翻訳|mica
アルカリおよびアルカリ土類金属、鉄、マグネシウム、マンガン、バナジウムなどを主成分とする含水アルミノ珪(けい)酸塩鉱物の一グループ。
[松原 聰]
雲母の一般的特徴として以下の点があげられる。
(1)一方向に完全な劈開(へきかい)があり、薄くはがれやすい。
(2)劈開片は曲げることができ、弾性があってじょうぶである。
(3)また電気や熱の伝導性が低く、高電圧に耐える力をもっている。
雲母の構造は、ケイ素あるいはアルミニウムを中心にもつ酸素の四面体が結び合ってつくっている層が2枚あり、鉄やマグネシウムを中心にもつ八面体層を挟んだものを基本としている。これらの複合層の間にアルカリ金属やアルカリ土類金属が入っている。このように構造が層状にできているため、完全な劈開がよく発達しているのである。
[松原 聰]
国際鉱物学連合(IMA)の取決めで、雲母の分類、種名の整理が行われた。雲母の種類としてよく知られている黒雲母は、独立した種名ではなく、現在では四つの端成分からなる雲母の総称ないしフィールド名である。この黒雲母と白雲母の二つはもっとも多量に産出し、造岩鉱物として重要である。また絹雲母(セリサイト)やイライトのように粘土鉱物として重要なものもある。ほかに日本で産するものに、海緑石、セラドン石、ソーダ雲母、ロスコー雲母、鱗(りん)雲母、チンワルド雲母、益富(ますとみ)雲母、砥部(とべ)雲母、真珠雲母、クリントン雲母、木下(きのした)雲母がある。以上のうち、益富雲母(リチウム、マンガンが主成分)、砥部雲母(アンモニウムが主成分)、木下雲母(バリウム、マグネシウムが主成分)の3種は、日本で最初に発見された鉱物。雲母の学名は、きらきらと輝くという意味のラテン語micareに由来する。
[松原 聰]
雲母
英名 mica
化学式 XY2~3Z4O10(OH,F)2
少量成分 ―
結晶系 単斜
硬度 2~3
比重 2.4~3.2
色 無,黒,緑,褐,紅,黄
光沢 ガラス,真珠
条痕 白,淡緑,淡褐
劈開 一方向に完全
(「劈開」の項目を参照)
その他 X=K,Na,Ca,Ba,NH4
Y=Mg,Fe,Al,Li,Ti,Mn,V,Cr,Zn
Z=Si,Al,Fe
うんぼ,マイカmicaともいい,俗に“きらら”ともいう。層状のケイ酸塩鉱物のうち主要なもので,平らに薄くはがすことのできる鉱物。重要な造岩鉱物の一つであるほか,電気製品に絶縁材料として用いられた。雲母の鉱物学的定義および諸性質はその層状につながった原子配列によるところが多い。雲母の結晶構造の基本単位は,Si,Al,Fe3⁺などを含む酸素四面体が二次元的につながった四面体シート2枚にはさまれた,八面体配位をなす陽イオンの酸素八面体が二次元的につながった1枚のシートよりなる。この基本単位層の間に水和していないK,Naなどの層間陽イオンをはさみながら積み重ねたものが雲母の基本構造であり,約10Åの厚さをもつ。四面体陽イオンは(Si,Al)2O5の組成をもつ。八面体陽イオンにはFe2⁺,Mg,Mn,Li,およびAlと時に少量のFe3⁺,Cr,Tiなどを含む。化学組成の変化に応じて色,比重,光学的性質は変化する。かならずしも連続的な固溶体が存在するとは限らない。酸素を10としたときの化学式で八面体陽イオンの数が2.5~3のものを三・八面体雲母,2~2.5のものを二・八面体雲母という。層間にCaなど2価の陽イオンの入ったものはゼイ(脆)雲母と呼ばれている。
(1)二・八面体雲母
白雲母muscovite KAl2(Si3Al)O10(OH)2
ソーダ雲母paragonite(ナトリウム雲母,パラゴナイトとも呼ぶ)NaAl2(Si3Al)O10(OH)2(2)三・八面体雲母
金雲母phlogopite KMg3(Si3Al)O10(OH)2
黒雲母biotite K(Fe,Mg)3(Si3Al)O10(OH)2
アナイトannite KFe3(Si3Al)O10(OH)2
イーストン石eastonite KMg2.5Al0.5(Si2.5Al1.5)O10(OH)2
シデロフィライトsiderophyllite KFe2.5Al0.5(Si2.5Al1.5)O10(OH)2
鱗雲母lepidolite(紅雲母,リシア雲母,レピドライトとも呼ぶ)KLi2AlSi4O10F2からK(Li,Al)2.5(Si,Al)(OH,F)2
雲母は平板状にわれやすく,六角板状に近い外形を示すが,他の結晶面はあまり発達しない。また双晶していることが多い。10Åの厚さをもつ単位層が周期的に積み重なった構造は単斜晶系の対称をもつ。しかし積み重なり方の違いにより結晶系,空間群,構造の異なるポリタイプを生ずる。2層のポリタイプには単斜晶系のもの二つ(2M1,2M2)と斜方晶系のもの(2O)がある。3層のものでは三方晶系(3T)が普通であるが,時に三斜晶系のものを産する。31層のものまで知られている。白雲母は肉眼的に白色で,顕微鏡で見ると無色透明,比重は2.8~3.0である。ペグマタイトの中には数十cmに達する大きい結晶を産するものもある。黒雲母は肉眼的には黒色で,顕微鏡で見ると一般に褐色である。花コウ岩,雲母片岩中の黒い鉱物は多くの場合,黒雲母である。金雲母は肉眼的には黄褐色,顕微鏡では無色である。比重は2.8~3.4である。鱗雲母はLiを含み,肉眼的には白~淡紅色であり,主にペグマタイトに産する。ソーダ雲母は黄みのある灰色で顕微鏡下では無色,まれに変成岩の中に産す。工業用材料にフッ素を含んだ雲母が合成されている。
執筆者:武田 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
X2Y4~6[(Si,Al)8O20](OH,F)4.X = K,Naのものを脆雲母(brittle mica),X = Caのものを普通雲母(common mica)という.Y = Al,Fe,Li,MgでYが4のものをジオクタヘドラル型雲母,6のものをトリオクタヘドラル型雲母と大別する.フィロケイ酸塩鉱物に属し,SiO4の四面体の層状構造の間にほかのイオンがはさまれている.火成岩,変成岩,たい積岩中に広く分布する.合成も工業的な規模で行われており,たとえば,フッ素金雲母(fluorphlogopite)は,K2SiF6・6MgO・Al2O3・5SiO2の成分を自己抵抗加熱により1000~1300 ℃ に熱して大結晶を育成できる.これは天然産雲母に比べて,耐熱性にすぐれている.また,結晶構造のうえから層の積重なりの違いにより,1M型(一層),2M型,2O型(二層),3T型(三層),6H型(六層)などの多形が知られている.単斜晶系板状結晶.密度2.75~3.2 g cm-3.硬度2.5~4.n1.525~1.696.白雲母,金雲母,べに雲母などは,耐熱絶縁材料として広く利用されている.
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…重要な造岩鉱物の一つであるほか,電気製品に絶縁材料として用いられた。雲母の鉱物学的定義および諸性質はその層状につながった原子配列によるところが多い。雲母の結晶構造の基本単位は,Si,Al,Fe3+などを含む酸素四面体が二次元的につながった四面体シート2枚にはさまれた,八面体配位をなす陽イオンの酸素八面体が二次元的につながった1枚のシートよりなる。…
…その句風は初め空想的,妖艶趣味が強かったが,のち風土に根ざして自然と自己の混然一体化した生命感を,雄勁重厚に格調高くうたい上げた。17年,俳誌《雲母(うんも)》を主宰し,甲斐の山村の風土に腰を据えて句作を続け,《山廬集》(1932),《山響(こだま)集》(1940)などを上梓。戦中戦後両親と3児を失う悲運に耐えて句境を深め,俳壇の重鎮として活躍した。…
…油もεが小さい欠点があるが,高分子膜と組み合わせることにより大型のコンデンサーを作ることが可能であり,コロナ放電を生じにくい特性をもつことから,主として高耐圧の大型コンデンサーに使用されている。セラミックスとしては雲母(マイカ),アルミナAl2O3,酸化タンタル,酸化チタン,チタン酸バリウム,チタン酸ストロンチウムなどが広く使われている。雲母は高分子膜と同様な長所をもつうえ,εが7.2とかなり大きく,しかも高周波特性が優れているので,大容量のものは作製できない欠点はあるものの,高周波用として広く使われている。…
※「雲母」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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