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stomach

翻訳|stomach

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説



stomach

脊椎動物の消化管のうち,食道と腸の間にあって,食物がある期間とどまって消化される部分。人間の胃は,食道と十二指腸の間にある袋状の消化器で,左上腹部からへそにかけて斜めに位置し,上方は横隔膜,左方は脾臓,右方は肝臓と十二指腸に接している。胃の各部は上端の入口を噴門,中央部を体部,下端に近い部分を前庭部,出口を幽門と呼ぶ。胃壁は粘膜,筋肉,漿膜の3層から成り,その容量は個人差があるが,1.5~2l程度である。胃粘膜の表面は単層の円柱上皮細胞でおおわれ,その間に多数の胃腺があり,胃液とホルモンを分泌している。胃は,食道から送り込まれる食物の蛋白質を,塩酸とペプシンによってペプトンにまで分解する。前庭部に食物がたまるとガストリン (消化管ホルモン) の分泌が起り,塩酸とペプシンの分泌を促進する。また,胃にはその筋肉の収縮による運動機能がそなわっており,食物は胃液と混和され,半流動体となって十二指腸に送られる。哺乳類の胃の大部分は1室より成るが,鳥類前胃と砂嚢の2室,哺乳類の反芻類では反芻胃が3~4室に分れる。無脊椎動物の消化器の各部の名称は,形態または機能上の類似から脊椎動物のものをあてはめているので,胃と称する部分は諸種の動物にあるが,脊椎動物の胃とどこまで対比できるかは,いろいろである。

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デジタル大辞泉の解説

い〔ヰ〕【胃】

消化管の一。袋状で、上は食道に、下は十二指腸に連絡し、胃液を分泌して食物を消化する。胃袋
二十八宿の一。西方の第三宿。牡羊(おひつじ)座東部の三つの星をさす。えきえぼし。胃宿。

い【胃】[漢字項目]

[音](ヰ)(呉)(漢)
学習漢字]4年
内臓器の名。六腑(ろっぷ)の一。胃袋。「胃癌(いがん)胃酸胃弱胃腸胃痛

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百科事典マイペディアの解説

胃【い】

ヒトを含めた脊椎動物の消化管の袋状になった部分で,食道に続く。食物を一時的に貯留胃液による化学的消化と,胃壁筋肉の伸縮による機械的消化によって,食物をかゆ状として腸へ送る。
→関連項目消化噴門幽門

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栄養・生化学辞典の解説

 消化管の一部で,食物はここで滞留し,徐々に腸へと送られる.消化液として,胃液を分泌するほか,ホルモンとしてガストリンを分泌する.反すう動物では第一胃(rumen),第二胃(reticulum),第三胃(omasum),第四胃(abomasum)と区別され,第四胃が単胃動物の胃に相当する.第一胃と第二胃をあわせて反すう胃(reticulo-rumen)とよびここに多くの細菌と原生動物が生息して反すう動物特有の消化を行っている.

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世界大百科事典 第2版の解説

い【胃 stomach】

食道と腸の間で消化管が大した部分で,食物の一時的貯留の場として形成され,のちに消化・吸収の機能をもつようになった器官
[無脊椎動物の胃]
 無脊椎動物では消化管の部域分化は一般に著しくないが,外胚葉性の前腸域の膨大部である咽頭と内胚葉性の中腸域の膨大部である胃は多くのもので形成されており,いずれも発達した筋肉で包まれるようになっている。胃の表皮には分泌細胞があり諸種の消化腺も開口し,繊毛やクチクラ質突起を生じていることもある。

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大辞林 第三版の解説

い【胃】

消化管の一部で、食道に続く部分がふくらみ、器官としての機能をもつもの。食物を一時たくわえ、消化を行う。ヒトの胃は食道と十二指腸の間にあって一室から成り、胃液を分泌して主にタンパク質を分解する。鳥類では二室、哺乳類の反芻はんすう類では四室に分かれる。胃袋。 「 -がもたれる」
二十八宿の一。西方の星宿。胃宿。えきえぼし。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


消化管を通じてもっとも膨らんだ部分で、食道と十二指腸(小腸)との間に位置する。

胃の形状

ヒトの胃の形状や大きさは一定ではないが、上部が大きく広がり、長軸が左上後方から右下前方に向かう嚢(のう)というのが標準的である。内容物が空(から)のときは前後に扁平(へんぺい)な嚢であるが、内容物が充満しているときは、直立位でも坐(ざ)位でも鉤(かぎ)形をしている。死体解剖時での胃の形状は、筋肉の弛緩(しかん)のために嚢状に膨らんでいる。胃の位置は、中等度に内容物が入っている場合には、胃全体の6分の5が体の正中線から左側にあり、胃の細い部分だけが右側にある。胃に内容物がないときは、胃の最下端(大彎(だいわん)底部)は、成人の場合、臍(へそ)より指を横に3本ほど並べた上方となる。胃の各部の名称は、食道から胃に移行する部分を噴門(ふんもん)とよび、噴門口から胃内腔(ないくう)に入る。内腔は急に拡張するが、その大部分が胃体であり、胃体の左側上端の膨らみを胃底とよぶ。胃底の位置は第10肋骨(ろっこつ)前端の高さになる。胃体は出口に向かって細い管状部、すなわち幽門(ゆうもん)部となり、十二指腸に続く境が幽門である。胃を全体的にみると、前壁はやや前上方を向き、後壁は後下方を向く。前壁と後壁との移行部はともに上方に開く弓状をしており、上縁が小彎、下縁が大彎である。日本人では小彎の長さは12~15センチメートル、大彎は42~50センチメートルである。容量平均は、日本人の成人の場合、男性で1407.5cc、女性で1275.0ccである。[嶋井和世]

胃の構造

胃壁の構造は、外から内に向かって漿膜(しょうまく)、筋層、粘膜に区別される。漿膜は腹膜の連続で、胃の全体を覆い、小彎、大彎でそれぞれ小網(しょうもう)、大網(たいもう)に移行する。筋層は3層の平滑筋層で構成されている。外側から縦走筋、輪走筋、斜線維が配列している。ほぼ食道壁の筋層から続いているが、輪走筋がもっともよく発達し、ほぼ平均した厚さである。斜線維というのは食道輪走筋の一部の続きで、噴門から斜めに分散するが幽門までは届かない。輪走筋は幽門ではとくに厚い幽門括約筋を形成し、幽門口を取り巻いている。粘膜は、胃が空虚で収縮状態のときは多数の縦走ひだをつくり、さらにこのひだを横に連ねる短いひだがある。胃の拡張時には、これらのひだは消失するが、小彎に沿う3~4条のひだは残っていて、胃の内容物を十二指腸に向けて移動させるために役だつ。
 粘膜表面は2~3ミリメートル大の多角形の小区画に分かれ、胃小区という。胃小区の中に無数の胃小窩(いしょうか)という小陥凹(かんおう)があり、その底部に胃腺(いせん)が数個ずつ開口している。胃腺は胃液を分泌するが、粘膜上皮が粘膜固有層の中に進入してできたもので、胃底と胃体には固有胃腺(胃底腺)、幽門部にのみ幽門腺が存在する。固有胃腺を構成する細胞は、主細胞、旁(ぼう)細胞(壁細胞)、副細胞の3種類がある。胃腺の大部分は主細胞が占め、ペプシノーゲン(胃液原素)と凝乳酵素を分泌する。副細胞は胃小窩に近い腺頸部(せんけいぶ)に存在し、粘液物質を含む。旁細胞は腺全体にあるが、とくに腺頸部に多く、塩酸分泌をする。一方、幽門腺は1種類の細胞からなり、噴門腺に似ている。噴門腺は噴門を取り巻く少量の腺で、食道噴門腺と同じ粘液性腺である。
 胃と周囲臓器との関係は、胃の大部分が上腹部と左下肋(かろく)部に収まり、小彎、噴門、幽門部は肝臓左葉に覆われている。大彎の一部は横行結腸に覆われ、右側のほぼ三角形部分は直接前腹壁に触れ、胃の後方には左腎臓(じんぞう)、副腎、膵臓(すいぞう)がある。胃底は横隔膜の左下面に接し、脾臓(ひぞう)、肝臓左葉にも接している。
 胃の栄養をつかさどる血管は、腹部大動脈の枝の腹腔動脈から分かれて直接胃へ分布するものと、腹腔動脈から肝臓、脾臓あるいは十二指腸へいく動脈枝から分かれたものとが分布しているが、胃からの静脈血は、脾臓、膵臓、十二指腸からの静脈血とともに、すべて門脈(もんみゃく)に注ぐ。胃周辺のリンパ節は、胃壁を循環するリンパ管を受け入れる。このリンパ節の分布を理解することは、胃腫瘍(しゅよう)の転移や治療などに重要な意義をもっている。[嶋井和世]

生理作用

食道から運ばれてきた食物は、胃の中に層をなして重積し、胃体部の中央付近から約25秒に1回の割でおこる蠕動(ぜんどう)運動によって、幽門前庭部へと送られる。幽門前庭部では蠕動運動は強大になり、幽門括約筋の方向へ進行するが、普通この括約筋の所は閉鎖されており、内容物はここで反転逆行し攪拌(かくはん)混和される。この間に胃液の作用で胃内容が酸性になり、唾液(だえき)のデンプン分解作用は止まる。また、胃液に含まれるペプシンは酸性で、よく作用し、食物中のタンパク質はペプトンに分解され、半流動性の糜粥(びじゅく)とよばれる、粥(かゆ)状のものになる。この糜粥は幽門前庭部と十二指腸内の圧差によって、少しずつ幽門括約筋を通って十二指腸に送られる。胃から十二指腸へ排出される時間は、食物の種類によって異なるが、脂肪性の食事は胃からの排出を遅らせる。これは、十二指腸に入った脂肪が、エンテロガストロンという一種のホルモンを分泌させ、これが胃の運動を抑制するためである。また、食物の物理的な性質も排出時間に影響する。すなわち、液体は固形のものよりも早く排出され、固形のものは半流動体になるまで胃に停滞し、攪拌されるために、排出が遅れる。またストレスは、胃運動に対して抑制的に働くので、排出を遅らせることになる。胃では、ほとんど食物は吸収されないが、アルコールだけはよく吸収される。[市河三太]

胃運動の調節

胃壁には、筋層の間にアウエルバッハAuerbach神経叢(そう)と、粘膜下にマイスネルMeissner神経叢とよばれる二つの神経群が存在し、これらは内臓神経(交感神経)と迷走神経(副交感神経)とに連絡する。一般には迷走神経は胃運動を促進し、内臓神経はこれを抑制することが知られるが、迷走神経には抑制線維が、内臓神経には促進線維が認められ、これらが複雑に胃の運動を調節している。延髄(えんずい)には胃運動の中枢があり、この中枢を介して、小腸・胃運動抑制反射がおこる。これは、小腸の化学的刺激または伸展刺激が引き金となっておこる、胃運動の抑制をいうが、迷走神経を切断すると、この反射は減弱するといわれる。このほかにも、小腸・胃運動促進反射、大腸・胃運動抑制反射などがある。胃粘膜から分泌されるホルモンであるガストリンは、おもに胃液の分泌を促進するが、胃運動に対しても促進的に働く。また十二指腸粘膜から分泌されるコレシストキニンも胃運動に対して促進的に働くが、セクレチンやGIP(gastric inhibitory polypeptide)は胃運動を抑制する。このように、消化管の粘膜から分泌されて、その運動や分泌機能を調節する化学物質を消化管ホルモンという。[市河三太]

胃の病態

胃は、粘膜やそこから分泌される粘液によって胃壁を保護し、また粘膜細胞にある酵素によって自らが消化されるのを防いでいる。この保護作用が弱くなると胃液が作用し、潰瘍(かいよう)が生ずる。これを胃潰瘍または消化性潰瘍といい、自律神経の失調やストレスによっておこる分泌機能の変調が関連するといわれる。症状として胃痛、嘔吐(おうと)、吐血(とけつ)などがある。胃潰瘍のほかに胃炎、胃癌(いがん)は胃の病態として重要で、胃の三大疾患といわれる。これらのほかにも、胃壁の緊張が低下した胃アトニー症、あるいは中毒などにより反射性または中枢性に迷走神経の緊張が高まり、胃全体の拘縮をもたらす胃けいれんなどもしばしばみられる。[市河三太]

動物の胃

脊椎(せきつい)動物のうち、大部分の哺乳(ほにゅう)類の胃は1室で、ヒトの胃に似ている。ウシ、シカなど反芻(はんすう)類の反芻胃は例外で、4室(入口から順に瘤胃(こぶい)、蜂巣胃(ほうそうい)、重弁胃、皺胃(しわい))または3室(重弁胃と皺胃の分化がない)である。鳥類の胃は前胃(腺胃(せんい))と砂嚢(さのう)(きわめて厚い筋肉壁よりなる、そしゃく胃)の2室である。大部分の魚類、両生類、爬虫(はちゅう)類の胃は嚢状で、腸管の一拡張部をなす。
 無脊椎動物の胃とよばれる部分の形態的、機能的分化の模様は、動物の種類によってさまざまである。原生動物の食胞は仮性胃ともいう。海綿動物の体の内腔(ないこう)を胃腔、腔腸動物のクラゲ型では口と放射水管との間の拡大部を胃とよぶ。線虫類の食道と腸との間は腺胃という。紐形(ひもがた)動物、環形動物のヒル類、軟体動物の二枚貝類、節足動物の昆虫やクモ類などの胃にはいろいろな形や数の、膨出した盲嚢(胃盲嚢)を伴うものがある。軟体動物の二枚貝類、腹足類、節足動物の甲殻類や昆虫類には、食物をより分けて次の消化器官に送る濾過(ろか)胃を有するものがあり、また、輪虫類、環形動物の貧毛類、節足動物の甲殻類には食物を破砕する機能をもつそしゃく胃を有するものがある。液状で食物をとる昆虫(ハエやカ)には、大量の食物を一時蓄える吸胃がある。[内堀雅行]
『問田直幹・内薗耕二・伊藤正男・富田忠雄編『新生理学 下巻』第5版(1982・医学書院) ▽銭場武彦著『胃・腸管運動の基礎と臨床』(1979・真興交易医書出版部)』

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