(読み)ナダ

デジタル大辞泉 「灘」の意味・読み・例文・類語

なだ【灘】[地名]

兵庫県神戸市灘区から西宮市にかけての海岸地帯の称。天保11年(1840)宮水が発見されて以来、酒造地として知られる。摂津灘
神戸市東部の区名。大阪湾に面し、沿岸工業地帯

なだ【×灘/洋】

海で、風波が荒く、または流れが速くて航海の困難な所。「玄界―」「遠州―」
[類語]沖合海峡水道瀬戸

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精選版 日本国語大辞典 「灘」の意味・読み・例文・類語

なだ【灘・洋】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 水流のはやく流れるところ。川の流れのはやいところ。早瀬。瀬。
      1. [初出の実例]「月入花灘暗」(出典:三月三日紀師匠曲水宴(903又は902))
    2. 潮流の強い海洋。風波の荒い航行の難所。
      1. [初出の実例]「昨日こそ船出はせしかいさな取り比治奇(ひぢき)の奈太(ナダ)を今日見つるかも」(出典:万葉集(8C後)一七・三八九三)
    3. 転じて、難関。
      1. [初出の実例]「二階に残りし彼二人は、ホット吐息、テモゑらい灘(ナダ)では有た」(出典:洒落本・南遊記(1800)四)
    4. ( [ 二 ][ 一 ]から ) 「なだざけ(灘酒)」の略。
  2. [ 2 ] ( 灘 )
    1. [ 一 ] 兵庫県南東部、大阪湾北岸の武庫川河口から旧生田川河口にかけての地域をいう。天保一一年(一八四〇)、硬水の宮水(みやみず)が発見されて以来、清酒の名産地として発達。西宮市の今津郷・西宮郷、神戸市の東郷中郷西郷を合わせて灘五郷と呼ばれる。
    2. [ 二 ] 兵庫県神戸市の行政区の一つ。大阪湾に面する。昭和六年(一九三一)、神戸市に編入された西郷町と西灘・六甲の二村とが合体して成立。かつては白砂青松景勝地として知られた海岸は埋め立てられ、工業地帯、神戸港摩耶埠頭が造成された。六甲山地のふもとは高級住宅地。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「灘」の意味・わかりやすい解説


なだ

兵庫県東部、尼崎(あまがさき)市と西宮(にしのみや)市の境界を流れる武庫(むこ)川の河口から神戸市の旧湊(みなと)川河口へ至る約20キロメートルの地域。酒造に適した良質の地下水「宮水(みやみず)」が湧出(ゆうしゅつ)し、灘五郷とよばれる酒造地を形成してきた。東部から西宮市の西宮郷、今津(いまづ)郷、神戸市東灘区の東郷(とうごう)(深江、青木、魚崎(うおざき)地区)、中郷(なかごう)(住吉(すみよし)、御影(みかげ)、石屋(いしや)、東明(とうみょう)地区)、灘区の西郷(にしごう)(大石、岩屋(いわや)、味泥(みどろ)地区)の五郷である。1840年(天保11)魚崎の山邑(やまむら)太左衛門は、西宮の宮水が酒質を高めることに着目し、これを持ち帰り酒造にあて、以後、灘一帯では宮水を用いるようになったという。その後、海岸工業地帯の発達などの影響により宮水地帯は北に移っている。酒造も技術開発による近代化が進んでいる。なお、白鶴(はくつる)酒造資料館など酒造会社のつくった博物館が各地にみられる。

[藤岡ひろ子]

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百科事典マイペディア 「灘」の意味・わかりやすい解説

灘【なだ】

大阪湾の北岸,兵庫県の武庫(むこ)川河口から旧湊川河口までの,20kmにおよぶ湾入。良質の播州米と,丹波からの杜氏(とうじ)により古くから酒造地として発達したが,天保年間(1830年―1844年)沿岸の地下から酒造に好適な硬水(宮水)が得られ,灘五郷と呼ばれる日本随一の清酒業地となった。五郷は今津郷,西宮郷(以上西宮市),東郷,中郷,西郷(以上神戸市)をいう。
→関連項目神戸[市]清酒灘[区]灘五郷西宮[市]吉川[町]

灘[区]【なだ】

兵庫県神戸市の一区。市街地東部にあたる住宅地区と摩耶(まや)山,六甲山上を含む。東海道本線,阪急神戸線,阪神本線が通じる海岸沿いには重工業が立地していたが,再開発が進んでいる。中央部は住宅地。六甲山,摩耶山へはケーブルカーが通じる。西灘は灘五郷に属する酒造地()。王子動物園六甲山牧場,神戸大学がある。1995年1月の兵庫県南部地震では死者923人,倒壊・焼失家屋1万8993戸という大きな被害をうけた。32.66km2。13万3451人(2010)。

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改訂新版 世界大百科事典 「灘」の意味・わかりやすい解説

灘 (なだ)

兵庫県南東部,大阪湾北岸の地区名。東は尼崎市と西宮市の境の武庫(むこ)川河口から,西へ芦屋市,神戸市東灘区,灘区を経て神戸市中央部の旧生田川河口付近にまで至る。ほぼ直線状に長さ20km余にわたり,清酒の産地として知られる灘五郷を含む。東海道本線,阪神電鉄本線,国道2号,43号線が狭い市街地を東西に並行して走る。大正中期に海岸を埋め立てて,川崎造船所,神戸製鋼が進出して以来,埋立てによる工業用地の造成が相次ぎ,阪神工業地帯の重要な一角を占めるようになった。また1960年代以降,同じく埋立てによって摩耶(まや)埠頭やポートアイランド(436ha)が建設され,神戸港の港湾機能が拡充された。現在はさらに六甲アイランド(580ha)の造成が進んでいる。
執筆者:


灘 (なだ)

灘ということばは,古くは,航行に注意を要する海の難所をいったが,民俗のうえでは地方によってさまざまな意味があり,一定の用い方はされていない。例えば,福岡県糸島郡では,沖へ出て山影の見えなくなったところが〈ナダ〉であり,隠岐島(おきのしま)や千葉県あたりでは,磯や渚にあたる村の前面の海を指して用いる。また静岡県や山口県下関市あたりでは,海上のみずからの舟を中心に,舟からみて陸上の方を〈ナダ〉,沖合の方を〈オキ〉と呼んでいる。
 → →沖合
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「灘」の意味・わかりやすい解説


なだ

兵庫県南東部,東は武庫川下流から西は旧生田川下流にかけての大阪湾岸の地域。東西約 20km。かつて灘五郷と呼ばれた清酒どころで,西宮市の今津郷,西宮郷,神戸市魚崎の東郷,御影の中郷,岩屋一帯の西郷が,いわゆる灘五郷として知られた。天保11(1840)年,良質な地下水である宮水が発見されたのがきっかけで,伊丹,池田を凌駕する酒どころとなった。第2次世界大戦後,埋め立てによる海浜の工業地化や杜氏の減少などで条件が悪化したため,丹波杜氏出身地の丹波篠山市へ工場を移す会社が現れ,戦前ほどの盛況はみられなくなった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「灘」の解説


なだ

兵庫県南東部,神戸市から西宮市にかけての臨海地で,江戸時代以来の酒造産地
武庫川と生田川にはさまれ,古くは「灘五郷」と呼ばれた。江戸前期に伊丹・池田から酒造法が伝えられ,播磨・摂津の良質米,良質の水(宮水と呼ばれる),丹波杜氏 (とうじ) の技術が,大坂・江戸への船便(樽廻船)の良さと重なって発達。灘酒として今日も愛飲される。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【清酒】より

…伊丹では冬期のいわゆる寒(かん)づくりにより量産化がはかられた。これまで原料米は足で踏んで杵を動かす方法で精米されていたが,18世紀後期西摂津の灘(なだ)で六甲山からの急流を利用した水車精米が普及した。足踏式では玄米の10%をぬかとして取り去った90%精白米を得るのが限度であったが,水車式精米機の出現で,80%以下まで精白することが可能となった。…

【灘五郷】より

…灘五郷とは灘の生一本(きいつポん)の銘醸地の総称で,江戸時代の中期以降より急速に江戸積酒造業が発展し,今日にいたるまで全国有数の酒造地を形成している。現在の灘五郷は,兵庫県南東部の海岸寄りにある今津郷・西宮郷(西宮市),魚崎郷・御影(みかげ)郷(神戸市東灘区)と西郷(神戸市灘区)の5郷からなる。…

【灘】より

…兵庫県南東部,大阪湾北岸の地区名。東は尼崎市と西宮市の境の武庫(むこ)川河口から,西へ芦屋市,神戸市東灘区,灘区を経て神戸市中央部の旧生田川河口付近にまで至る。ほぼ直線状に長さ20km余にわたり,清酒の産地として知られる灘五郷を含む。…

※「灘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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