デカダンス(その他表記)〈フランス〉décadence

デジタル大辞泉 「デカダンス」の意味・読み・例文・類語

デカダンス(〈フランス〉décadence)

19世紀末フランス中心とした文芸上の一傾向。虚無的、退廃的、病的な唯美性を特色とする。ボードレールを先駆とし、ベルレーヌランボーらに代表される。退廃派
虚無的、退廃的な風潮生活態度
[類語](2退廃的デカダン虚無的不健全不健康堕落自堕落放逸刹那的病的ニヒルニヒリスティックシニカルシニシズム悲観的自嘲自暴自棄自己嫌悪ペシミスチックペシミズムペシミスト否定的消極的後ろ向きマイナス思考ネガティブ厭世的厭世観厭世主義絶望的享楽的快楽主義刹那主義

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精選版 日本国語大辞典 「デカダンス」の意味・読み・例文・類語

デカダンス

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] décadence ) 一般に、デカダンの傾向を帯びた芸術、またはそういう芸術家の総称。特に一九世紀末に現われたボードレール、ワイルドなどはその代表。
    1. [初出の実例]「デカダンス派の父なるボードレールが」(出典:あめりか物語(1908)〈永井荷風〉夜あるき)

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百科事典マイペディア 「デカダンス」の意味・わかりやすい解説

デカダンス

フランス語で退廃,衰退の意。文学史上では,19世紀末ヨーロッパ,特にフランスに生じた,懐疑的・耽美(たんび)的・悪魔的傾向をさす。初期象徴派の一特徴でもあり,このような芸術家をデカダン派と呼ぶ。ボードレールベルレーヌランボーユイスマンスら。→世紀末象徴主義
→関連項目武林無想庵唯美主義

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デカダンス」の意味・わかりやすい解説

デカダンス
でかだんす
décadence フランス語

退廃主義。頽唐(たいとう)派ともいう。衰微、衰退を意味する語で、ギボン著『ローマ帝国衰亡史』(1776~88)に読まれるように、ローマ帝国が爛熟(らんじゅく)から衰退、破滅に向かう過程の病的で享楽主義的文芸の風潮をさすことば。19世紀末フランスにおいて、ボードレール、ベルレーヌ、マラルメ、ランボーらの悪魔主義、象徴主義の影響を受けたモーリス・ド・プレッシー、ロダンバック、ラフォルグら一群の象徴派詩人たちが自らをデカダンとよんだことから、世紀末的文芸思潮の呼称となる。彼らはユイスマンスの小説『さかしま』(1884)の反社会・反道徳性を模倣し、人工美や醜悪なものに美をみいだすことに耽溺(たんでき)した。イギリスのスウィンバーン、ワイルド、わが国では木下杢太郎(もくたろう)を中心とする「パンの会」(1908~12)の文学運動にこの傾向がみられる。

[船戸英夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デカダンス」の意味・わかりやすい解説

デカダンス
décadence

「衰退」を意味するフランス語で,ローマ帝国の末期や江戸化政度の文化的爛熟のはての頽唐をいうが,特に 19世紀末のフランスに興った文学的傾向をさし,世紀末芸術,象徴主義と同義に使われる。ボードレールを先駆とするベルレーヌ,マラルメ,ユイスマンスら象徴派の詩人たちによって代表され,ベルレーヌの詩句「われはデカダンスの終末の帝国」によって広く流布した。伝統的な規範や道徳に反発して,病的な情調を重んじ,極端に洗練された技巧を尊び,異常,珍奇,退廃的な美を追求する耽美的な傾向を示す。ユイスマンスの小説『さかしま』 (1884) に最も端的な表現を得た。イギリスでは,その影響によってペーターの流れをくむオスカー・ワイルドを中心に,ダウソン,ビアズリーらの「世紀末文学」が出現した。

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世界大百科事典(旧版)内のデカダンスの言及

【デカダン派】より

…〈デカダンスdécadence〉は一般に衰退,落,退廃を意味するフランス語である。本来はローマ帝国末期の文化が爛熟の極に衰退して技巧的になり,不自然,不健康,腐敗の様相をあらわしてくることを指したが,ここではパリを中心とした19世紀末の一群の芸術家たちの傾向を指す。…

【唯美主義】より

…これは唯美主義の本質をつく言葉であり,ワイルドにも,またその影響が濃厚な《禁色》の作家三島由紀夫や,同じくワイルドの《謎をもたぬスフィンクス》を種本に短編《秘密》を書いた谷崎潤一郎にも当てはまる。 19世紀以来の唯美主義は観念的美の世界と悪魔的な官能美への惑溺,すなわちデカダンスdécadenceの二極を絶えず往復しているが,これはスウィンバーンに影響を与えたフランスの文学者ゴーティエボードレールに始まる。前者は,いわゆる〈芸術至上主義〉,すなわち〈芸術のための芸術l’art pour l’art〉(命名は1845年,V.クーザンによる)の唱道者として知られ,効用性を超越した自律的な美を主張した。…

※「デカダンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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