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書く/描く/画く カク

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デジタル大辞泉の解説

か・く【書く/描く/画く】

[動カ五(四)]《「掻く」と同語源》
(書く)文字や符号をしるす。「持ち物に名前を―・く」
(書く)文章を作る。著す。また、著作する。「日記を―・く」「本を―・く」
(描く・画く)絵・模様や図をえがく。「眉を―・く」「グラフを―・く」
[可能]かける
[用法]かく・しるす――「文字を書く(記す)」では相通じて用いるが、新聞・雑誌の記事、論文、小説などの場合は「書く」を用いる。「書く」には、ある長さの、まとまったものを文章として表現する意味があるからである。「小説を記す」とはあまり言わない。◇「記す」は文字として残す意で、「名前を記す」「心に記す」などと用いる。◇類似の語に「したためる」がある。「したためる」は文章語的で、ややあらたまって、「手紙をしたためる」などと用いるほか、「朝食をしたためる」のように、食事をする意味にも用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

書く
かく

現代日本語では、書字道具(ペン、筆、白墨など)によって書字材料(紙、黒板など)上に文字、記号をしるしづけることを「書く」といい、「描(えが)く」(絵をかく)と区別している。ここでの文字とは、各国語で用いられる文字体系のほかに、速記用文字のような特殊のものも含まれる。また記号には各種の句読点、数字のほかに、科学記号や音譜なども含まれる。「書く」ということは、文明化した人間が手(特別の場合に口や足)を用いて行う基本的行為であり、知識、感情、思想などを内容とする情報伝達と密接な関係をもつものである。この行為は、職業としては作家、ジャーナリスト、編集者、教師、書家などと深く結び付いている。[矢島文夫]

書くことの起源

人類の起源はほぼ200万年前にさかのぼるといわれ、また言語の起源も少なくとも数十万年前にさかのぼると推定されるのに対し、人類が文字によって言語を記録し始めたのは、資料によって確かめられる限り、紀元前3000年前後のころ、すなわち、いまからせいぜい5000年前のことにすぎない。したがって、火の使用、道具の発明がごく早期の文化だとすれば、これは動物の家畜化、植物の栽培などと並ぶ、後期の文化ということができる。
 しかし一般に「書く」という行為は、体系的な文字の成立以前、あるいはそれが完全に成立することのなかった自然民族のもとでも、ある種の記号(サイン)を使用する際に、多かれ少なかれ生じたと考えられる。なぜならば「書く」という語は、各国語において「引っ掻(か)く、掻き削る、彫りつける、刻む」などを意味し、あるいはそれらを意味する語に発しており、「書く」ことの起源を暗示しているからである。
 旧石器時代末期にさかのぼる古代人は、洞窟(どうくつ)や岩壁に絵画を描くとともに、骨や牙(きば)を刻み、ときにはそれらに記号性の強い印をつけた。また原始人はしばしば立ち木などに印を刻み、なんらかの目印とした。これらの行為も広い意味で「書く」ことということができる。それらのあるものは、後代の体系的文字のうちにも痕跡(こんせき)を残している。中国・日本文字体系で使われている数字やローマ数字(一、二、三、あるいはなど)にその例がみられる。このような記号は、今日の交通標識(とかなど)、あるいはある種のシンボル(?や!、♂や♀)にもつながるものである。[矢島文夫]

文字の創造との関係

他方、新石器時代になって人口が増え、都市文明が生じるとともに、言語をそのままの形で表記しようとする文字が考案され、広く使われるようになった。古代文明にはいくつかの中心地が数えられるが、大きく分けると、旧大陸ではメソポタミア、エジプト、インド(インダス地方)、中国(黄河流域)、アメリカ大陸ではマヤ・アステカの五大文明が数えられ、それぞれが独自の文字体系をもっていた(これらのうちインダス文字は未解読。マヤ・アステカ文字は解読が進行中)。それらの古代文字は、それぞれの地域で用いられた書字材料、書字道具に従って図形的性格を異にしている。[矢島文夫]
メソポタミア
メソポタミアでは書字材料、書字道具に粘土板および葦(あし)などのペンが用いられたので、当初は象形文字に近かった初期の楔形(くさびがた)文字は、のちには記号的性格の強い文字となった。ここでは「書く」という行為は「刻む、彫りつける」ということと同意語であった。[矢島文夫]
エジプト
エジプトでは初めメソポタミアの影響を受けてヒエログリフhieroglyph(聖刻文字)が成立したが、ここではおもな書字材料として石材およびのちにはパピルス紙が用いられた。前者はしばしば記念碑的刻文に用いられたので、ヒエログリフは絵画的性格に富み、しばしば象形文字の代表とされる。後者は主として日常的文書、宗教文学などに用いられ、書字道具として一種のペンとインクが使われたので、草書体の文字(ヒエラティックhieratic、デモティックdemotic)を生み出した。これらの文字は、東洋における文字と同じくまさに「書かれ」たのであり、パピルスは豊富であったから、「書く」という行為はかなり一般化したものと思われる。しかしメソポタミア文字、エジプト文字はともに字数も多く、用法も複雑であったから、熟達するためには年期が必要であり、特別に養成された書記は社会的に高い地位につくことができた。これに対して、メソポタミア文字とも多少とも関係があったと考えられる未解読のインダス文字は、多くは短い銘文で、凍石(緻密(ちみつ)質の固まりをなす滑石)などに彫られているものがみいだされているにすぎない。[矢島文夫]
古代中国
古代中国においては、最古の文字については詳しいことがわからないが、殷(いん)時代(前?~前1100ころ)の甲骨文字はその名のとおり亀(かめ)の甲や牛の骨に彫られ、主として占いに用いられた。こののち漢字の使用は発展し、金石文以外に竹簡(ちっかん)を書字材料とすることも行われた。西暦紀元前後に紙が発明されてからは、筆と墨を用いる草書体が発達し、書道(文字の美学)も中国およびその影響を受けた地域で発展した。なお、中国で発明された紙は8世紀ごろには中央アジアにおいてイスラム教徒に伝えられ、のちにヨーロッパにも伝播(でんぱ)して広く使われるようになったが、紙と筆の使用もアラビア文字および後代のヨーロッパ・アルファベット文字の字形に影響を及ぼしていると考えられる。[矢島文夫]
ギリシア・ローマ
ギリシア・ローマではエジプトから移入されたパピルス紙、小アジアで多量につくられた羊皮紙(パーチメント)のほかに、一時的な書字材料、書字道具として石灰片やろうを塗った書字板と鉄筆が使われた。[矢島文夫]
マヤ・アステカ
新大陸で使われたマヤ・アステカ文字はきわめて複雑な図形をもち、書字材料としては石(記念碑用)およびマゲイ(リュウゼツランの一種)からつくった紙が用いられたが、後者はヨーロッパ人のアメリカ大陸への到着以後、数点を除いてすべて失われた。ここでの文字は絵文字といってよい。[矢島文夫]

書字方向

書字方向についてみると、メソポタミアでは初め縦書き(右から左へ)だったものが、のちに横書き(左から右へ)となった。エジプトでは縦書きと横書き(大半は右から左に書かれているが、ときには同一碑文中に右から左、左から右と対称的に書かれた)が併存し、東地中海地方(ヒッタイト象形文字、初期ギリシア文字など)では、左から右、右から左へと交互に進む横書き(ブストロフェドンboustrophdon)が行われた。初期アルファベット(セム語系)は一般に右から左への横書き(これは今日のアラビア語、ヘブライ語の書法に伝えられている)だったが、ギリシア文字以後のアルファベット系諸文字では、左から右への横書きが優勢となった。中国に発する漢字は縦書き用につくられているが、今日では横書きにされることも多くなった。横書きの場合、左から右への横書きが優勢となった理由は、人類に右利きが多いからという説もあるが確かではない。[矢島文夫]

書く概念の変容

東西の両世界において近世に至るまで、文字を書ける人は特別の教育を受けた人だけであって、自分の名前も書けない王や貴族がまれでなかったが、近世以後の教育の普及に伴い、各国における識字率は急速に高まった。19世紀末ころまでは、手写本や公文書類の作製のために美しい文字を書くこと(ペンマンシップpenmanship、書道)が文字教育の重要な部分を占めていた。
 しかし欧米においては、タイプライターの出現によって、個人の「書字」も機械化され始めた。15世紀中ころに行われた活版印刷術は文字の図形にも変革をもたらしたが、それでも原稿の作成にあたっては、「書く」という作業が欠かせなかったのに対し、タイプライターの出現(これは日本におけるカナ・タイプ、邦文タイプについてもある程度あてはまる)は「書く」機会を減少せしめることになった。
 さらにワードプロセッサーword processer(ワープロ)が開発され急速に普及した今日では、「書く」という概念は根本的な見直しを迫られている。ここでは「書く」というのはキーに触れるだけのことにすぎない。またこの行為の結果として生じる文字は、かつてのように刻まれたり描かれたり線描きされたものではなくて、ドットdot(点)の集合でつくりだされたものであり、まったく異質的なものだからである。科学技術の発展に応じて、今後の文字はさらに新しい図形を生み出すであろうし、「書写」の操作もより容易なもの、より国際性の高いもの、情報量の多いものへと変化していくと想像できる。近い将来、音声言語の自動変換を利用するようになったときには、「書く」ということばは、もはや「(文字が)書かれる」という受動形でしか使えないものになるかもしれない。[矢島文夫]
『矢島文夫著『文字学のたのしみ』(1977・大修館書店)』

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