一色(読み)イッショク

デジタル大辞泉 「一色」の意味・読み・例文・類語

いっ‐しょく【一色】

一つの色。ひといろ。「屋根も壁も白一色に塗る」
全体が同じ一つの傾向でおおわれること。「町は祭り一色に塗りつぶされた」
[類語](1単色モノトーン/(2均質均等画一的均一画一等質同質一様一律

いっ‐しき【一色】

[名]
一つの色。ひといろ。いっしょく。
華道で、一種類の花木を生けること。「万年青おもと一色にいける」
物事の一種類。また、同じ種類。ひとしな。
「しわい人でつひに孫どもに何を―くれられたことが御座らぬ」〈虎寛狂・財宝
[名・形動](「一式」とも書く)いちずであること。また、そのさま。
「真面目―な文句」〈漱石明暗

いっしき【一色】

室町時代守護大名足利あしかが氏の一支族。足利泰氏の子の公深こうしん三河国吉良庄一色に住んだことに始まる。その子の範氏のりうじ足利尊氏に従って九州で戦い、のち四職ししき家の一となる。

ひと‐いろ【一色】

一種類の色。いっしょく。
一つだけの種類。一種類。

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精選版 日本国語大辞典 「一色」の意味・読み・例文・類語

いっ‐しき【一色・一式】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ほかの色をまじえない一つの色。また、同じ色。ひといろ。いっしょく。
    1. [初出の実例]「小袴者、ふくさ紫に染たる一色令着也」(出典:山槐記‐永暦二年(1161)四月二五日)
    2. 「蒼海は天と一色(イッシキ)にして」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)前)
  3. 一つの物事。一つの種類。一種類。また、同じ種類。同種類。一品(ひとしな)
    1. [初出の実例]「彼(そ)の衆人皆一色の容(かたち)を作(な)す」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
    2. 「絵を描かする。白鷺(しらさぎ)の一色(シキ)を望む」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)三)
  4. いっしきでん(一色田)」の略。
  5. ( 現在は「一式」と表記する ) 鎧(よろい)や道具の一揃い。一支具。一縮。転じて、ある物事のすべて。
    1. [初出の実例]「鎧草摺長なる一色ささめかして」(出典:延慶本平家(1309‐10)一本)
    2. 「夫(をっと)一式(シキ)の世話は女房の役目である」(出典:二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中)
  6. ひとりだけで何かを行なうこと。また、自分ひとりだけの物事。
    1. [初出の実例]「此田地者一色也」(出典:大徳寺黄梅院文書‐天正一一年(1583)二月五日・中村六郎左衛門尉田地売券)
  7. ( 一式 ) ある物事に偏ること。一方。
    1. [初出の実例]「葉桜は呑む一式のやから出る」(出典:雑俳・柳多留‐一一(1776))
  8. 華道で、一種類の草木をいけること。
    1. [初出の実例]「松の一色(イッシキ)ばかり、外の色どりすくなければ」(出典:立花大全(1683)一)
  9. 仏語。相対立した差別を超越して同一であること。
    1. [初出の実例]「これ一色の正修行なり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)渓声山色)

一色の語誌

( 1 )関連するいくつかの事物を同一のものとしてとらえ取り扱う意を表わすの用法を持つところから、武具甲冑(かっちゅう)の一揃いをいう「いっしゅく(一縮)」の転「いっしく(一支具と表記される)」と混同されて生じたのがの用法だと考えられる。
( 2 )近世以降見られるの用法がもっぱら「一式」の表記を取るのは、「皆式(かいしき)」「合式(がっしき)」などの語と同じ「『一(専一)』なる『式(ありさま・ようす)』」の構成を持つ語と解釈されたためか。


いっ‐しょく【一色】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 他の色の混じらないこと。一つの色。同じ色。
    1. [初出の実例]「加霜一色(イッショク)朝、川上与山頭」(出典:評判記野郎虫(1660)加川右近)
    2. [その他の文献]〔漢書‐梅福伝〕
  3. 同じたぐい。同じ傾向。〔高力士伝〕

ひと‐いろ【一色】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 単独の色。一つの色。いっしょく。いっしき。
    1. [初出の実例]「五色にいまひといろぞたらぬ」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月一日)
  3. 一つの種類。いっしき。
    1. [初出の実例]「是ひと色御ざらねば、今までのがむになる程に」(出典:虎明本狂言・粟田口(室町末‐近世初))

ひとつ‐いろ【一色】

  1. 〘 名詞 〙 一種類の色。また、同じ色。ひといろ。いっしょく。
    1. [初出の実例]「ちくさにもしもにはうつるきくのはなひとついろにぞつきはそめける」(出典:躬恒集(924頃))

いっしき【一色】

  1. 姓氏の一つ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一色」の意味・わかりやすい解説

一色
いっしき

愛知県中南部、幡豆郡(はずぐん)にあった旧町名(一色町(ちょう))。現在は西尾(にしお)市の南西部を占め、三河湾に面する。旧一色町は1923年(大正12)町制施行。1954年(昭和29)佐久島(さくしま)村を編入。2011年(平成23)西尾市に編入された。国道247号が通じ、一色港―佐久島間には定期船が運航。矢作古川(やはぎふるかわ)の川口にあって矢作古川のつくったデルタと干拓新田が主で、米作カーネーションを主とした花卉(かき)栽培、養鰻(ようまん)業、ノリ養殖が盛ん。一色港は、沿岸漁業の基地。漁網、海老(えび)せんべいの特産がある。佐久島は三河湾最大の島で、他の島に比べて歴史が古く、数十基からなる古墳群があり、海水浴場やキャンプ場、海釣りセンターもある。8月26~27日の諏訪(すわ)神社の大提灯(ちょうちん)祭は、全長10メートルに及ぶ12個の大提灯を掲げ、海魔除(よ)けの祭礼で有名。

[伊藤郷平]

『『一色町誌』(1970・一色町)』『『一色町二十五年誌』(1994・一色町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「一色」の意味・わかりやすい解説

一色 (いっしき)

(1)一つの色,同じ色,(2)一つの種類,同じ種類,一品,(3)ひとそろい,ある物事のすべて,一式,などの意味で用いられるが,(2)の用法が一般的である。とくに古代から中世にかけては,一色は〈諸課役のうち,一種類の課役のみを負う〉という意味で用いられることが多い。

 日本の荘園制国衙領)下にあっては,一般の田地(名田)は年貢(官物)と雑公事との双方を課せられるが,そのうちの一方のみを納め,他方を免除されていて納めない場合,それを一色という言葉で表す。ただし,実例では年貢(官物)のみを納める場合がほとんどであった。たとえば,一色別納,一色別符といえば,荘園領主あるいは国に対しては年貢(官物)のみを納め,雑公事を免除されていることをいう。また,一色田は,荘園の耕地のうちの荘園領主直属地という意味で用いられることが多いが,これは,名田が年貢・雑公事の双方を負担するのに対して,直属地は年貢のみを負担することに由来する。
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一色(旧町) (いっしき)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一色」の意味・わかりやすい解説

一色
いっしき

愛知県南部,西尾市南西部に位置する旧町域。知多湾に臨む。1923年町制。1954年三河湾に浮かぶ佐久島村を編入。2011年西尾市に編入。矢作古川の右岸の三角州に位置する。大部分は江戸時代以降の干拓地であり,米作のほか,カーネーションやキュウリの施設園芸,キクの栽培が行なわれる。市子川河口の一色港は漁港,後背地への物資の移入港として栄えた。近年はノリ,ウナギなど淡水魚の養殖,水産加工などが行なわれ,造船,漁網が製造される。毎年 8月の諏訪神社の大提灯まつりは有名。面積 22.53km2。人口 2万4068(2005)。

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百科事典マイペディア 「一色」の意味・わかりやすい解説

一色[町]【いっしき】

愛知県南部,知多湾に臨む幡豆(はず)郡の旧町。市子(いちご)川河口の一色は漁港として発展した。ノリ・淡水魚養殖が行われ,米,花卉(かき),蔬菜も産する。えびせんべいなど水産加工も行う。2011年4月幡豆郡吉良町,幡豆町と西尾市へ編入。22.53km2。2万3829人(2010)。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「一色」の解説

一色
いっしき

(1)一つの色,同じ色。(2)一つの種類,同じ種類。(3)一式,ひとそろいなどの意味。中世の荘園では年貢・公事(くじ)の両方を負担する名田(みょうでん)と異なり,年貢のみを負担する地種を一色田とよんだが,この一色は(2)の一種類の課役をいう。一色地・一色不輸田・一色別納(べちのう)・一色別符もほぼ同様の地種で,中世所領を1人で独自に支配することは一色(一式)進退といった。華道で一種類の草花をいけることも一色という。

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デジタル大辞泉プラス 「一色」の解説

一色(ひといろ)

日本のポピュラー音楽。歌はNANA starring MIKA NAKASHIMA。歌手で女優の中島(なかしま)美嘉の別名義。2006年発売。作詞:AI YAZAWA、作曲:TAKURO。中島の主演で同年公開された映画「NANA 2」の主題歌。

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世界大百科事典(旧版)内の一色の言及

【赤羽根[町]】より

…1973年赤羽根漁港が整備され,漁業も盛んである。片浜十三里といわれる断崖絶壁の海岸線が続く一色の磯は,美しい景観と磯釣りで知られる。【萩原 毅】。…

※「一色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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