十匁を旦那殿へたのんで、月一匁五分づつのわしりにかけ」(出典：浮世草子・立身大福帳（1703）三)

出典　精選版 日本国語大辞典

普及版 字通

走
常用漢字 7画

[字音] ソウ
[字訓] はしる・おもむく・さる

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
人が手を振って走る形。〔説文〕^二上に「趨(はし)るなり」と訓し、次条の趨に「走るなり」と互訓。字形を「夭止に從ふ」とするが、全体を象形とみてよい。金文や〔詩、周頌、清〕にみえる「走」は祭祀用語。趨も儀礼の際の歩きかたをいう。わが国では「わしる」という。出幸の先駆を先馬走という。

[訓義]
1. はしる、かける。
2. おもむく、ゆく、むかう。
3. さる、出る、しりぞく、にげる。
4. はしり使い。自己の謙称に用いる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕走　ハシル・ユク・オモムク　〔字鏡集〕走　ハス・イタル・サル・ハシル・オモムク・ユク

[部首]
〔説文〕に八十四字、重文一字、〔玉〕に百五十六字を属する。おおむね形声の字である。

[語系]
走tzo、足tziokは声義近く、走が動詞であろう。趨・趣tsioも同系の語である。

[熟語]
走謁▶・走舸▶・走火▶・走价▶・走海▶・走狗▶・走戟▶・走犬▶・走作▶・走索▶・走▶・走死▶・走使▶・走謝▶・走集▶・走胥▶・走書▶・走心▶・走水▶・走趨▶・走卒▶・走肉▶・走避▶・走筆▶・走伏▶・走文▶・走報▶・走亡▶・走北▶・走奔▶・走免▶・走利▶・走令▶・走路▶
[下接語]
逸走・遠走・快走・潰走・滑走・却走・狂走・競走・驚走・群走・軽走・継走・疾走・縦走・出走・迅走・趨走・脱走・馳走・追走・逃走・独走・走・背走・敗走・発走・反走・帆走・飛走・歩走・亡走・暴走・北走・力走

出典　平凡社「普及版 字通」