白樺派(読み)シラカバハ

デジタル大辞泉 「白樺派」の意味・読み・例文・類語

しらかば‐は【白×樺派】

日本近代文学の一派。雑誌「白樺」によった文学者美術家の集団をいう。人道主義理想主義個性尊重などを唱えて自然主義に抗し、大正期の文壇の中心的な存在となった。また、西洋美術に関心を示し、後期印象派などを紹介。

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精選版 日本国語大辞典 「白樺派」の意味・読み・例文・類語

しらかば‐は【白樺派】

  1. 〘 名詞 〙 日本近代文学の一流派。明治四三年(一九一〇)四月創刊の雑誌「白樺」を中心にして活躍した作家、美術家などの総称。人道主義、理想主義を標榜(ひょうぼう)し、自然主義退潮後の大正文壇に大きな勢力をもった。

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百科事典マイペディア 「白樺派」の意味・わかりやすい解説

白樺派【しらかばは】

文学流派。1910年4月,武者小路実篤志賀直哉有島武郎らが創刊した同人雑誌《白樺》によった人びと。木下利玄郡虎彦里見【とん】柳宗悦有島生馬長与善郎岸田劉生千家元麿高村光太郎倉田百三ら。自然主義に対抗して人道主義,個性主義,理想主義を標榜(ひようぼう),倫理を重視。耽美(たんび)的な《スバル》《三田文学》(三田派),理知主義的な《新思潮》と並び,反自然主義の拠点となった。《白樺》に発表された作品には,実篤の《その妹》,直哉の《網走まで》,武郎の《或る女》前編,善郎の《項羽と劉邦》などのほか,利玄の短歌,元麿の詩がある。また美術雑誌をも兼ね,ロダンゴッホセザンヌら西洋美術を紹介,光太郎訳の《ロダンの言葉》などもある。《白樺》は1923年8月廃刊。通巻160冊。
→関連項目新しき村心境小説同人雑誌トルストイ

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知恵蔵 「白樺派」の解説

白樺派

雑誌「白樺」に依拠して、キリスト教、トルストイ主義、メーテルランクホイットマン、ブレイクなどの影響を受けつつ、人道主義、理想主義、自我・生命の肯定などを旗印に掲げた文学者、芸術家たち。1910年に創刊され、23年、関東大震災で幕を閉じた「白樺」は、足かけ14年、全160冊というその刊行期間の長さ、同人の変動の少なさ、影響力の大きさなどからして、近代日本最大の文芸同人誌と言える。「白樺」には同時に、ロダン、セザンヌ、ゴッホ、マチスなどを紹介した美術雑誌としての側面もある。その意味で「白樺」は、文学と美術がジャンルを超えて響き合う、総合芸術雑誌でもあった。創刊に携わった者の多くは、武者小路実篤、志賀直哉、里見トン、柳宗悦、郡虎彦、有島武郎、有島生馬など学習院出身者である。思想面での代表者、武者小路に典型的なように、総じて「白樺」の自我中心主義や普遍主義やコスモポリタニズムは、あるべき前提と社会意識とを欠いた、良くも悪くも楽天的なものであった。自我中心主義を小説の技法として純化し、大成することによってそんな「白樺」を突き抜けたのが志賀であるとすれば、思想、行動の面でそれを逸脱していったのが有島武郎であり、両者振幅がそのまま白樺派の奥行きを形作っている。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「白樺派」の解説

白樺派
しらかばは

1910年(明治43)4月から23年(大正12)8月まで,学習院出身者を中心に刊行された雑誌「白樺」によった文学者集団。武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)・志賀直哉・木下利玄(りげん)・有島武郎・有島生馬(いくま)・里見弴(とん)・郡(こおり)虎彦・長与善郎(ながよよしろう)・柳宗悦(むねよし)ら主要同人のほか,岸田劉生(りゅうせい)・高村光太郎・高田博厚などもその周辺を形成する。自然主義文学の反理想性に対し,個我伸長を温和にうたいあげた作品で一時代を画し,武者小路の「新しき村」運動の基盤にもなるなど,人道主義の思潮として思想史的にも影響力をもった。「白樺」誌上でロダン,ゴッホ,セザンヌなど西欧近代絵画を複製で紹介し,美術界に与えた刺激も大きい。しかし社会に対する意識の広がりに欠ける面をもち,労働運動の勃興する時代に求心力を失っていった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「白樺派」の解説

白樺派
しらかばは

1910年創刊された文芸同人雑誌『白樺』に拠った同人たちとその傾向
武者小路実篤・志賀直哉・有島武郎・有島生馬・里見弴 (とん) ・長与善郎ら学習院出身の青年グループによっておこされた。自然主義に対し個性の自由な伸張をめざし,理想主義・人道主義を基調とする傾向で大正初期文壇の主流をなした。『白樺』は1923年終刊。

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世界大百科事典(旧版)内の白樺派の言及

【キリスト教文学】より

… このようにキリスト教思想の受容が自己の存在や思想を根源から問い返す対自的契機となることを困難にし,即自的志向へと流れさせる土着の心性との真の対峙相克,さらにはその止揚こそ今日に残された未完の課題でもある。同時にまた一面,キリスト教の社会的倫理観は社会主義文学の先駆ともいうべき木下尚江や徳冨蘆花の文学を生み,その人道主義的系譜は武者小路実篤,志賀直哉,有島武郎らの白樺派(《白樺》)にも流れてゆくが,ここでも内村の影響の深さが注目される。ただ大正期に入ってこれら理想主義,人道主義の流れとは別にキリスト教思想とのかかわりが,より実存的な深さを示すようになる。…

※「白樺派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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