精選版 日本国語大辞典「女」の解説
おんな をんな【女】
〘名〙 (「をみな(女)」の変化した語) 人間のうち、男ではない方。本来卵子をつくる器官をそなえている方。
※竹取(9C末‐10C初)「この世の人は、男は女にあふ事をす。女は男にあふことをす」
② 特に、精神的にも肉体的にも、一人前となった女性。やさしい、しとやか、繊細など、女性の特質とされる意味を含んで使われる場合もある。
※青表紙一本源氏(1001‐14頃)玉鬘「年ごろも人知れず尋ね侍りつれば、え聞き出ででなむ女になるまで過ぎにけるを」
③ 夫に対する配偶者。妻。女房。
※虎明本狂言・石神(室町末‐近世初)「おんなのかけでいままで某は、らくらくとすぎて御ざるに、あれがいずはそれがしは何共なるまひ」
④ 情婦。愛人。妾。
※金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉続「其の通だ。情婦(ヲンナ)が有るのが奈何(どう)したと」
⑤ 下女。女中。〔随筆・守貞漫稿(1837‐53)〕
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「給事の婢(ヲンナ)が不慣れなので」
⑥ 遊女。女郎。淫売婦。売春婦。
※洒落本・船頭深話(1802)一「女郎の事を女女といふが此連中の通り句也」
⑦ 女性の容貌、器量。→女を上(あ)げる。
※人情本・花暦封じ文(1866頃)三「然様(さう)して女(ヲンナ)も大層美(い)いさうですから」
⑧ 雌性のもの。「女馬」
⑨ 対になったもののうち、小さい、なだらか、などの性質をそなえた方。「女坂」「女山」
[語誌](1)古代では男女の呼称を、大小を表わすオとヲでいうオキナ━オミナ、ヲグナ━ヲミナと、若返る意の動詞ヲツを構成要素とするヲトコ━ヲトメがあって、前者は年長・年少の男女を意味し、後者は結婚適齢期の男女を意味した。ところが「古事記」では同じ女性をヲトメともヲミナとも呼んでおり、「万葉‐四三一七」では「秋野には今こそ行かめもののふの乎等古(ヲトコ)乎美奈(ヲミナ)の花にほひ見に」とヲトコとヲミナが対になっているから、年少の女性の意と適齢期の女性の意が混同されて、ヲトコ━ヲミナという対が生じたらしい。そしてヲトコが男性一般をいうようになったのに伴ってヲミナも平安時代にヲンナと変化し、女性一般を指すようになった。→おみな・おうな・おとめ・おとこ。
(2)→「おなご(女子)」の語誌
(2)→「おなご(女子)」の語誌
じょ ヂョ【女】
[1] 〘名〙 おんな。婦人。また、女郎。
※幸若・夜討曾我(室町末‐近世初)「二人のちょはいろをみて、御盃の長持は、おさかなの所望かや。ざしきに女のありながらいざやうたひて参らせむ」
※寄想春史(1879‐80)〈織田純一郎訳〉初「花を売る女(ヂョ)は街隅に
屯(ほうとん)す」 〔易経‐繋辞上〕

[2] 二十八宿の北方第三宿。水瓶座に属する四星から成る。女宿。うるきぼし。〔易林本節用集(1597)〕 〔礼記‐月令〕
[3] 〘接尾〙 女性の名前や号などに添える語。「千代女」「秋色女」など。
※幸若・築島(室町末‐近世初)「名月女と名付」
おな をな【女】
〘名〙 (「おんな(女)」の変化した語) 若い妻、娘などをさしていう。おなあ。おなご。
※大鏡(12C前)一「そこにおはするは、そのをりの女人(ヲナ)にやみてますらん」
おみな をみな【女】
〘名〙 若い女。
※古事記(712)下・歌謡「呉床座(あぐらゐ)の 神の御手もち 弾(ひ)く琴に 舞する袁美那(ヲミナ) 常世(とこよ)にもがも」
おなあ をなあ【女】
〘名〙 =おな(女)
※雲形本狂言・貰聟(室町末‐近世初)「ヱイおなあ、ようこそおりあったな」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報