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ユートピア utopia

翻訳|utopia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ユートピア
utopia

ギリシア語の ou (否定詞) と topos (場所) に由来し,どこにも存在しない場所,転じて,理想的社会,空想的社会の意。「無何有郷」などと訳される。すでにプラトンの『ポリテイア (国家論) 』や『ノモイ (法律) 』,アウグスチヌスの『神の国』などで理想国が説かれているが,ユートピアという言葉で理想的社会を主張したのは T.モアの『ユートピア』 (1516) である。以後,ユートピア思想は社会主義理論や文学,詩,絵画などの形で表わされた。おもなものに T.カンパネラの『太陽の都』,F.ベーコンの『新アトランティス』,J.ハリントンの『オセアナ』などがある。これらはいずれも,現実の社会と (否定的にせよ,肯定的にせよ) 密着しているのが共通した傾向であり,あるものは社会の風刺,批判,挑戦の形をとり,あるものは原始社会や未開のパラダイスに理想郷を求め,あるものは人類の未来に SF的な思いをはせている。そのなかで目につくのは私有財産制否定の思想である。これはやがて空想的社会主義に連なり,変革の思想へと結びついた。

ユートピア
Utopia

イギリスの人文主義者 T.モアラテン語による著作。 1516年ルーバンで出版。当時のイギリス社会の矛盾や不正に憤り,理想的な共産制社会を描いたもの。 51年に R.ロビンソンによって英訳された。

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デジタル大辞泉の解説

ユートピア(Utopia)

ギリシャ語からの造語で、どこにもない場所の意》
トマス=モア長編小説。1516年刊。原文はラテン語。架空の国ユートピアの見聞録というかたちで、当時のヨーロッパ社会を批判、自由平等な共産主義的社会、宗教の寛容を説く。
(utopia)《から転じて》空想された理想的な社会。理想郷。理想の国。無可有郷(むかうのさと)。

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百科事典マイペディアの解説

ユートピア

T.モアの書いた政治的空想物語(1516年刊)。ギリシア語ou(無)とtopos(所)との合成にもとづく造語で,〈どこにもない場所〉,の意。2巻からなり,原文はラテン語。
→関連項目黄金時代共産主義桃源境

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デジタル大辞泉プラスの解説

ユートピア

日本のポピュラー音楽。歌は男性J-POPユニット、B'z。2013年発売のベストアルバム「B'z The Best XXV 1999-2012」に新曲として収録。作詞:KOSHI INABA、作曲:TAK MATSUMOTO。テレビ朝日系で放送のドラマ「DOCTORS 2 最強の名医」の主題歌。

ユートピア

湊かなえの小説。2015年刊行。翌年、第29回山本周五郎賞受賞。長編の心理サスペンス。

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世界大百科事典 第2版の解説

ユートピア【utopia】

現実には存在しない,理想的な世界をいい,理想郷,無可有郷(むかうのさと)などと訳される。ギリシア語を手がかりとして〈どこにもないou場所topos〉と〈良いeu場所topos〉とを結びつけたT.モアの造語。ユートピアの観念は,人間の自然な感情として普遍的にいだかれうるものであるが,同時に特定の内実をもった思想的表明,もしくは運動をもうみだす。
[ユートピアの系譜]
 ヨーロッパでは古代以来,ユートピア思想と運動の伝統が形成されている。

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大辞林 第三版の解説

ユートピア【Utopia】

〔どこにもない場所の意の造語〕
T =モアの主著。1516年刊。架空の国ユートピアの見聞記の体裁をとり、共産主義・男女平等、また宗教上の寛容を説く。
[3]から転じて〕 理想郷。理想の国。空想上の理想的社会。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ユートピア
ゆーとぴあ
Utopia

トマス・モアが1516年に刊行した政治的空想物語。ラテン語で書かれ、正式な題名は『社会の最善政体について、そしてユートピア新島についての楽しさに劣らず有益な黄金の小著』である。架空の人物ヒュトロダエウスが新世界で見聞した架空の諸国、とくにユートピア(どこにもない場所の意味)についてモアと語り合うという形式をとる。主として当時のヨーロッパ社会を批判した第一巻と、理想的な社会であるユートピアを描写した第二巻からなる。当時のヨーロッパの君主は自分の富や領土を増大することのみに専念し、一方民衆は「囲い込み」によって土地を奪われ、牛馬よりもひどい労働を強いられている。国家や法律も貧しい人々を搾取するための「金持ちの共謀」による私物化にすぎない。このような諸悪の根源として貨幣経済、私有財産制がある。これに対してユートピアでは、市民は平等であり、貨幣が存在せず、財産共有制が敷かれている。すべての人間が労働するために、少ない労働時間で十分であり、自由な時間を「精神の洗練」のために用いる。
 この作品は、愉快な物語の形式を借りて、当時の腐敗したキリスト教社会の改革、再生を、政治家、知識人に訴え、真の公共性、正義とは何かを問うたキリスト教人文主義者の手になるものである。その後、ユートピアは一般的に理想郷の代名詞となり、また、ユートピア文学のジャンルの創始となって、大きな影響を与えた。[菊池理夫]
『沢田昭夫訳『ユートピア』(中公文庫) ▽平井正穂訳『ユートピア』(岩波文庫)』

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世界大百科事典内のユートピアの言及

【イデオロギー】より

上部構造(2)イデオロギー論はその後,マルクス主義陣営以外では,第1次大戦後のドイツで〈知識社会学〉という社会学の一特殊分野を生み出すことになった。その体系家K.マンハイムはイデオロギーとユートピアとを対比し,両者ともに現実の社会には適合しない〈存在超越的〉な観念であるとしながらも,ユートピアが〈存在がいまだそれに達していない意識〉,つまり既存の社会をのりこえる革命的機能をもつ意識であるのに対し,イデオロギーは〈存在によってのりこえられた意識〉,つまり変化した新しい現実をとりこむことのできない,時代にとり残された意識,と規定した。さらにまたマンハイムは,マルクス主義が観念や意識の存在拘束性を発見した功績を評価しながらも,それが敵対的階級のイデオロギーの存在拘束性を暴露することにのみ終始し,自己自身の観念体系をも存在に拘束されたものとしてみる自己相対化の視点を欠いているとして批判し,自己自身の立場にも存在拘束性を認める勇気をもつとき,単なるイデオロギー論は一党派の思想的武器であることをやめ,党派を超越した一般的な社会史や思想史の研究法としての知識社会学に変化する,と主張した。…

【資本論】より

K.マルクスの主著で,社会主義に〈科学的〉な基礎を与えたとされる著作。原題を直訳すれば《資本――経済学批判》である。資本制的な生産,流通,分配のしかたを研究して,資本主義社会の経済的な,編成および運動法則を明らかにし,そこから社会主義革命の必然性(=社会主義体制の優越性)を証明しようとした。マルクス経済学およびマルクス・レーニン主義の基本文献。マルクス経済学
【成立】
 マルクスは,1844年ころヘーゲル法哲学の批判的再検討を通じて,近代ブルジョア社会の解剖学は経済学のうちに求めなければならない,とする予想に達した。…

【万物一体論】より

…万物ともに気によって構成されていることが論理的根拠とされ,万物への愛に覚醒し万物の本質が現実化することを求める。人間社会に即していえば,個々の人が人格的に自立して他者に愛を及ぼし,大同社会を実現することを求めるユートピア思想である。【吉田 公平】。…

【楽園】より

… しかし神学的にはともかく人類の心情としては,地上のどこかになんらかの楽園が残っているのではないかという想像を,絶ち切ることができなかった。これは一般的にいえば〈ユートピア〉願望の一部であり,人類の空想を何世紀にもわたって刺激しつづけたし,中世から近世,そして現代にいたるまで,大小いくつもの探険の動機となった。とりわけヨーロッパ人の内部には,ギリシア・ローマ以来の伝説が生き続けていたし,現実にも嵐の後など西に面する海岸にヤシの実や見なれぬ丸木舟の残骸が打ち上げられることがあって,はるかな西方洋上に見知らぬ楽土があるのではないかという空想は,尽きることがなかった。…

【ラスキン】より

…《近代画家論》は60年第5巻で完結したが,それ以前は純粋な芸術美を論じてきた彼は,このころから機械文明とそれがつくり出す社会悪に反対する活動に献身するようになった。《この最後の者たちに》(1862)は,彼の思想の転機を画した論文で,自己利益でなく自己犠牲を基本とした経済学を説き,新しい社会主義ユートピアを描いたものであるが,当時は一般の嘲笑を買うだけであった。しかし彼はその後も社会主義の実践活動を続け,労働者のための大学創設にも尽力した。…

※「ユートピア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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