踏む(読み)フム

デジタル大辞泉 「踏む」の意味・読み・例文・類語

ふ・む【踏む/履む/践む】

[動マ五(四)]
足で体重をかけて上から押さえる。足であるものの上にのる。「麦を―・む」「猫のしっぽを―・む」「ブレーキを―・む」
交互に足を上げ下げする。「四股しこを―・む」「地団駄じだんだを―・む」
その場に身を置く。ある場所を訪れる。「ヨーロッパの土を―・む」
実際に経験する。「場数を―・む」「初舞台を―・む」
決まったやり方に従って行う。「複雑な手続きを―・む」
守り行う。「人として―・み行うべき道」
(「御百度を踏む」などの形で)お参りをする。参詣する。「願かけに御百度を―・む」
前もって見当をつける。見積もりや値ぶみなどをする。「どう―・んでも安物だ」
句の末や頭に同じ韻に属する文字を用いる。押韻する。「頭韻を―・む」
10 借金などを返さないで、相手に損害を与える。
「お前さんなんぞに借りてる物なんか、―・んで死ぬ様な吉里じゃあないからね」〈柳浪今戸心中
11 地位に就く。「帝位を―・む」
12 信用取引で、売建玉を損を承知で買い戻す。
13 足で下のものを押さえつけて前へ進む。
雨雲を袖して分くる山―・まむとは」〈かげろふ・下〉
14 足でさぐって魚介を捕る。
「女男の分かちなく、蜆蛤―・む姿」〈浄・三日太平記
[可能]ふめる
[下接句]韻を踏む牛にも馬にも踏まれず御百度おひゃくどを踏む三尺去って師の影を踏まず地踏鞴じたたらを踏む地団駄じだんだを踏む水火すいかを踏む前車のてつを踏む前轍を踏む踏鞴たたらを踏む轍を踏むどじを踏むとらの尾を踏む二の足を踏む場数を踏む薄氷を場所を踏む竜のひげで虎の尾を踏む
[類語]踏みつける踏まえる踏ん張る踏み締める踏ん付ける踏み抜く踏み潰す踏みにじる踏み荒らす踏みしだく

ほ・む【踏む】

[動マ四]ふむ」に同じ。
大虚おほぞらを―・みて、御諸山みもろのやまに登ります」〈崇神紀〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「踏む」の意味・読み・例文・類語

ふ・む【踏・履・践】

  1. 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 足を上からおろして、下にある物を押えるようにする。また、足の位置を移動する。
    1. 足の下にする。足で押えつける。
      1. [初出の実例]「いかなるや 人にいませか 石の上を 土と布美(フミ)なし 足跡(あと)(の)けるらむ 貴くもあるか」(出典:仏足石歌(753頃))
    2. 足で下のものを押えるようにして前に進む。
      1. [初出の実例]「岩根布美(フミ) 山越え野行き 都辺に 参(ま)ゐしわが背を」(出典:万葉集(8C後)一八・四一一六)
    3. その場に身を置く。その土地を訪れることをいう。
      1. [初出の実例]「本朝高野山に生身の大師入定して御座す。此の霊地をも未だ蹈まずして徒らに日月を送る身の」(出典:葉子十行本平家(13C前)一〇)
    4. ( 「お百度をふむ」などの形で ) 参詣する。
      1. [初出の実例]「沼田の庄にて、百日の日をふんで、いま鎌倉へ上るとて」(出典:御伽草子・唐糸草子(室町末))
    5. 足で突く。蹴る。
      1. [初出の実例]「マナコト ヲボシイ アタリヲ チカラニ マカセテ シタタカニ fumeba(フメバ)」(出典:天草本伊曾保(1593)獅子と驢馬のこと)
    6. 足拍子をとる。足踏みしながら舞う。舞踏する。
      1. [初出の実例]「三番は熊野が娘の侍従、太平楽をふむ」(出典:御伽草子・唐糸草子(室町末))
    7. はきものをはく。
      1. [初出の実例]「クツヲ fumu(フム)〈訳〉靴をはく。下(シモ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    8. 足で探る。あさる。
      1. [初出の実例]「女・男のわかちなく、蜆・蛤踏(フム)姿」(出典:浄瑠璃・三日太平記(1767)二)
  3. [ 二 ] 身体をしかるべき場に置く意から、比喩的に用いる。
    1. あとをひき継ぐ。踏襲する。
      1. [初出の実例]「親から践(フメ)る者は一百十一国、伝て聞ける者は二十八国」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)序)
    2. ( 「位をふむ」の形で ) 身をその地位に置く。位につく。
      1. [初出の実例]「天子位をふむ先蹤、和漢かくのごとし」(出典:平家物語(13C前)四)
    3. ことばだけでなく)実際に行なう。履行する。実践する。
      1. [初出の実例]「伯夷・叔斉が潔きを踏(フミ)にし跡」(出典:太平記(14C後)一三)
    4. その過程を通る。規範などにのっとって従う。
      1. [初出の実例]「正当の手続きを踏まないで」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)
    5. ( 多く「舞台をふむ」の形で ) 出演する。技芸を行なう。
      1. [初出の実例]「花代も舞台踏(フム)は銀一枚に定めぬ」(出典:浮世草子・男色大鑑(1687)五)
  4. [ 三 ] 実地に調査して、確実なものを得る。
    1. 値段をつける。評価する。鑑定する。判断する。
      1. [初出の実例]「どうやすくふんでも、五六百両がものはあるのさ」(出典:黄表紙・江戸生艷気樺焼(1785)中)
    2. 比率を定める。割合をきめる。
      1. [初出の実例]「知行百貫とる者、大形五十貫は名田と申物にて、年貢少づつ出し、残は其地主、知行にふみてとる」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品四七)
  5. [ 四 ] 損失を与える。
    1. 代価を支払わないで、相手に損害を与える。踏み倒す。
      1. [初出の実例]「当時は病家から医者を踏(フム)が沢山ある」(出典:談義本・教訓雑長持(1752)二)
    2. 金銭的に損をする。相場で損を承知で見切るなど。
      1. [初出の実例]「利敗のために心をうてども、ふんで愁へざるは新地の宴(たて)にあらはれ」(出典:洒落本・北華通情(1794))
    3. 花札で他人が同種の札二枚を持っていてそのうちの一枚を場に捨てたとき、それをすぐに取る。また、他人のめくり出して場に捨てた札をすぐに取る。
      1. [初出の実例]「拙者がひょっと八をめくると、赤蔵(あかぞう)ができますから、ひらに八をおふみなされ」(出典:黄表紙・孔子縞于時藍染(1789)上)
  6. [ 五 ] ( 「韻をふむ」の形で ) 漢詩西洋の詩などで、所定のところに、同一の韻や類似音を配することをいう。押韻する。
    1. [初出の実例]「梯子に代へて降りて来る総て韻をルで蹈(フ)んでサアおぢゃと路次まで出るはいいが」(出典:売花翁(1893)〈斎藤緑雨〉)

ほ・む【踏】

  1. 〘 他動詞 マ行四段活用 〙ふむ(踏)
    1. [初出の実例]「船を蹈(ホム)て傾す」(出典:日本書紀(720)仁徳即位前(前田本訓))

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