デジタル大辞泉
「ミネラル」の意味・読み・例文・類語
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ミネラル
- 〘 名詞 〙 ( [英語] mineral )
- ① 鉱物。無機物。〔外来語辞典(1914)〕
- ② カルシウム・マンガン・鉄・燐・コバルト・硫黄などの、無機質栄養素。
- [初出の実例]「飯に強化米を炊き込み、且つミネラルも加えて」(出典:砂時計(1954‐55)〈梅崎春生〉一七)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
ミネラル
〈ミネラルとはどんなもの?〉
あらゆる物質をつくる基本単位が元素。人間の体も例外ではなく、元素からできています。体重の95%を酸素、炭素、水素、窒素(ちっそ)が占めますが、残りの5%がミネラルと呼ばれる約20種類もの元素なのです。ミネラルは英語で鉱物の意味で、無機物です。このうち生命維持に必要なものを栄養学では無機質、またはミネラルと呼んでいます。
ミネラルは骨や歯などの骨格を形成し、たんぱく質や脂質の成分となるなど、体の構成部分として重要な役割をになっています。また血液や体液のpH(ピーエイチ)や浸透圧を正常に保つ生体機能調整、酵素の補助因子やホルモンの成分になる働きがあります。必要量はわずかなため、ビタミンとともに微量栄養素と呼ばれています。ミネラルは体内で合成されず、外部から摂取するしかない栄養素です。
〈ミネラルの種類〉
各国で栄養所要量が定められているミネラルは15種類あります。そのうち、ある程度まとまった量が必要なものは、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素で、日本では食品から毎日100mg以上を補給しているこれらを必須元素、または必須ミネラルと呼んでいます。一方、必要量がごくわずかなものを微量必須元素、または微量必須ミネラルと呼び、銅、鉄、クロム、マンガン、モリブデン、セレン、亜鉛(あえん)、ヨウ素、フッ素が該当します。
現在日本では、前記のミネラルのうち、食塩として取り扱う塩素とナトリウム、また資料不足のフッ素を除いた13項目について所要量と許容上限摂取量が策定されています。なお、摂取の必要なミネラルの種類は食生活のちがいにより異なり、万国共通ではありません。
〈ミネラルバランスを乱す加工食品〉
ミネラルは欠乏症と過剰症の幅、適正な範囲が狭いのが特徴です。また特定のミネラルを多くとると、他のミネラルとのバランスを乱し、かえって健康をそこなうことも知られています。
従来はふつうの食事をしているかぎりミネラルに関して問題はありませんでした。摂取量をみると、カルシウムを除いたミネラルは所要量を上回り、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)以外にきわだったミネラル欠乏症もとりざたされていません。
しかし現代の食生活は、ミネラルバランスの乱れ、ひいては潜在的な欠乏症のおそれがあるといわれています。原因の1つは食品の精製で、ミネラルを多く含む部分を取り除いていることです。たとえば精製砂糖に含まれる鉄は黒砂糖の6.4%、カルシウムにいたってはわずか0.7%しかありません。
加工食品も大きな要因です。濃い味付けのためナトリウム過剰になるうえ、食品添加物や清涼飲料水にはリン酸が多く使用されるので、リン過剰にもなります。過剰による弊害のほかに、カルシウムとリン酸をいっしょにとると、吸収されにくいリン酸カルシウムになってしまい、カルシウム不足をまねきます。また、炭酸飲料の炭酸もカルシウムの吸収を阻害します。
慢性的なミネラル不足は糖尿病や心疾患など、生活習慣病のリスクを高めます。
〈不足がちのミネラル、カルシウム〉
日本人は世界一カルシウムをたくさん食べていながら、血液中のカルシウムは世界一不足しているといわれます。その原因は火山灰土におおわれた地域が多く、土壌のカルシウムが少ないことと、小魚の骨など吸収されにくいカルシウムを多くとっていることなどです。
体内には体重の2%前後のカルシウムがあり、その99%は骨の成分です。残りは細胞内と、血清中(けっせいちゅう)にイオンとして溶け込み、神経刺激の伝達、心筋の運動調整、中枢神経を鎮めてストレスを緩和させるなどの働きをします。
また脳細胞内に不要なアルミニウムが入って起こる認知症を予防します。
カルシウムが不足すると、血清中の濃度を一定に保つために骨に蓄えられたカルシウムが溶けだし、骨粗鬆症になります。ストレスに弱くなり、イライラしたり寝つきが悪くなったりもします。
さらに細胞内のカルシウム量が減ると、高血圧、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の原因となり、細胞の機能低下による老化も起こります。
ミネラルバランスのうえから、もっともカルシウムの吸収率が高いのがカルシウムとリンとの比率が2対1のときです。しかし加工食品の摂取などで、現在は逆転して1対1.5くらいになっています。またマグネシウムとでは、一方がふえれば一方が減るという相補関係があり、カルシウムとマグネシウムの比率を2対1に保つよういわれています。
〈若い女性に多い鉄欠乏性貧血〉
鉄の摂取量は、平均では所要量を上回っています。しかし40歳代までの女性は不足ぎみで、とくに思春期から30歳代までは所要量の8割強しか充足していません。女性は月経により鉄の喪失が多くなるためで、この年代の女性の5~10%が鉄欠乏性貧血、さらに潜在性鉄欠乏は半数近くにものぼるといわれています。
鉄は赤血球の主成分ヘモグロビンに存在し、ガス交換を行うほか、筋肉中にミオグロビンというかたちで存在して、筋肉中の酸素運搬や酸化・還元反応にも関与しています。体内の鉄の3割近くは肝臓や脾臓(ひぞう)に貯蔵されて不足分を補いますし、鉄はくり返し利用される性質があるので、所要量は微量ですみます。しかし尿や汗で1日1mg程度は排出されるので、寿命が120日のヘモグロビンの濃度を保つために、毎日一定量を補給する必要があります。
鉄が不足すると体が酸欠状態になり、息切れや動悸(どうき)、無力感、食欲不振などになります。チョークや土などを食べる異食症も鉄欠乏と関係があります。
〈ミネラルのサプリメント〉
ミネラルは過剰摂取すると中毒症を起こすので、不足ぎみのカルシウムと鉄を主体としたもの以外のサプリメントは、過剰にとらないように注意しましょう。また、鉄製剤や鉄を多く含むサプリメントは胃腸に負担になることが多いので、胃弱の人は注意が必要です。
カルシウムはビタミンDといっしょにとると吸収がよくなるので、ビタミンD3を配合したタイプが効率的です。マグネシウムとの比率が2対1のものがドロマイトです。これは太古、サンゴが海底に堆積して石灰岩を形成したのち、その一部が海水中のマグネシウムと置き換わった天然の鉱物で、純度・吸収率ともに高いのが特徴です。
鉄の吸収率は低く、とくに植物性食品に含まれる非ヘム鉄の吸収率は5%ほどです。非ヘム鉄はビタミンCをいっしょにとると吸収率がアップするので、ビタミンC配合のタイプが効率的です。一方、赤身の肉や魚に多いヘム鉄は吸収率が23~35%と高いため、このヘム鉄を動物の血液から抽出した製品があります。欧米では血液由来の感染症を未然に防ぐため、鶏卵(けいらん)から抽出した「たんぱく鉄」がおもに出回っています。
鉄欠乏性貧血では、症状が改善したあとでも体内の貯蔵分を回復させるため、数か月は鉄を補給する必要があります。それにはサプリメントの活用が有効です。
〈ミネラルの所要量と許容上限摂取量(成人の場合)〉
以下、所要量/許容上限摂取量を示します。
・カルシウム 男=550~650mg/2500mg、女=550mg/2500mg
・鉄 男=6.0~6.5mg/50~55mg、女=8.5~9.0mg(閉経後は5.0~5.5mg)/40mg
・リン 男=1000mg/3000mg、女=800mg/3000mg
・マグネシウム 男=280~310mg/―、女=230~240mg/―
・カリウム 男=2500mg/―、女=2000mg/―
・銅 男=0.7mg/10mg、女=0.6mg/10mg
・ヨウ素 男女とも=95μg/3000μg
・マンガン 男=4.0mg/11mg、女=3.5mg/11mg
・セレン 男=25μg/420~460μg、女=20μg/330~350μg
・亜鉛 男=10mg/40~45mg、女=6/35mg
・クロム 男=10μg/―、女=10μg/―
・モリブデン 男=20~25μg/550μg、女=20μg/450μg
ナトリウムは1日の目標摂取量 男=8.0g未満、女=7.0g未満(食塩当量)
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」より
出典 小学館食の医学館について 情報
ミネラル
mineral
無機質ともいう。食物中には少量しか含まれないが,動物にとって必要な無機成分のこと。体を構成する諸元素のうち,炭素,水素,酸素,窒素を除いた成分で,ヒトの場合は,カルシウム,リン,ナトリウム,カリウム,塩素,マグネシウムなどがこれにあたり,食物中の量として1日当り100mg以上摂取する必要がある。ミネラルの生理作用は,(1)タンパク質やその他の化合物と結合して,生体構成成分となる,(2)血液や体液の浸透圧やpHを正常に保つ,などがある。これらの生理作用を正常に維持するためには,ミネラルを含む食品をバランスよくとることが必要で,食品中のミネラル含有量ばかりでなく,そのとり方にも気を配ることがたいせつである。なお,生体に必須ではあるがミネラルよりも必要量が微量の元素を痕跡元素という。灰分(かいぶん)(食品を焼いたあとに残った灰化成分)の語を同義で用いることもある。(表)
執筆者:堤 ちはる
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ミネラル【mineral】
微量栄養素のひとつ。有機物に含まれる4元素(炭素・水素・酸素・窒素)以外の、全ての生体元素を指す。三大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質が体内でエネルギー、筋肉、皮膚などの構成成分に変換する際に、転換の手助けをする働きをもつ。現在、認められているミネラルは、比較的多量に存在する主要ミネラル(主要元素)7種と、より微小な微量ミネラル(微量元素)9種の16種類が必須ミネラルとされ、主要ミネラルは体内ミネラルの99%を占める。◇「無機質」とも呼ばれる。
出典 講談社漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典について 情報
ミネラル
栄養学上,食品成分中の無機質をいう。人体に必要なものは,カルシウム,鉄,リン,カリウム,ナトリウム,マグネシウム,塩素,ヨウ素などで,いずれも微量であるが生理学的意味は大きい。栄養学で重要なのはカルシウムと鉄で,その他は普通の食品に必要量が十分に含まれている。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ミネラル
無機質に近い使い方をする.本来金属という意味であるが,栄養学では,しばしば非金属,例えば,塩素,硫黄なども含めて,必須無機元素をいうことがある.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内のミネラルの言及
【栄養】より
…一般に動物性タンパク質は必須アミノ酸がよくそろっているが,植物性タンパク質は,リジン,スレオニン,トリプトファンなどのアミノ酸が少ない。[タンパク質]
[無機質]
ミネラルともいわれ,細胞の内外に含まれている。炭水化物,脂肪,タンパク質などの有機質の形になって存在する炭素,水素,酸素,窒素の四つを除き,カルシウム,マグネシウム,リン,カリウム,ナトリウム,硫黄,塩素,鉄,銅,亜鉛などをいう。…
※「ミネラル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」