悪玉・悪魂(読み)あくだま

精選版 日本国語大辞典 「悪玉・悪魂」の意味・読み・例文・類語

あく‐だま【悪玉・悪魂】

〘名〙
① (「玉」はもと江戸の遊里で、女の意。転じて広く人をいう) 性質のよくない人。悪人。また、いやな奴。女性の場合、醜女をいう。
洒落本・青楼五雁金(1788)二「あんなやぼやあく玉(ダマ)に気がねはしんせん」
近世、人間の心に善悪の二つがあるとする心学の説により、その人物画の顔に「悪」の字を円で囲んだものを描き、悪人であることを表わしたもの。寛政二年(一七九〇刊行の山東京伝作の黄表紙「心学早染艸」(善玉悪玉心学早染艸)がその最初であるという。また、その図柄意匠にしたもの。
※黄表紙・堪忍袋緒〆善玉(1793)上「みなさま御ぞんじのあく玉〈略〉なにとぞして今一たびあく玉の道をひろめんと」
③ 映画や芝居などで、悪人の役。悪役。
[語誌]京伝の「心学早染艸」では善悪の魂を擬人化し、「よきたましひ、ぜんだましひ」「わるきたましひ、わるたましひ」として用いている。これがすでにあった「悪玉」と結びつけられて、挙例の「堪忍袋緒〆善玉」で、悪にみちびく魂の意味での「悪玉」が使用された。

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