(読み)メス

デジタル大辞泉 「雌」の意味・読み・例文・類語

めす【雌/×牝】

動物性別で、卵巣を持ち、卵や子を産むほう。また、植物雌花をつけるもの。⇔おす
雌ねじ。またはコネクターなどの接続部品において、接続部が凹になっている側(ソケット)。⇔
[類語]女性女子婦女婦女子おなごおみなたおやめあま女史婦人女人じょじん・にょにんウーマン有性無性雌雄

し【雌】[漢字項目]

常用漢字] [音](呉)(漢) [訓]め めす
〈シ〉
めす。「雌雄
めめしい。女性的。「雌伏
〈め〉「雌牛雌花

めん【雌】

めす。め。「―鳥」⇔おん
「合いの子の蹴合鳥、―かけると弱いが」〈上司太政官

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「雌」の意味・読み・例文・類語

め【雌・女・牝・妻】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 女。女性。めす。⇔お。
      1. [初出の実例]「若草の 妻持たせらめ 我はもよ 売(メ)にしあれば 汝を置(き)て 男(を)は無し」(出典:古事記(712)上・歌謡)
    2. 配偶者、または愛人としての女性。妻。
      1. [初出の実例]「大汝 少彦名の 神代より 言ひ継ぎけらく 父母を 見れば尊く 妻(め)子見れば 愛しくめぐし うつせみの 世の理と」(出典:万葉集(8C後)一八・四一〇六)
      2. 「年頃あひ馴れたるめ、やうやう床離れて、遂に尼になりて姉の先だちてなりたる所へ行くを」(出典:伊勢物語(10C前)一六)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙
    1. めす、または女性であることを表わす。「め鳥」「め神」「め奴」など。
    2. 妻、または妻の側であることを表わす。「め方」「めとる」「めのと」など。
    3. 比較して、小さいこと、弱いことなどを表わす。「め滝」「め波」「め瓦」など。
    4. 陽に対して陰であることを表わす。「め時」など。

雌の補助注記

古くは女性一般を意味していたが、平安時代以降、「をんな」と次第に交替し、「め」は待遇度が低下して、女性の蔑称として用いられることになった。


めす【雌・牝】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一般に卵巣をもち、卵をつくる動物をいう。植物などでは大配偶子をつくるものや、雌の形質を多くもつ個体をいう。め。めん。⇔雄(おす)。〔和英語林集成(初版)(1867)〕
    1. [初出の実例]「それで雌(メス)(をす)が分かるかと云へば」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉一七)
  3. 女性をののしっていう語。

し【雌】

  1. 〘 名詞 〙 めす。古くは、鳥類のめす。⇔雄(ゆう)
    1. [初出の実例]「此剣必ず雄(ゆう)と雌(シ)と二つ有るべし。其雌雄一所に有らざる間、是を悲で泣者也」(出典:太平記(14C後)一三)
    2. [その他の文献]〔詩経‐小雅・小弁〕

めん【雌・牝】

  1. 〘 名詞 〙 め。めす。⇔おん(雄)
    1. [初出の実例]「おんとめんとほたへてゐる中のよいのが、ちんちんぢゃ」(出典:咄本・新板一口ばなし(1839)一六)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「雌」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

[字音]
[字訓] めす

[説文解字]

[字形] 形声
声符は此(し)。〔説文〕四上に「鳥母なり」とあり、めんどりをいう。此に細小なるものの意がある。此はもと牝牡の牝を示す記号的な匕(ひ)に、止(し)声を加えた形声字で、これを隹(とり)の類に及ぼして雌という。雌雄の意より、優劣の意となる。〔老子〕に謙下不争、雌を守って争わないことを、至道とする考えかたがある。

[訓義]
1. めす、めんどり。
2. よわい、やさしい。
3. まけ、まける。

[古辞書の訓]
名義抄〕雌 メドリ・ノチ・マク 〔字鏡集〕雌 メドリ・ヤハラカ・カツ・ヒメ・マク・ノチ

[熟語]
雌花・雌・雌霓・雌黄・雌字・雌声・雌節・雌・雌懦・雌竹・雌風・雌伏・雌雄・雌劣
[下接語]
寡雌・慈雌・守雌・柔雌・循雌・孀雌・伏雌

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「雌」の意味・わかりやすい解説

雌 (めす)
female

一般に雌雄異体あるいは雌雄異株の生物において,卵形成をつかさどる卵巣もしくは造卵器をもつ個体をさす。雄の対語。しかし多くの生物は,雌雄異体の場合でも雄の形質と雌の形質を重複してもっているため,生物学的には雌形質を多くもっている個体を雌と呼ぶ。この場合の雌形質とは,卵巣および輸卵管,子宮,腟などの付属器官,その他雌に特徴的な外部形態,行動,心理をさす。雌雄の区別は多細胞生物のみならず,単細胞生物や細菌でもみつかっている。例えば大腸菌には,性繊毛という長い器官をもつ個体と,もたない個体がいる。性繊毛をもつ方を雄菌,もたない方を雌菌と呼ぶ。雄菌は性繊毛を橋渡しとして雌菌と接合し,自己の染色体や細胞質中のF因子と呼ばれる環状DNAを送り込む。その結果,遺伝子の組換えを行い,遺伝的な変異性を作り出している。同様に多細胞生物は,受精を介して種々の遺伝子の組合せの子孫を生じさせる。以上から一般に生物は,細胞どうしの接着を介して遺伝的組換えを行うことになり,遺伝子を受け取る個体もしくは受け取る細胞(卵)をもつ個体を雌と定義できる。

 自然界においては,単為生殖によって新個体を増やすことが可能なのは雌のみ(例,アリ,ハチ)であり,また雌だけで種を保存している生物(例,関東地方のギンブナ,アマゾンモーリーなど)も知られている。下等な動物には雄が雌に寄生している例がある。また哺乳類の場合,遺伝的な雄であっても,雄性ホルモンの分泌を抑えると雌性の生殖器官が発達してくることなどから,雌雄性の基本は雌型だとする説がある。生物学では符号♀で表す。これは女神ビーナスの手鏡の形に由来するといわれている。

執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雌」の意味・わかりやすい解説


めす

雌雄異体の生物のなかで卵、または大配偶子を生産する個体をさす。雄の対語。雌のつくる配偶子は雄のものに比べ、大形で運動性を欠くものが多いが、一方で栄養分を多く蓄えていることによって胚(はい)発生を助けている。動物では、卵生、胎生、卵胎生などの違いや胚発生の速度と関連して、種によって卵の大きさに著しい差を生ずる。また、生殖に際しては一般的に受動的な行動を示すが、反面、哺育(ほいく)行動では主要な役割を演ずるものが多い。哺乳類では、雌は繁殖期中に一定の周期で排卵を行い、その際性ホルモンの影響によって発情がおこり、交尾を許容するようになる。また、雄に比べ外形や行動には幼時の特徴が保持されることが多いが、哺乳類の乳腺(にゅうせん)のように、雌でとくに発達する外形的変化も存在する。

[木村武二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「雌」の解説

 卵を生産したり,子を産んだりする側の性.微生物でも遺伝子を受け入れる側の性をいう.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android