(読み)ジョウ

デジタル大辞泉 「乗」の意味・読み・例文・類語

じょう【乗〔乘〕】[漢字項目]

[音]ジョウ(呉) [訓]のる のせる
学習漢字]3年
乗り物にのる。「乗員乗客乗降乗車乗馬乗用騎乗搭乗同乗分乗
乗り物。また、兵車。「下乗げじょう一天万乗
よい機会として利用する。「便乗
掛け算をする。掛け算。「乗除乗数乗法三乗相乗累乗
記録。歴史書。「史乗日乗野乗
仏の教え。「小乗上乗大乗
[名のり]あき・しげ・のり

じょう【乗】

[名]
掛け算。乗法。「加減除」
史書。歴史。
乗り物。
「古へ屈産くっさんの―、項羽がすい」〈太平記・一三〉
[接尾]助数詞
同じ数を掛け合わせる回数を示す語。「二の二
車の数を数えるのに用いる。「千の兵車」

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精選版 日本国語大辞典 「乗」の意味・読み・例文・類語

のり【乗】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「のる(乗)」の連用形の名詞化 )
    1. 乗物などに乗ること。
      1. [初出の実例]「これぞ此もろこし船にのりを得てしるしを残す松の一本〈阿一〉」(出典:風雅和歌集(1346‐49頃)雑中・一七八九)
    2. つりこまれること。調子づくこと。気乗り。特に、にぎやかに歌ったり騒いだりしていると、すぐにつりこまれて浮かれ出す人。「悪乗り」
      1. [初出の実例]「外の女郎衆も、でいぶのりがわるくなったと」(出典:洒落本・契情実之巻後編(1804)二)
    3. 金を出し合って一つの事をすること。共同出資。
      1. [初出の実例]「御馳走は文化さんと乗(ノ)りで致しませう」(出典:人情本・春色玉襷(1856‐57頃)二)
    4. 邦楽の用語。
      1. (イ) 速度のこと。特に一曲中の緩急の変化をいう。
      2. (ロ) 謡曲で、謡と拍子との合わせ方。大ノリ・中ノリ・平ノリの別がある。
      3. (ハ) 歌舞伎で、三味線囃子のリズム(拍子)に合わせた動きやせりふをいう。
      4. (ニ) 三味線に合わせた勢いのよい物語調の部分。
        1. [初出の実例]「『されば候、そろそろと、三つ合せてさん候(ぞうろう)』ト喜平治、こなし有ってノリに成り」(出典:歌舞伎・与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)六幕)
    5. 絵の具染料ペンキ、白粉などのなじみぐあい。また、脂肪の付きぐあい。「化粧ののりがよい」
      1. [初出の実例]「筋肉に脂肪の乗りがうすかった」(出典:肉体の門(1947)〈田村泰次郎〉)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 人数を表わす語について、乗物がその人数だけ乗れることを表わす。
    1. [初出の実例]「車屋へ往って一人乗一挺誂らへて来てお呉れ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)

じょう【乗】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. のりもの。のりうま。車馬。
      1. [初出の実例]「古へ屈産(くっさん)の乗(ゼウ)、項羽が騅(すい)、一日に千里を翔る馬有といへとも」(出典:太平記(14C後)一三)
    2. 史書。また、歴史。記録。
      1. [初出の実例]「晉には乗(ジャウ)と云ひ、楚には檮杭(とうこつ)といひ〈略〉乗も檮杭も史冊の名なれども」(出典:授業編(1783)五)
      2. [その他の文献]〔孟子‐離婁・下〕
    3. ( [梵語] yāna の訳語。のりものの意 ) 仏語。衆生をのせて悟りの彼岸に至らせるもののことで、仏の教えをいう。のりのおしえ。
      1. [初出の実例]「是名横超他力也。斯即専中之専、頓中之頓、真中之真、乗中之一乗、斯乃真宗也」(出典:教行信証(1224)六)
    4. かけざん。乗法。
      1. [初出の実例]「乗(ジャウ)、法の位数、多少に拘らず懸るをいふ」(出典:算法新書(1830)用字凡例)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 車、また、兵車を数えるのに用いる。中国では、兵車一乗に士三人、卒七二人、輜重二五人がそなわる。
    1. [初出の実例]「軽軒香車数百乗(ゼウ)、侍衛官兵十万人」(出典:太平記(14C後)三二)
    2. [その他の文献]〔詩経‐小雅・六月〕

のせ【乗】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「のせる(乗)」の連用形の名詞化 )
  2. 飲食することをいう、人形浄瑠璃社会の隠語。
    1. [初出の実例]「飲食(ノセ)と来たらいつでも取かたりぢゃ」(出典:滑稽本・人情穴探意の裡外(1863‐65頃)三)
  3. 人を招待した際に出す酒食・弁当・菓子などをいう、人形浄瑠璃社会の隠語。寄席芸人もいう。
  4. 相場で、利方になった時に売り、または、買うこと。前者を売りのせ、後者を買いのせといい、両者とも利のせという。〔大坂繁花風土記(1814)〕

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普及版 字通 「乗」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(旧字)乘
人名用漢字 10画

[字音] ジョウ
[字訓] のる・つけこむ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
旧字は乘に作り、禾(か)の上に人が二人登っている形。木に登ることをいう。卜文・金文の字形は、禾ではなく、枝の上竦する高い木である。〔説文〕五下に「(おほ)ふなり」と訓し、字形について「入に從ふ。は黠(かつ)なり。軍法に乘と曰ふ」とする。黠は奸悪。それで乘を、人を凌ぐ意とするものであろう。〔説文〕は字を部に属し、黠の意を以て説くが、は木の両旁に人を(はりつけ)にすることで、梟殺(きようさつ)の字、乘は一人が木に登って遠く望見することをいう。卜辞に「乘」という族名があり、おそらく斥候を職とする者の氏姓であろう。すべて他の勢いをかりて行動することを、「乗ずる」という。

[訓義]
1. のる、木にのる、高いところにのる、のぼる。
2. つけこむ、つけいる、利用する。
3. しのぐ、おかす。
4. 一そろいのかず、二つ、四つ。馬乗は駟馬。兵車。
5. 土地の広さの単位。
6. 歴史、春秋の晋の歴史。
7. 掛け算の、かける。

[古辞書の訓]
名義抄〕乘 ノル・ノボル・アマス・ノリモノ・マモル・ノリ・スツ 〔字鏡集〕乘 ノリモノ・アマス・オホフ・スグレタリ・ハカラフ・ノル・シノフ・カノフ・ヒトツ・マホル・ノボル・カツ・ノリ・アマル・マモル

[声系]
〔説文〕に乘声として馬部の字を録し、馬(かいば)をいう。は〔玉〕に「(あが)るなり」とみえ、強壮の意。剩(剰)は(よう)の俗字で、無用のものをいう。

[熟語]
・乗雲・乗運・乗屋・乗化・乗鶴・乗間・乗機・乗居乗虚乗遽・乗興乗凶・乗・乗乗駒・乗具・乗空・乗計・乗隙・乗軒・乗権・乗広・乗黄・乗国・乗乗槎・乗策・乗矢・乗志・乗日・乗車・乗舟・乗除・乗城・乗数・乗勢・乗正・乗石・乗積・乗船・乗治・乗潮・乗伝・乗電・乗馬・乗筏・乗皮・乗匹・乗桴・乗風・乗辺・乗便・乗木・乗門・乗輿・乗流・乗凌・乗竜・乗涼・乗輦・乗路
[下接語]
倚乗・一乗・騎乗・下乗・警乗・後乗・坐乗・驂乗・史乗・自乗・車乗・小乗・千乗・大乗・塔乗・同乗・陪乗・万乗・便乗・服乗・仏乗・野乗・立乗

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乗」の意味・わかりやすい解説


じょう
yāna

仏教用語。もと「乗物」の意。転じて,理想の状態へいたる手段,実践法,道の義に用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ノリ】より

…日本音楽の理論用語。〈乗〉とも書く。リズムに関連して,さまざまに用いられる。…

※「乗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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