(読み)ギン

デジタル大辞泉 「吟」の意味・読み・例文・類語

ぎん【吟】[漢字項目]

常用漢字] [音]ギン(漢)
うめく。なげく。「呻吟しんぎん
詩歌を詠む。「吟詠吟行吟誦苦吟高吟詩吟即吟低吟放吟朗吟
詩歌。「秀吟名吟
内容を探り確かめる。「吟醸吟味
[名のり]あきら・おと・こえ

ぎん【吟】

詩歌を声に出してうたうこと。吟じること。
詩歌を作ること。また、その詩歌。「車中
漢詩古詩一体調子が悲痛で沈んだもの。「白頭」「江上
謡曲で、声の出し方の強弱。「つよ
(ふつう「ギン」と書く)義太夫節の語り方を示す文字譜の一。三味線の三の糸のえいヘ音を中心とした旋律

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精選版 日本国語大辞典 「吟」の意味・読み・例文・類語

ぎん【吟】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 詩歌などを作ったり声に出してうたったりすること。吟じること。吟詠。また、昆虫などが良い声で鳴くのにもいう。→吟ずる
    1. [初出の実例]「吟急にしては残灯光正に背け、夢驚いては孤枕涙乾き難し〈大江以言〉」(出典:新撰朗詠集(12C前)上)
    2. 「物悲しく鳴く蟋蟀の吟(ギン)に寝覚の寂しさを覚えて」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉九〇)
  3. 中国で、歌、曲、引などとともに、古詩、楽府題に用いられる文字の一つ。白頭吟、梁甫吟など。
    1. [初出の実例]「貧女吟 紀納言」(出典:本朝文粋(1060頃)一・貧女吟〈紀長谷雄〉)
  4. 謡曲で、発声の強弱をいう。
    1. [初出の実例]「詞の吟(ギン)を本風にしてよみつつくる詠音なれば」(出典:曲附次第(1423頃))
  5. 三味線の勘所(かんどころ)の一つ。また、その勘所によって奏される澄んだ音。豊竹座一派で好んで用いたもので、東風(豊竹座風)にだけある。
  6. ( ギン ) 義太夫節の一つ。の勘所の音を重要視した語り方の名で、ウギン、上ギン、中ギンなど種類も多く、荘重、はなやかさ、艷(つや)やかさなどの情調を表現するのに用いる。
    1. [初出の実例]「播摩太夫生年の頃より音曲を好みフシ、ヲクリ、三重、ヲン、フシヲクリ、ハル、ギン、此類に心をくばり」(出典:今昔操年代記(1727)上)

しなける【吟】

  1. 〘 自動詞 動 〙 ( 活用未詳 ) うめく。うなる。
    1. [初出の実例]「吟 シナケル 忍泣也」(出典:色葉字類抄(1177‐81))

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普及版 字通 「吟」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

(異体字)
11画

[字音] ギン
[字訓] うたう

[説文解字]

[字形] 形声
声符は今(きん)。〔説文〕二上に「呻(うめ)くなり」とあり、呻吟の意。今は蓋栓の形で、覆い含む意があり、吟は口を狭めて嘆く意をもつ。「シナケル」の訓の合う字である。のち吟詠の意となり、吟懐・吟興のように用いる。字はまたに作る。

[訓義]
1. なげく、しなける、かなしむ。
2. うめく、によぶ、どもる。
3. うたう、うた。
4. むし・とり・けものがなく。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕吟 ニヨブ・ナゲク・カナシブ・シナケル・サマヨフ・アザワラフ・シノブ

[熟語]
吟詠・吟咏・吟繹・吟謳・吟哦・吟臥・吟懐・吟客・吟・吟・吟叫・吟・吟興・吟響・吟吟・吟月・吟肩・吟研・吟口・吟稿・吟行・吟骨・吟魂・吟債・吟殺・吟酸・吟士・吟髭・吟社・吟袖・吟誦・吟唱・吟頌・吟賞・吟嘯・吟杖・吟情・吟場・吟心・吟身・吟呻・吟酔・吟声・吟席・吟牋・吟咀・吟草・吟想・吟・吟断・吟壇・吟虫・吟鳥・吟・吟唄・吟髪・吟風・吟諷・吟味・吟謡・吟力・吟弄
[下接語]
哀吟・詠吟・謳吟・哦吟・寒吟・閑吟・間吟・緩吟・叫吟・苦吟・空吟・口吟・行吟・高吟・詩吟・愁吟・嘯吟・樵吟・呻吟・新吟・酔吟・清吟・静吟・吟・短吟・長吟・沈吟・独吟・繁吟・悲吟・微吟・風吟・放吟・謾吟・名吟・黙吟・夜吟・野吟・幽吟・謡吟・竜吟・朗吟・和吟

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吟」の意味・わかりやすい解説


ぎん

三味線の勘所 (ポジション) の名称,およびその勘所によって奏される相対音名。さらにその音に基づく曲節 (旋律型) 名称。記譜においては「キン」と書いて「ぎん」と読む。一般に二の糸の開放弦の長2度上のポジション,および三の糸の開放弦の5度上のポジション (本調子では二の糸のキンの1オクターブ上になる) をいう。ただし,後者は「ハルギン」または「下のギン」などともいわれ,このポジションを用いることは陽旋法化することになり,義太夫節ではこの「キン」のツボは東風独特のものともいわれる。曲節名称としては,さらに「上キン」「中キン」「ハルキン」「ウキン」などの別もあり,「キン」の音を用いる「オクリ」の曲節を「キンオクリ」という。

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