デジタル大辞泉 
                            「思考」の意味・読み・例文・類語
                     
		
    
        
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                    し‐こう‥カウ 【思考】 
        
              
                        〘 名詞 〙 ①  考えること。思いめぐらすこと。また、その考え。思案。[初出の実例]「思考する所を自在に言述し」(出典:立憲政体略(1868)〈加藤弘之〉国民公私二権) 「余は思考す、故に余は存在す」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉七) ②  哲学で、広義には、意識の作用や内容の総称。狭義には、感覚や表象の内容に対して分析、総合、秩序づけ、統一を行なって、概念を作り、判断をすること。また、概念や判断について論理的に推理していく精神作用。思惟(しい) 。③  心理学で、単なる感性の作用と区別して、概念、判断、推理の作用をいう。人間は動物と異なって思考による内的過程を経て行動するところに特色があるとされる。 
     
    
        
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                    しこう 
        
              
                        思考とは,思考する主体の目標に効果的に到達するために,世界をモデル化してそのモデルを操作するような高次の精神活動である。目標に到達するための精神活動という点では,問題解決problem solvingとほとんど同義である。ただし,問題解決の研究という場合は,習慣的に,主として人間と同じような問題解決を行なうコンピュータ ・プログラムを作成するという人工知能研究の影響を大きく受けた認知科学的な研究を指すことが多い。すなわち問題解決を,初期状態と目標状態および両者を結ぶオペレータによる問題空間として記述していくアプローチ である。これらのオペレーション は,すべて情報処理の比喩で表現されている。それに対して,思考研究という場合は,認知科学のみならず,当初はあまり認知科学の影響を受けなかったピアジェ Piaget,J.の認知発達研究や,情報処理アプローチ以前のゲシュタルト学派の思考研究が含まれる。ただし,ピアジェの理論や考え方を,思考を情報処理過程とみなすアプローチで再編成した研究者たちは,新ピアジェ派neo-Piagetianとよばれ,現在では,これらの研究でも,認知心理学 とよばれる情報処理のアプローチが用いられている。帰納的推論 と演繹的推論】 思考研究,とくに問題解決研究においては,人間が限られた認知容量を用いてどのようにして膨大な問題空間を探索するのかという点が最も大きな問題である。この問題に対して,推論研究から多くの示唆が得られている。推論とは,ある前提から帰結を導く精神の活動で,帰納的推論と演繹的推論とに分類できるが,研究上はその課題形式ごとにさらに細分化されている。ソクラテス は人である,ゆえにソクラテスは死ぬ」のように,前提から帰結が論理的必然をもって導かれなければならない。なお,一般に,ある命題から,解釈の多義性を排除できるほどその命題の情報量は多いとされる。たとえば,「雨が降っている」よりは「土砂降りである」の方が,雨量が少ない可能性を排除できるので,情報量が多くなる。すなわち,上記の帰納的推論の例では,前提においてa,b,cのスイカの色が述べられているのみであるが,それ以外のスイカも赤いという帰結を導いている。この,a,b,c以外のスイカへの言及が情報量の増大に相当する。theory など,類似性を基盤とする理論が概念形成研究での主流になると,典型的な帰納的推論の課題はあまり用いられなくなった。命題論理学 が規範となる。命題論理学では,表に示されるように,この条件文は,pが真でqが偽である場合のみ偽とされ,それ以外は真となる。したがって,「もしpならばq,pは偽」から「qは偽」を導いたり,また,「もしpならばq,qは真」から「pは真」を導いたりすれば,誤りとなる(正解は,「何も導くことはできない」である)。アルコール を飲むならば,20歳以上でなければならない」とし,「ビール」,「ミルク」,「15歳」,「20歳」のカードで飲み物や年齢を調べるという状況では,「ビール」と「15歳」という正答率は大きく上昇する。この内容効果をめぐって,多くの理論が提唱されている。ターゲット という。人間は,新奇なターゲットを理解しようとするとき,ターゲットが自分の既知のどの事象と類似性が高いかを検討し,ベースとなる事象を決定する。次に,類似判断に利用した共通要素以外の特徴や関係について対応づけが行なわれる。たとえば,電圧や電流というターゲットを理解するのに,水圧と水流をベースとして対応づけをすることは典型的な類推の例である。カーネマン Kahneman,D.(1983)が考案したリンダ問題Linda problemとよばれる課題は,学生時代に女性差別撤廃運動や反核運動にかかわってきた聡明なリンダという女性が,卒業後10年経って,「銀行員である」確率と「銀行員でかつフェミニスト運動家である」確率とではどちらが高いか推定させるものである。多くの人びとは後者を選択する。しかし,後者は「P(銀行員)かつQ(フェミニスト運動家)」という連言事象なので,確率論的にはP(銀行員)以下のはずである。にもかかわらず「銀行員でフェミニスト運動家」の確率が高いとするこの誤った判断は,連言誤謬とよばれる。トベルスキーとカーネマンは,代表性ヒューリスティックスrepresentativeness heuristics によるものとしてこれを説明した。すなわち,人びとは,リンダについての文章から彼女を代表するようなイメージを描き,そのイメージに最もうまく一致する選択肢の確率が高いと判断するわけである。ギャンブラー の誤謬gambler's fallacyという現象も説明する。一般にコインを振る場合,表裏事象の生起はランダムであるが,「表表表表」よりは「表表表裏」の生起順序の方が,ランダム性を代表しているといえ,それで確率が高いと判断されやすいのである。思考心理学 の根本的な問題は,「人間は,限られた認知容量で,どのようにして複雑な問題空間を探索するのか」である。この問題に付随して,推論研究では,人間が合理的な思考者なのかどうかという問題が議論されてきた。推論研究では,思考で用いられる知識の抽象度や領域固有性の問題が扱われている。メンタルモデル 理論mental model theoryがある。メンタルモデルとは,知覚的にほぼ実体と同形態の具体的な表象として構成されるもので,推論における前提を理解したり,帰結を導いたりするための心の中の作業用モデルであり,意味論的な手続きによって構成される。最も初期の理論は,定言的推論における困難度を説明するものであったが,その後,条件的推論やウェイソン選択課題にも適用されている。メンタルモデル理論も,困難な課題は多くのメンタルモデルの構成が必要とされ,心理論理理論と同様に,認知容量の制約によって困難が生じるとされる。進化心理学 では,人間の認知機構は,領域固有なモジュール moduleの束で構成されていると考えられている。モジュールとは,特定の入力(領域特殊的)に反応し,入力から出力までが自動的でカプセル化されたものであり,進化の過程で形成されたとされる。これらのモジュールの一つに,「利益を得たら対価を支払う」という社会的契約social contractのモジュールがあり,このモジュールは,社会契約を守らない個体に敏感に反応し,互恵的な利他行動を適応的に可能にしたと考えられている。コスミーダスCosmides,L.(1989)は,ウェイソン選択課題における内容効果を,「利益(アルコール)を得たら対価(成人としての義務)を支払う」社会的契約モジュールが喚起された結果と解釈した。意思決定  →概念  →情報処理  →発明・発見  →問題解決  
     
    
        
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                    思考英語 フランス語 ドイツ語  
        
              
                        文字どおり思い考えることが思考であるが、論理学のうえでは、さまざまな概念を結合して判断し、さらに判断を結合して推理することが思考とよばれる。思考はそれぞれの思考内容においては異なるが、形式においては共通性をもつ。形式論理学は、この形式のうえでわれわれが正確に思考するための原理や原則を示す学である。たとえば同一律や矛盾律はそうした原理であって、思考が正確であるための、つまり論理的に整合的であるための基本条件とされる。
 哲学では思考を思惟(しい)とよぶこともあるが、これについてはさまざまな見方がある。一般に思考する能力は知性とか理性とよばれ、感情や意志から区別されるが、「われ思う、故にわれ在り」で有名なデカルト は、思考を感情や意志の働きをも含めた広義での人間精神の働きとしてとらえ、そうした思考を精神(心)の属性と考える。またカントによると、思考は自発的な悟性の機能であって、それは受容的な感性を通じて与えられた直観内容と結び付いて、初めて対象についての認識を与える。つまり単なる思考だけでは認識は成立しない。しかしヘーゲル になると、いっさいの真なる思想は精神の活動である思考を通じてのみ産出されることになる。なおデューイは、こうした思弁としての思考の絶対化を退け、人間の思考は生物体としての人間が環境に適応していくための道具であり、したがってそれは経験の場においてのみ有効であるとした。
[宇都宮芳明]
ドイツのウォルフ および彼の心理学説を継承する18世紀の心理学は、能力心理学といわれ、精神現象をさまざまな能力に分析記述する。思考力・推理力・判断力・記憶力などがそれである。思考活動は各人の思考能力に由来する。しかし、この思考を能力とする考えは、続いて誕生した連想心理学 によって否定され、学説史のなかへ消えていく。連想心理学とは、一般に精神を、観念その他、精神的要素の連合によって説明する心理学説をいう。しかし、この連想心理学説も、実験心理学の成果が明らかになるにつれて、その学説の弱点をあらわにする。
 思考心理学については、1900年ごろから10年代にかけて展開された、ドイツのウュルツブルク大学のキュルペ教授一門の研究が有名である。たとえば、マルベKarl Marbe(1869―1953)は判断についての実験を行った。判断は観念の連合で成立するものでなく、関係についての有意性または志向的性格が伴っており、それに言語表象・心像・動きの感じ・態度など、さまざまな複雑な心的状態が加わって可能となるという。また、イギリス人で当時キュルペ教授の指導を受けていたワットHenry Jackson Watt(1879―1925)は、思考のプロセスに関心をもち、人々が一定の課題条件のもとでどんな連想を打ち出すかを研究した。課題意識が判断の中心であり、判断の問題はこれによって解決できるという結論を導いた。
 ワットのあとに出てくるのがメッサーAugust Wilhelm Messer(1867―1937)で、彼は、ワットの「課題」では思考の問題は解明されないと考えた。一定の課題を付したいわゆる制限反応と、判断そのものとは異っており、前者と違って後者は承認されたり、また否認されたりする関係であるという。そして、ビューラー の研究がウュルツブルク学派 の最後の、しかも最高のものと評価されている。彼は思考要素に3種類あると考えた。心像、知的感情および態度、そして思想がそれであって、このうち思想がもっともたいせつで、これこそが思考プロセスの本質であると論じた。
 これらウュルツブルク学派の研究成果は、フランスのビネーの、マルベをしのぐ業績とともに、連想心理学説に一大打撃を与えた。すなわち、ウュルツブルク学派やビネーの思考実験は、観念の連合を支配するものが存在することを明らかにしたので、思考の本質を観念にみいだし、精神作用は観念の結合によって機能することを主張する連想心理学は、その理論的根拠を失うはめに陥った。
 ウュルツブルク学派以降、二つの心理学説が思考の解明に大きく貢献してきた。一つは、ゲシュタルト心理学 の思考理論であり、他の一つは、ピアジェおよびその影響下にある認知理論である。前者は精神現象を、寄木細工的にみたり、連想主義的に理解したりすることを否定する。また、それは一定の刺激があるときには、かならず一定の感覚があるとする恒常仮定を排除し、さらに要素に作用して精神をまとめあげるある特定概念(統覚・注意作用)をも不要にした。その思考理論の中心概念は、構造転換にある。構造転換という現象は、知覚体制、とくに視覚体制において発揮される。思考には知覚的要素のあるものがあり、思考過程 は洞察的に進行する。ゲシュタルト心理学は論理学から思考心理学を解放し、思考は知覚体制に基礎を置いた法則に支配されるものであることを主張する。
 もう一方のピアジェおよびその影響下にある認知理論は、論理や判断が一定の先験的な規則に従って、人間に強制される事情の解明を実験のねらいとする。そこにおいては、ウュルツブルク学派の諸々の研究業績やゲシュタルト心理学の構造転換、行動心理学の試行錯誤といった先行心理学説の中心概念が、それぞれ思考のある発展段階として位置づけられている。そして、思考の最高段階は可逆性とか同一性といった論理のカテゴリーに基づいた心的操作であり、それは保存という心的作業によって保証されるとした。
[大谷光長・宮寺晃夫]
パターン認識というのは、個物のパターンを言い当てることを意味し、それを機械、すなわちコンピュータまたはそれに類似の装置にやらせる。
 パターン認識は人間の認識の根本的原型ともいうべきものであって、人間の感覚も、知覚も、また知識も、パターン認識でないものはないということを前提とする。今日のパターン認識の理論には2種類あって、第一のものは類の創造であり、第二のものは既成の分類を機械に教えることである。パターン認識にはまだまだ未開拓の問題が多い。パターン認識がいかにして可能であるかを考えることは、人間の認識作用の考察を進めるうえできわめて重要である。
[大谷光長・宮寺晃夫]
思考の発達についての理論としては、とくに形式陶冶(とうや)論と、問題解決学習論と、創造性の教育論とが考えられる。まず、形式陶冶論は精神の形式的能力、たとえば思考力・記憶力・推理力・意志の力などを陶冶することに教育的価値を置く考え方であり、明らかに能力心理学ないしは学習の転移説に理論的根拠を置く理論である。次に、問題解決学習論は、デューイによれば、思考の発動をなんらかの困惑・混迷・疑問のなかにみいだす。人は難事に出会う、そしてそれを解決し、それを乗り越えようとする。このときに作用するのが「反省的思考」である。反省的思考は、当初の当惑し、紛糾し、あるいは混乱した状態から、最後の清澄な、統一された、解決せる状態に至る中間過程で働く思考であって、その思考状態は次の5段階から成り立っている。
(1)可能な解決を暗示で予測する。
(2)経験した困難・困惑を、解決すべき問題へと知性化する。
(3)仮説をたて、必要な観察、資料の収集を開始する。
(4)推理によって観念や想念を吟味・検討する。
(5)仮説を明白な活動によって検証し、できれば未来への展望へと進む。
 最後に、創造性の教育論について触れるが、これはゲシュタルト心理学、ピアジェおよびその影響下にある認知心理学などの諸成果に基づいて、人間の生産性・創造性の発達のため、直観的思考と分析的思考の重要性を説くものである。直観的思考は、分析・立証の手順を踏まないで、問題や事態の意味・重要性を把握したり、またすばやく仮説を生み出したり、諸観念の新しい結合を思い付く働きをする。これに対し、分析的思考は、一歩一歩段階を追って進む。それは、各段階ごとのなかに含まれている情報や操作を十分に意識して進行する。そして、重要なことは、一度直観的思考で得られたその解決は、分析的思考によってよく照合される必要があるということである。それと同時に、その解決は照合に際して、価値ある仮説として十分尊重されねばならない。創造作用は諸情報の役にたつ組合せ、本当にわずかしかない組合せをつくることであり、それは直観的思考と分析的思考との相互補足によって、ますますその可能性を高めることができる。
[大谷光長・宮寺晃夫]
『今田恵著『現代の心理学』(第15刷・1971・岩波全書)』 ▽『藤永保編『思考心理学』(1976・大日本図書)』 ▽『渡辺慧著『認識とパタン』(岩波新書)』 ▽『J・デューイ著、植田清次訳『思考の方法』(1950・春秋社)』 ▽『J・S・ブルーナー著、鈴木祥蔵・佐藤三郎訳『教育の過程』(1986・岩波書店)』 ▽『守一雄著『認知心理学』(1995・岩波書店)』 
 
     
    
        
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                    思考 (しこう) 
        
              
                        目次   思考障害  思考とは,実際に行動として現すことを抑制して,内面的に情報の収集と処理を行う過程である。この場合,機能的に見て思考を二つの型に分けることができる。一つは〈合理的思考〉であって,問題に直面したときにそれにふさわしい解決をめざすという意味で,〈方向づけられた思考〉とも呼ばれる。もう一つは〈自閉的思考 〉であって,空想のようにとりとめのない気まぐれな連想によって生じる非現実的思考である。前者は,問題解決 のための論理的推論を導く過程であり,概念,判断,推理から成る。しかし,発明・発見の過程や芸術的創作の過程などにおいては,問題解決をめざしながらも合理的思考だけではその目的に十分に達することができない。論理の枠にしばられずに自由奔放な連想の後,直観的に認識を生み出す過程もここには含まれているからである。したがって思考のこの二つの型を厳密に区別することはむずかしい。
 そのうえ,意識的過程だけでなく,無意識の中で展開される思考も少なくない。たとえばすぐれた発明・発見が,夢の中での思考を契機として結実することがありうる。にもかかわらず,伝統的には思考は意識(論理的思考)とほぼ同義に用いられており,初期の思考心理学は意識の過程を自分の意識によって観察する方法(内観法)で,その研究を進めてきた。とりわけ連合主義心理学は,過去の感覚的経験のなごりである心像の組合せによって,思考を説明した。しかし心像を含まない思考もありうることが,その後,ビュルツブルク学派 の心理学者たちによって指摘されて以来,思考研究は二つの方向に発展していくこととなった。第1は,思考を意識としてでなく行動としてとらえようとする行動主義心理学の立場からの研究である。J.B.ワトソンは思考を,音声の抑制された自問自答 の言語行動とみなし,のどの微小反応の測定により思考過程を明らかにすることができると主張した。また新行動主義では,思考を反応そのものというよりも,刺激に対して外部的反応をひきおこす前に生じる内部的反応とみなし,これを媒介反応と呼んでいる。いずれにせよ,ここでは思考は刺激と反応との連鎖によりいわば試行錯誤的に解決に迫る過程とみなされる。第2は,思考を場の再構造化の過程としてとらえるゲシュタルト心理学の立場である。ここでは思考が,〈洞察 (見通し)〉または観点変更という知覚の法則で支配される過程とみなされる。その結果,ものごとを一挙に洞察する直観 が,論理以上に重視されることとなる。このようにして思考研究は,思考のよりどころを論理に求めなくなっていった。にもかかわらず論理が思考の到達すべき理想的状況を示していることは明らかである。そこでピアジェは,現代の論理数学にもとづいて思考の論理模型を作り,これを用いて子どもの思考の発達を分析した。こうして,乳児の感覚運動的知能から青年の操作的思考(論理的思考)に至るまでの機能的なつながりが解明されたのである。滝沢 武久 
思考障害 思考障害(異常)disturbance of thoughtは一般に,(1)思考過程(観念連合,思考の流れ)の障害と,(2)思考内容の障害に分けられる。思考過程とは,一定の目的に適合した観念を順次思い浮かべながら判断,推理などによって課題を分析,解決する過程であり,その障害には思考制止,思考途絶,観念奔逸,思考滅裂,思考散乱,保続などがある。思考制止inhibition of ideasとは思考の流れに抑制がかかってスムーズにいかないこと,思考途絶blocking of thoughtとは思考の流れが突然中断してしまうこと,観念奔逸flight of ideasとは考えが次から次へと飛んでなかなか目的に到達しないこと,思考滅裂incoherence of thoughtとは意識が清明であって思考過程にまとまりが欠け,話の筋が支離滅裂であること,思考散乱incoherent thinkingとは意識障害時の話の支離滅裂状態,保続perseverationとは質問が変わっても前の返事が繰り返されることをいう。
 思考内容の障害には,優格観念,強迫観念,妄想 がある。優格観念overdetermined ideaとは支配観念ともいい,感情に強く裏づけられた観念で,その人の思考や行動を持続的に支配するもの,強迫観念obsessional ideaとはその不合理性を自覚しながらも特定の観念にとらわれて離れることができぬもの,妄想とはありうべからざることを病的に確信し,周囲からの説得によっても訂正不能なものをいう。強迫観念は強迫神経症,うつ病,統合失調症に,妄想は統合失調症,妄想病,薬物依存などに認められる。なお,思考障害の特別なものとして,思考への影響性といって,主として統合失調症者の訴える,自分の考えが他人によって操作されるという体験(させられ体験,作為体験の一種で〈させられ思考〉という)がある。この際には他人によって自分の考えが奪われたり(思考奪取Gedankenentzug),他人から考えを入れられる(思考吹入Gedankeneingebung)という体験として訴えられる。保崎 秀夫 
 
     
    
        
    出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」 改訂新版 世界大百科事典について 情報  
	
    
  
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                    思考 
        
              
                        思惟ともいう。はっきりした定義はないが,一般的には,ある対象,事態ないしはそれらの特定の側面を,知覚の働きに直接依存せず,しかもそれと相補的な働き合いのもとで,理解し把握する活動または過程をさす。その活動には,判断作用,抽象作用,概念作用,推理作用,さらに広義には想像,記憶,予想などの働きを含む。また連想心理学では,観念の連鎖をさす。思考は古くから心理学の研究対象として取上げられ,問題解決場面における意識過程の分析や行動の解析が行われてきたが,最近ではコンピュータを用い,シミュレーションなどによる研究もなされている。
                                                           
     
    
        
    出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報  
	
    
  
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                    思考【しこう】 
        
              
                        思惟(しい)とも。精神の諸機能のうち情意的な機能に対する知的な機能から,感覚,知覚,簡単な記憶等を除いた複雑な機能をいう。その作用の本質は,われわれに感覚を通じて与えられた与件を適切に操作・統合して,複雑な環境に適応させるにある。認識,判断,推理,分析等の働きをふくむ。その障害を〈思考障害〉と総称し,思考過程の障害と思考内容の障害に大別される。
                                                           
     
    
        
    出典 株式会社平凡社 百科事典マイペディアについて 情報  
	
    
  
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    普及版 字通 
                            「思考」の読み・字形・画数・意味
                     
		
    
        
    出典 平凡社「普及版 字通」 普及版 字通について 情報  
	
    
  
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		世界大百科事典(旧版)内の 思考の言及  
    		
      【思想】より 
        
          
      …一般に,哲学や文学,芸術,あるいは政治や社会認識,宗教や科学など,さまざまな分野の知識体系と,その根底にある総合的な観念体系を指していう。この根底的観念体系は,行為したり,話したり,書いたりする人間の表現活動のすべて,すなわちまた,知的な思考活動だけでなく想像力や感情をも含む人間の心の働きの表出のすべてであるが,単なる断片(想念)ではなく,人間が生きる世界と,そこでの人間の生き方に関する,なんらかの程度で組織立った(体系的な)理解の仕方である。このような世界と人生についての理解のうち,もっとも組織立った,したがってもっとも論理化された原理的理解は,古来哲学であると考えられたから,しばしば思想の代表的な事例は哲学だと考えられる。…
       
     
         ※「思考」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 
        
    出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」 
	
    
  
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