アメシスト(読み)あめしすと(英語表記)amethyst

翻訳|amethyst

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメシスト」の意味・わかりやすい解説

アメシスト
あめしすと
amethyst

紫水晶ともいう。紫、青紫、赤紫色などをした水晶古代から知られ、聖書に出てくる12の宝石の一つ。色の原因は含まれている第二鉄(Fe3+)による。この含有量が多いと、色が濃くなることが知られている。アメシストを250℃前後で加熱すると黄色のいわゆるシトリンに変わる。アメシストは錐面(すいめん)をもつ単純な六角柱状ないし短柱状結晶で産することが多く、複雑な結晶面が現れることはまれである。またほとんどの場合、集片双晶をしており、累帯構造が発達しているため、一つの結晶中で色の濃淡が顕著な場合が多い。したがって色の均質な大形の結晶は少なく、水晶中でもっとも高価である。もっとも重要な産状は、塩基性火山岩、とくに玄武岩質溶岩の空隙(くうげき)に、めのうや沸石(ふっせき)類を伴っているものであり、ブラジルウルグアイ、カナダなどに大規模なものがみられる。ほかに、浅熱水鉱脈鉱床、花崗(かこう)岩質ペグマタイト中からも産する。日本では、鳥取県日野町藤屋、宮城県白石市雨塚山(あまづかやま)、秋田県協和町(現、大仙(だいせん)市)宮田又(みやたまた)鉱山(閉山)などから産した。2月の誕生石名称は酔わないという意味ギリシア語に由来し、これは古代、アメシストに酔いを治す力があると信じられていたためらしい。

松原 聰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アメシスト」の意味・わかりやすい解説

アメシスト
amethyst

紫水晶 (→水晶 ) 。アメジストともいう。濃い紫色の美しいものは宝石となる。その名はギリシア語の Amethystos (酔わない) から生れたとされ,紫色がワインを連想させるところから,古くはこの宝石を持てば悪酔い防ぎ,また解毒の働きがあると信じられた。宝飾品に用いられ,特に日本では紫を高貴な色とするところから愛好されている。2月の誕生石。また熱処理によって黄色ないし黄褐色に変化させてトパーズとしても売られている。ブラジル,ウルグアイ,スリランカ,メキシコ,南北アフリカ,韓国などに産する。

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