巻き貝の先端または側面に穴をあけ、吹口を取り付けた吹奏楽器。唇を振動させて音を出す。アジアやオセアニアに広く分布し、宗教や呪術(じゅじゅつ)に用いられるほか、信号発信にも使われる。日本では法螺貝または略して貝(ばい)ともよばれ、密教僧が宗教具として唐から伝えたとされる。現在でも真言(しんごん)宗や天台宗の法会(ほうえ)や東大寺などの修二会(しゅにえ)で、儀礼の一つとして吹奏されている。以前は、戦陣において陣太鼓とともに用いられ、合図や、戦意を高めるなどの役割を担い、陣具ともよばれた。歌舞伎(かぶき)でも、戦いの場面の効果音として使われる。
[藤田隆則]
『大無量寿経』では法鼓(太鼓、鉦鼓(しょうこ))と法螺があげられている。サンスクリット語ではシャンキャśakhaといい、商きょと訳す。大巻き貝を吹くことによって遠方に音を伝える。修行者がこれを山中で吹くのは、猛獣を追い払うとともに悪魔を退けるためである。日本ではもっぱら修験道(しゅげんどう)の合図に吹かれ、山伏集団のあるところでは、「貝吹き岩」があって、日常の合図と非常呼集に使われた。「ほうら」ともいわれ、法螺の緒(お)は螺緒(らお)といい、山中では救急用のザイルであった。
[五来 重]
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