新宮(市)(読み)しんぐう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「新宮(市)」の意味・わかりやすい解説

新宮(市)
しんぐう

和歌山県南東部、熊野灘(なだ)に面する市。1933年(昭和8)新宮町と三輪崎(みわさき)町が合併して市制施行。1956年(昭和31)高田村を編入。2005年(平成17)熊野川町を合併。JR紀勢本線(きのくに線)と国道42号、168号、169号、311号が通じる。熊野三山の一つで新宮とよばれる熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)が鎮座し、その門前町として発展したことが地名の由来である。

 市域熊野川下流右岸から熊野灘沿岸にわたっていたが、熊野川町を合併したため、熊野川中流を含む北側に大きく広がり、奈良・三重県に囲まれた飛び地を有することになった。中心市街地は南東流してきた熊野川が千穂ヶ峯(ちほがみね)(253メートル)に当たって蛇行し、東流して熊野灘に注ぐ河口三角州上にある。千穂ヶ峯北東麓(ろく)に速玉大社があり、南東麓の速玉神の旧座所とされる神倉山(かんのくらやま)と相対する。このため新宮は熊野神邑(しんゆう)の地とされ、秦(しん)の始皇帝の臣徐福(じょふく)の渡来伝説による徐福の墓もある。中世には熊野別当居所であり、門前町として発展し、近世には紀伊徳川氏の家老水野氏3万5000石の城下であった。水野氏は河口に近い残丘上に築いた丹鶴城(たんかくじょう)に拠(よ)って奥熊野を支配した。河口の熊野地(くまのじ)には廻船(かいせん)が寄港し、廻船の乗子が多く居住したという。熊野川上流の木材が流送される貯木場もあり、河原には筏(いかだ)師相手の河原町があった。熊野川河口近くにはいまも製材所がある。しかし河口は砂州により埋まりやすいため、市域南東部の三輪崎に新たに新宮港が整備された。市街中心部にある浮島の森は暖地・寒地性の植物が茂り、新宮藺沢(いのさわ/いのす)浮島植物群落として国指定天然記念物となっている。速玉大社の速玉祭と摂社神倉神社の熊野御灯(おとう)祭は国指定重要無形民俗文化財。熊野川流域は吉野熊野国立公園域で、瀞峡(どろきょう)があり、南紀観光の一中心である。2004年には熊野古道や熊野速玉大社が「紀伊山地の霊場参詣(さんけい)道」として世界遺産(文化遺産)に登録された。面積255.23平方キロメートル(境界一部未定)、人口2万7171(2020)。

[小池洋一]

『『新宮市史』(1972・新宮市)』『『新宮市史』全3巻(1983~1986・新宮市)』


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