精選版 日本国語大辞典 「無心」の意味・読み・例文・類語
む‐しん【無心】
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平安朝では〈有心(うしん)〉に対する語。〈有心のひと無心のひとえりいでなむ〉(《亭子院有心無心歌合》),〈さる無心の女房〉(《源氏物語》)など,思慮・分別・風流心のない意。中世に〈有心〉が文学表現の深さの美を表すようになるとともに,〈無心〉も,機知・滑稽を主とした文学的性質を表すものになる。すでに古く,〈無心所着。万葉十六巻に在之。たゞすゞろ事也。あしくよめばその姿ともなきものなり〉(《八雲御抄》)など,無意味な歌をさす言葉として用いられていたが,中世には〈後鳥羽院の御時,柿の本・栗の本として置かる。柿の本は世の常の歌,これを有心と名づく。栗の本は狂歌,これを無心といふ〉(《井蛙抄》)など,洒落を主とした狂歌や連歌の称としても用いられるようになった。ところで,仏語の〈無心〉があり,〈無相〉などと同じく,実体も形相もなく空無そのものというべき真理の顕現した,大乗仏教最高の境地の意とされ,禅宗の花紅柳緑的な悟りの境とも通じる。〈無心無風の位に至る見風,妙所に近き所にてやあるべき〉(《花鏡》)などの用法がそれに当たる。これは〈有心〉と対立する〈無心〉ではなく,その対立を超えた,一種の宗教的ともいえる高次元の平淡無味な美であり,中世における美的理念の一つの達成とみなしうる。芭蕉の〈風雅の誠〉や良寛の〈任運〉,さらに漱石の〈則天去私〉など,後世への系譜もたどることができる。
→有心
執筆者:上条 彰次
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