日本大百科全書(ニッポニカ) 「検証(哲学)」の意味・わかりやすい解説
検証(哲学)
けんしょう
verification
命題や理論の正しさを確かめることをいう。かつて論理実証主義者が、「検証の可能性のない命題は、実は意味のないえせ命題にすぎない」とする、「検証可能性による意味基準」をたてたので有名になった概念である。知覚される事柄について述べた命題と、論理的にその正否を決定する手続がある命題とは、この基準からいって意味のある命題であるということになるが、自然科学の法則のように、無限個の事例についての主張を全称文の形で述べているようにみえる命題についての検証はどうするのか。有限個の個々の事例について法則が当てはまることが確かめられただけでは、完全な検証が行われたとはいえまい。また、反例とみえるものがあっても法則が維持されているという科学史的事実もある。このあたりのことを十分に扱えなかったため、この基準は廃れ、ひいては論理実証主義も影が薄くなることとなった。
[吉田夏彦]