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ポルトガル文学 ポルトガルぶんがくPortuguese literature

3件 の用語解説(ポルトガル文学の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ポルトガル文学
ポルトガルぶんがく
Portuguese literature

ポルトガル,マデイラ諸島アゾレス諸島において,ポルトガル語で書かれた文学作品の総称。ポルトガル語は 13世紀にロマンス語派の一言語として現れ,1350年頃にはコインブラからリスボンにかけての地域で話されていたものが,標準口語となった。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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世界大百科事典 第2版の解説

ポルトガルぶんがく【ポルトガル文学】

ポルトガルの文学は,その人口の少なさ,国土の狭さからみると,ギリシアに次いで豊かなものをもっているといわれる。13世紀に始まるポルトガル文学について,ここでは個々の作品より,ポルトガル文学の流れを時代的に概観したい。 現在知られている最古の文学的作品が13世紀前半のものであるところから,この時期をポルトガル文学の最初期とするのが一般的である。13世紀から14世紀半ばころまでにおいて,最も重要な文学作品は抒情詩であった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ポルトガル文学
ぽるとがるぶんがく

ポルトガルの文学はその起源を南フランス地中海沿岸のプロバンスにもち、その主流は叙情詩であった。最古のものは、吟遊詩人パイオ・ソアーレス・デ・タベイロースの叙情的恋愛詩(1189)で、以後、ディニス王(在位1279~1325)はじめ吟遊詩人が輩出した。散文では、『遺産分配の書』(1192)が最古の文献で、ほかに僧侶(そうりょ)による聖者の言行録、系譜の書、貴族名簿、騎士物語がある。[濱口乃二雄]

19世紀まで

15世紀にはポルトガル語もしだいに洗練され、スペイン詩派の因襲的宮廷詩が流行、散文では宮廷の教訓的散文とロペスなどの編年史が登場した。16世紀にはイタリアのルネサンスの影響で、ポルトガルも文学の黄金時代を迎えた。イタリアの詩型を導入した詩人ミランダ、国民劇の創始者ビセンテ、『牧歌』(1554)のB・リベイロなどが注目に値し、愛国的叙事詩『ウス・ルジーアダス』(1572)で著名な詩聖カモンイスは、ソネット(十四行詩)においても不朽の名編を残している。また、この世紀にはポルトガルの海外発展の結果、探検記、旅行記、歴史書などが著され、旅行家ピント(1509ごろ―1583)のほかに、バーロス、ゴイスなどの歴史家が傑出する。17世紀はいわゆる「ゴンゴリズモ」(極端な技巧を重んずるバロック詩の様式)の時代で、政治と同じく文学も衰微の道をたどったが、18世紀に入ると、その反動として、フランスに倣(なら)ったアカデミアの創設がみられ、代表的詩人としてソネットのボカージェが知られている。
 19世紀にはロマン主義が始まり、詩人・劇作家のガレット、歴史小説家として一世を風靡(ふうび)したエルクラーノ、詩人カスティーリョのほか、カステロ・ブランコ、ディニースの2人の作家が注目される。19世紀後半は写実主義時代で、詩人ケンタールと文豪ケイロースを中心に、ジュンケイロ、ブラーガなどの詩人が活躍した。ほかに象徴派の詩人E・カストロ、日本を紹介した随筆家モラエス(モライス)の存在も忘れがたい。[濱口乃二雄]

20世紀以降

20世紀になると、近代主義の代表的詩人ペソーアが異彩を放ち、また『プレゼンサ』誌(1927~1940)の主要な詩人J・レジオJos Rgio(1901―1969)、同誌の寄稿者で作家のT・フィゲイレードがいる。地方主義作家のA・リベイロの代表作は短編集『サンティアゴの道』(1922)で、長編では『悪魔の地』(1919)がある。優れた短編作家ミゲル・トルガMiguel Torga(1907―1995)は、短編集『動物たち』(1940。邦訳『方舟(はこぶね)』)を残した。また新写実主義の作家ではF・カストロFerreira de Castro(1898―1974)、レドール、ナモーラが、詩人ではディオニージオがあげられる。なお郷土の生活を描いたアゾレス諸島出身の作家ネメージオ、女性作家ベッサ・ルイース、実存主義の作家V・フェレイラVerglio Ferreira(1916―1996)が注目される。そのほか20世紀の代表的作家として、カルロス・デ・オリベイラCarlos de Oliveira(1921―1981)やジョゼー・カルドーゾ・ピレスJos Cardoso Pires(1925―1998)も忘れてはならない。現代ポルトガル文学は、これらの先人を通して継承した力を維持して活気があり、詩、小説、随筆の執筆活動が盛んである。以下、主要な作家と作品を概観してみよう。
 1974年4月25日の革命によって、カエタノ政権は倒れ、およそ半世紀にわたるサラザール体制が崩壊した。この革命の直後に、作品を支配する社会的な偶発的できごととしては、まず第一にアフリカにおける植民地主義戦争の自殺的政策があり、次にヨーロッパのもっとも豊かな国々や北アメリカへ移民する人々の、人間としての品位の低下がある。さらに仕事、結婚、社会的発展の展望の欠如または少なさである。
 四月革命後の、新たな大きなテーマとして、散文では、女性作家リディア・ジョルジェLdia Jorge(1946― )の『驚異の日』(1980)が追求したテーマがある。1974年の革命と同時に、1匹の蛇(へび)が飛んで逃げたという。村人たちは個人や家族の諸問題に直面して、革命兵士たちが村を通過するときに、蛇の異常な行動を説明してもらおうと待ち受けていた。しかし、それは起こらなかった。そこで、村人たちは諸問題の解決は自分自身にかかっていると納得した。ジョルジェはこの作品でポルトガルのジレンマ、つまり、夢想する力と行動する弱さを指摘した。
 またナモーラは、『悲しき河』(1982)で、移民の時事的問題を取り上げている。1974年の革命直後に姿を消した、リスボンの多国籍企業に勤務する主人公の運命を辿(たど)りながら、当時の一作家の生活上の諸問題、両親と娘、秘密警察に関する謎、植民地戦争などについて語っている。
 アルメイダ・ファリーアAlmeida Faria(1943― )の『ルジタニア』(1980)も、1974年の四月革命と移民、植民地戦争、土地の割り当てなどをテーマにした、アラビア人たちに拉致(らち)されてベネチアに連れ去られた一人の若者とその恋人をめぐる短い物語である。本書は書翰(しょかん)体で構成されており、手紙と作者自身によって語られる数章を通して、読者は1974年の革命とポルトガルにおけるその反響を知ることになる。
 ジョゼー・サラマーゴは、1980年代に入って頭角を現し、透徹した現実認識と詩的空想を組み合わせ、独創的で美しい充実した小説群を発表する。その代表作は『修道院回想録――バルタザルとブリムンダ』(1982)で、壮麗な修道院の建築の物語は、叙事詩的に語られた歴史のなかで、国家的大事業の犠牲になった下層の人々の受難を寓意(ぐうい)的に表現している。小説『リカルド・レイスの死の年』(1984)の主人公リカルド・レイスはポルトガルを代表する実在の詩人フェルナンド・ペソーアの異名である。この作品は、スペインの共和国政府に対するフランコ将軍の軍事反乱(スペイン内乱)が始まった1936年を背景にして、ブラジルから帰国してリスボンで死ぬという設定のリカルド・レイス、そのもう一人の人格であるフェルナンド・ペソーアの幻影、愛人リディアらが登場する想像の小説である。小説『イエス・キリストによる福音書』(1991)は、基本的な特定の事実、特定の歴史上のできごとに基づく小説である。この小説は、反教義的で、キリスト教の教義の根源を問いただすとともに、かつてないほど精神的危機を内包した現代に、信仰と懐疑にかかわるさまざまな疑問を突き付けている。
 小説『石の筏(いかだ)』(1986)は、当時のヨーロッパ共同体(EC)へのポルトガルの統合に疑問を投げかける、きわめてアクチュアルな作品となっている。サラマーゴはこの小説で、イベリア半島の2国、ポルトガルとスペインを巨大な石の筏のように移動させ、ブラジルとアフリカの中間の大西洋上に投錨(とうびょう)させた。この壮大な空想力で構想された作品は、ヨーロッパ共同体に統合されれば、高度な資本主義への道を歩まざるをえなくなるポルトガルの将来に警鐘を鳴らし、ヨーロッパからの分離を提案している。以上の主要な作品のほかに、『盲目についてのエッセイ』(1995)や、『あらゆる名前』(1997)などがある。サラマーゴは、1998年ノーベル文学賞を受賞した。
 アントニオ・ローボ・アントゥーネスAntnio Lobo Antunes(1942― )は、ノーベル文学賞が話題になる精神科医で、1987年フランス・ポルトガル文学賞を受賞したもっとも人気のある『ユダの尻』(1979)では植民地戦争の、『アレクサンドラン(十二音節詩句)のファド』(1983)では四月革命のありさまが、そして『ナウ船』(1988)では象徴的な歴史上の人物たちと時機の解明が、語られている(ナウ船とは大型帆船のこと)。精神分析学者として、またアンゴラでの植民地戦争の軍医としての自身の経験による作品が多いが、四月革命やポルトガル史を題材にした作品もある。作品はきわめて自由な構成と隠喩(いんゆ)と想像力に満ちた文章によって特徴づけられていて、過渡的な時代におけるポルトガル社会の矛盾が際だっている。
 さらに、バレーノMaria Isabel Barreno(1939― )、コスタMaria Velho da Costa(1938― )、オルタMaria Teresa Horta(1937― )など女性の解放を扱った女性作家の活躍が目だつ。[濱口乃二雄]
『ルイース・デ・カモンイス著、小林英夫・池上岑夫・岡村多希子訳『ウズ・ルジアダス』(1978・岩波書店) ▽濱口乃二雄著『世界の旅路5 ポルトガル文学のしおり』(1979・千趣会) ▽フェルナン・メンデス・ピント著、岡村多希子訳『東洋遍歴記』全3巻(1979~80・平凡社) ▽フェルナンド・ラモーラ著、彌永史郎訳『たったひとつのオレンジ』(1980・彩流社) ▽ミゲル・トルカ、岡村多希子訳『方舟』(1985・彩流社) ▽フェルナンド・ペソーア著、池上岑夫訳『ポルトガルの海』(1985・彩流社) ▽ヴェンセズラウ・モラエス著、岡村多希子訳『おヨネとコハル』(1989・彩流社) ▽濱口乃二雄著『近代ポルトガル文学選集(対訳)』(1990・京都外大濱口研究室) ▽C・オリヴェイラ著、彌永史郎訳『雨の中の蜜蜂』(1991・彩流社) ▽E・ケイロース著、彌永史郎訳『縛り首の丘』(1996・白水社) ▽W・モラエス著、岡村多希子訳『日本精神』(1996・彩流社) ▽ W・モラエス著、岡村多希子訳『徳島の盆踊り』(1998・講談社) ▽ジョゼー・サラマーゴ著、星野祐子訳『あらゆる名前』(2001・彩流社)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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