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脳梗塞(脳軟化症) のうこうそくのうなんかしょうBrain Infarction

家庭医学館の解説

のうこうそくのうなんかしょう【脳梗塞(脳軟化症) Brain Infarction】

◎3つの病態がある
[どんな病気か]
◎閉塞部位により症状はさまざま
[症状]
◎治療開始が早いほど好結果
[治療]

[どんな病気か]
 脳の動脈の内腔(ないくう)が途中でつまってしまい、その先へ血液が流れなくなる病気です。
 その動脈から血液の供給を受けている脳の部分が、酸素不足におちいって死んでしまい(壊死(えし))、はたらきが低下したり、失われたりします。
 この脳梗塞には、脳血栓(のうけっせん)(症(しょう))、脳塞栓(のうそくせん)(症(しょう))(心原性脳塞栓(しんげんせいのうそくせん))、出血性脳梗塞(しゅっけつせいのうこうそく)という3つの病態があります。
■脳血栓(のうけっせん)(症)
 脳の動脈の動脈硬化(どうみゃくこうか)が進むと、動脈の内腔が狭くなり、その部位に血流のよどみができます。そのため、徐々に血栓(血液のかたまり)ができて、血栓が血管の内腔をつまらせてしまう(閉塞(へいそく))のが脳血栓です。
 最近では、症状、治療方針、予後などがちがうために、つぎの2つに分けられています。
①アテローム血栓性脳梗塞(けっせんせいのうこうそく)
 脳に酸素や栄養を運ぶ太い動脈(主幹動脈)の内腔に、血栓によって狭窄(きょうさく)や閉塞がおこるもの。
②ラクナ梗塞(こうそく)
 脳の深部にある数百μm(マイクロメートル)(1μmは1000分の1mm)の細い血管に閉塞がおこるもの。
 脳血栓は、とくに高血圧や糖尿病(とうにょうびょう)が原因となっておこることが多く、そのほか、高脂血症(こうしけっしょう)、多血症(たけつしょう)、喫煙なども原因としてあげられます。
●症状の特徴
 よくみられる症状は、片側の顔面や舌のまひのためにろれつが回らない(構音障害(こうおんしょうがい))、同じ側の手足のまひや感覚の低下です。
 アテローム血栓性脳梗塞では、これらの症状に加え、意識障害や失語(しつご)、失行(しっこう)、失認(しつにん)、半盲(はんもう)などの高次機能障害がみられるのが特徴です。
 これに比べてラクナ梗塞は、意識障害はなく、構音障害、まひや感覚障害だけで、症状が軽いのが特徴です。
 脳血栓は、睡眠中や起床時など安静時におこることが多く、数時間から数日、ときには1か月にわたり時間を追ってゆるやかに段階的に症状が強くなってくるのが特徴です(緩徐進行型(かんじょしんこうがた))。
■脳塞栓(のうそくせん)(症)(心原性脳塞栓(しんげんせいのうそくせん))
 脳以外の部位に発生した血栓、細菌、腫瘍(しゅよう)、脂肪、空気(の泡)などが血液中を流れてきて、脳の動脈にひっかかってつまらせるのが脳塞栓です。
 ほとんどが、心臓に発生した血栓などがはがれて、脳の動脈まで流れてきてひっかかるケース(心原性)です。
 原因となる病気のなかでもっとも多いのは心房細動(しんぼうさいどう)で、ほかに心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)、洞機能不全(どうきのうふぜん)、原発性心筋症(げんぱつせいしんきんしょう)などがあります。これらの病気のために心臓のはたらきが低下すると、心臓に血栓が生じやすくなります。また、心臓内に細菌の感染病巣があると(細菌性心内膜炎(さいきんせいしんないまくえん))、細菌のかたまりがはがれて流れてくることもあります。
 がんなどでからだが弱っている人は、血液が固まったり溶けたりするシステムに異常をきたし、心臓に血栓を含んだ異物のかたまりが発生しやすくなります(非細菌性血栓性心内膜炎(ひさいきんせいけっせんせいしんないまくえん))。この異物が流れて脳動脈にひっかかり、脳塞栓をおこし、がんの存在がわかることもあります。
 そのほか、外傷や骨折などで血管が切れ、そこから入り込んだ空気(の泡)や皮下脂肪が脳の動脈にひっかかることもあります。
●症状の特徴
 脳血栓と同じ症状が現われますが、脳血栓のように時間を追って症状が徐々に強くなってくること(緩徐進行型(かんじょしんこうがた))は少なく、突然におこり、すぐに症状が現われる(突発完成型(とっぱつかんせいがた))のが特徴です。一般に、脳血栓よりも重症のことが多いものです。
■出血性脳梗塞(しゅっけつせいのうこうそく)
 脳梗塞をおこしても、つまった血栓が自然に溶けて、再び血液が流れ出すことがあります(再開通)。
 脳の血管がつまっても、すぐに血栓が溶けて流れてしまえば、現われていた症状が劇的によくなることもありますが、つまってから6時間以上たって再開通がおこると、閉塞されていた部位から先の動脈は、その間、血流が途絶えていたために障害を受け、血流が再開すると、弱った動脈壁から血液がにじみ出て脳の中に出血します。この状態を出血性脳梗塞といいます。
 心原性脳塞栓が発症して数日後に多くみられます。
●症状の特徴
 落ちついていた脳梗塞の病状が急に悪化したときは、出血性脳梗塞の可能性があります。しかし、症状が軽く、変わりがないこともあって、CT、MRI、脳血管撮影などを行なわないと診断がつきません。

[症状]
 脳に血液を供給している動脈系には、左右2本ずつの内頸動脈(ないけいどうみゃく)と椎骨動脈(ついこつどうみゃく)の2系統があります。
 内頸動脈は、大脳半球に血液を供給している動脈系で、頭蓋(ずがい)内に入った後、前大脳動脈と中大脳動脈2本に枝分かれします。
 左右の椎骨動脈は、合わさって1本の脳底動脈(のうていどうみゃく)となり小脳(しょうのう)や脳幹部(のうかんぶ)に血液を供給した後、枝分かれして大脳半球に入り後大脳動脈となります。
 脳梗塞の症状は、これらの動脈系のどこがつまったかによって、さまざまにちがってきます。
●内頸動脈閉塞(ないけいどうみゃくへいそく)の症状
 内頸動脈のうち、脳梗塞がおこりやすいのは中大脳動脈で、前大脳動脈だけに梗塞がおこるのは比較的まれです。内頸動脈が閉塞したときは、
①つまった部位はどこか
②閉塞が急激におこったか、徐々におこったか
③障害されていない血管から、つまって血液の流れが悪くなった部位に血液を補給するルート(側副血行路(そくふくけっこうろ))がどの程度発達しているか
により、症状がほとんど現われない場合から重篤(じゅうとく)な場合までさまざまです。
 中大脳動脈のうち、脳の深部へ血液を供給している細い動脈(穿通枝(せんつうし))がつまったときは、つまった側とは反対側の顔面や手足のまひ、触覚や温痛覚が低下したり、過敏になったりする感覚障害がおこります。
 脳の表面(皮質(ひしつ))に血液を供給している動脈(皮質枝(ひしつし))がおもにつまったときは、まひや感覚障害が出現しますが比較的軽く、障害された側の大脳半球やその部位によって、さまざまな高次機能の異常が現われます。
 ことばがでなかったり、会話の理解ができない失語症(しつごしょう)、やろうとしている動作や行為もわかっているのに行なうことができない失行(しっこう)、日常使っているものやよく知っている人の顔がわからなかったり、つまった側と反対側の空間にあるものをすべて無視する失認(しつにん)、字が読めない失読(しつどく)、字が書けない失書(しっしょ)、障害された側とは反対側の視野が見えなくなる視野障害(同名性半盲(どうめいせいはんもう))などの症状が現われることがあります。
 中大脳動脈の根もとがつまったときは、穿通枝も皮質枝もともに障害を受けることが多く、意識障害が強く出現して、脳が腫(は)れ上がり(脳浮腫(のうふしゅ))、死亡したり、後遺症が強く残ったりする場合もあります。
 細い脳血管である穿通枝の梗塞は、ラクナ梗塞と呼ばれ、欧米人に比べて日本人に多く、予後は良好です。
 一方、皮質枝にもおよぶ太い脳血管におこった脳血栓はアテローム血栓性脳梗塞といい、人種や食事のちがいからか欧米に多く、予後はさまざまです。心原性脳塞栓は、皮質枝の梗塞が多く、脳血栓よりも重症のケースが少なくありません。
●椎骨脳底動脈系閉塞(ついこつのうていどうみゃくけいへいそく)の症状
 めまい、吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)、頭痛、ろれつが回らない、飲み込みにくいなどの症状のほか、手足のまひ、力は入るのに手足が思いどおりに動かず、立ち上がれない失調症(しっちょうしょう)、動かそうと思わないのに手足がひとりでに動いてしまう不随意運動(ふずいいうんどう)、口のまわりや手の先、半身の感覚が鈍くなったり過敏になる感覚障害、片側の視野が見えなくなる半盲などがおこります。
 脳底動脈の広い範囲に梗塞がおこると(脳底動脈血栓症(のうていどうみゃくけっせんしょう))、生命中枢のある脳幹部が障害され、意識障害に加えて両方の手足のまひがおこります(四肢(しし)まひ)。その後、呼吸状態が悪くなり、重篤な病状になります。

[治療]
 症状に応じて、脳卒中一般の治療(脳卒中(脳血管発作)とはの「脳卒中の治療」)を行ないますが、血栓を溶かす血栓溶解薬(けっせんようかいやく)、血液を固まりにくくする抗凝固薬(こうぎょうこやく)や抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)、脳のむくみをとり、血液の流れや脳の代謝(たいしゃ)を改善する脳圧降下剤(のうあつこうかざい)、脳循環代謝改善薬(のうじゅんかんたいしゃかいぜんやく)などが使用されます。
 脳梗塞がおこった後、治療開始が早ければ早いほどよくなる確率が高いため、できるだけ早く、専門病院を受診することがたいせつです。

出典|小学館家庭医学館について | 情報

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