道明寺(読み)ドウミョウジ

デジタル大辞泉 「道明寺」の意味・読み・例文・類語

どうみょう‐じ〔ダウミヤウ‐〕【道明寺】


大阪府藤井寺市にある真言宗御室おむろ派の尼寺。山号は蓮土山。推古天皇の時代、菅原氏の祖である土師連八島はじのむらじやしまが自宅を寺として土師寺と称したのが始まりといわれる。道真の没後、天満宮が祀られ、道明寺と改称。本尊の十一面観音像は国宝。
謡曲脇能物観世金剛喜多流。僧尊性そんじょうが霊夢により道明寺に行くと、白太夫の神が数珠にするための木槵樹もくげんじゅの実を授ける。
浄瑠璃菅原伝授手習鑑」の二段目きりの通称。太宰府への途中、菅原道真が河内土師はじの里に伯母を訪れると、時平の手先が襲ってくるが、みずから刻んだ木像が奇瑞をあらわして助ける。

道明寺ほしい」の略。 夏》
道明寺粉を材料として作った和菓子。
[類語]餅菓子菓子大福大福餅草餅栃餅柏餅桜餅葛切り葛餅葛桜わらび鶯餅求肥ぎゅうひ求肥飴ぎゅうひあめ素甘すあま柚餅子ゆべし

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精選版 日本国語大辞典 「道明寺」の意味・読み・例文・類語

どうみょう‐じダウミャウ‥【道明寺】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ] 大阪府藤井寺市道明寺にある真言宗御室派の尼寺。山号は蓮土山。菅原氏の祖土師(はじ)氏の氏寺で、土師連八島が聖徳太子の河州尼寺建立の願いに応じて自宅を寺として土師寺と称したのに始まる。境内には天満宮がまつられた。天慶四年(九四一)改称。本尊の十一面観音立像は国宝。土師寺。
    2. [ 二 ] 謡曲。脇能物。観世・金剛・喜多流。作者不詳。河内国(大阪府)道明寺で、僧尊性が天神の使いである白太夫(しらたゆう)の神から菅公と道明寺の関係を聞き、数珠の玉として木槵樹(もくげんじゅ)の実を与えられる。
    3. [ 三 ] 浄瑠璃「菅原伝授手習鑑」の二段目切の通称。菅公手彫りの木像が奇瑞を現わすが、養女苅屋姫と別れ配所に向けて旅立つ場面。
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. どうみょうじほしいい(道明寺乾飯)」の略。《 季語・夏 》 〔俳諧・をだまき(元祿四年本)(1691)〕
      1. [初出の実例]「貯へて風入るる日や道明寺〈碧梧桐〉」(出典:続春夏秋冬(1906‐07)〈河東碧梧桐選〉夏)
    2. 道明寺粉を材料としてつくった和菓子。道明寺だんご、道明寺桜餠、道明寺つばき餠などがある。

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日本歴史地名大系 「道明寺」の解説

道明寺
どうみようじ

[現在地名]藤井寺市道明寺一丁目

誉田御廟山こんだごびようやま古墳(応神天皇陵に治定。現羽曳野市)の東北方、市野山いちのやま古墳(允恭天皇陵に治定)の南方に位置し、東に道明寺天満宮がある。明治初年の神仏分離まで当寺は現天満宮所在地にあり、天満宮と一体であった。真言宗御室派、山号蓮土山、本尊十一面観音、尼寺。

〔開創〕

古代当地は志紀郡土師はにし(和名抄)に属し、同郷には喪葬や土器製作に従事した土師氏が集住。当寺は土師連八島が私家を精舎としたことに始まると伝え、そのため土師はじ寺の称もある。当寺の伽藍開基記(道明寺天満宮蔵)は「河州志紀郡土師里、有精舎、号道明寺、(中略)推古天皇本願、以聖徳太子、為開創之祖」と土師連八島のことに触れていないが、「国花万葉記」には「推古天皇の御願寺、聖徳太子の開基なり、土師連八島承りて仏塔をたつ」とある。開創時の規模について伽藍開基記は「薬師堂、鐘楼、及僧坊八所」と記し、道明尼律寺記(道明寺天満宮蔵)によれば、境内は東西一二〇歩・南北二二〇歩あり、金堂・五重塔・南大門など七堂伽藍を具備していた。また神護景雲三年(七六九)若江郡稲葉いなば菱江ひしえ(現東大阪市)の二村を寺領として下賜されたという(道明尼律寺記)。「江談抄」には「菅家本姓者土師氏也。河内国土師寺是某先祖氏寺也」とみえ、「伊呂波字類抄」には「土師寺ハシテラ」「号道明寺、土師氏寺也、俗為菅原本姓、菅原氏寺也」とある。現道明寺天満宮境内のすぐ南、南北三〇〇メートル・東西一五〇メートルにわたる範囲に奈良前期創建と推定される寺院跡があり、道明寺草創地とみられている。現在は塔の一部と心礎などの礎石を残すにすぎないが、道明寺天満宮に残る絵図などから、四天王寺式の伽藍配置であったことがうかがわれる。

〔古代〕

大和菅原すがはら(現奈良市)に集住した土師氏を祖先とする菅原道真が、中央貴族として活躍していた頃、当寺住持は道真の姨覚寿尼であった。道真はその縁から度々当寺を訪れ、三六歳の夏には十一面観音を彫刻、四〇歳の時には五部の大乗経を書写したという。そしてその経文を境内に納めたところ、その経塚から木樹が生え、その実は経巻の形をしていることから霊験があるとされた(以上道明尼律寺記)。なおこの話は「国花万葉記」や伽藍開基記では開創時のこととして記されている。この霊験譚は能「道明寺」に取上げられている。

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改訂新版 世界大百科事典 「道明寺」の意味・わかりやすい解説

道明寺 (どうみょうじ)

大阪府藤井寺市にある真言宗御室派の寺。山号は蓮土山。寺伝によれば,聖徳太子の尼寺建立の発願により,土師連八島(はじのむらじやしま)が私邸を捨ててこれにあて,土師氏の氏寺として創建。土師寺ともいう。そののち土師氏の一族菅原氏も氏寺として崇信し,菅原道真の伯母覚寿尼が入寺した。道真が大宰府に左遷されるとき当寺を訪れたという故事は,江戸時代に《菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゆてならいかがみ)》の舞台となって歌舞伎や浄瑠璃でよく演じられ,当寺は一躍有名となった。1572年(元亀3)兵火にあい,1615年(元和1)大坂夏の陣の戦場となったが,そののち復興した。尼寺であり,近世の寺領170石。本尊十一面観音立像(平安時代,国宝),道真の作と伝える十一面観音立像(重要文化財)があり,聖徳太子十六歳立像(鎌倉時代,重要文化財)は胎内に1286年(弘安9)の願文と経を納める。代々の住尼が作った道明寺糒(ほしいい)(乾飯)は,もち米を蒸して天日で干した保存食で,江戸時代から当寺の名産として著名だったが,いまは桜餅など風雅な菓子の材料として好まれている。
執筆者:


道明寺(食料) (どうみょうじ)

乾飯(ほしいい)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「道明寺」の意味・わかりやすい解説

道明寺(地名)
どうみょうじ

大阪府南東部、藤井寺市(ふじいでらし)の一地区。旧道明寺町。道明寺台地(国府(こう)台地とも)上にある。東高野(ひがしこうや)街道沿いに、菅原道真(すがわらのみちざね)ゆかりの道明寺と道明寺天満宮があり、梅・桜の名所としても知られている。近畿日本鉄道南大阪線道明寺駅があり、道明寺線を分岐する。

[編集部]


道明寺(寺)
どうみょうじ

大阪府藤井寺市道明寺にある真言(しんごん)宗御室(おむろ)派の尼寺。蓮土山(れんどざん)と号する。本尊は十一面観音菩薩(かんのんぼさつ)。推古(すいこ)天皇の時代に土師連八島(はじのむらじやしま)(菅原道真(すがわらのみちざね)の祖)が私宅を寺とし、土師寺と称して土師氏の氏寺としたのが始まりといわれ、のち土師氏が菅原姓を賜ると菅原氏の氏寺となった。菅原道真の伯母である覚寿尼(かくじゅに)が当寺に在住したので、道真もしばしばこの寺を訪れたといわれる。道真没後、当寺境内に天満宮が祀(まつ)られ、道明寺と改称された。平安時代には大いに栄えたが、室町末期の兵火により堂塔を焼失し、天正(てんしょう)年間(1573~92)に再興された。のち明治維新には神仏分離により天満宮と分離。本堂に安置されている平安前期の十一面観音立像(国宝)、伝菅原道真作の十一面観音像、聖徳太子立像(ともに国重要文化財)など寺宝が多い。また代々の尼僧のくふうによる道明寺糒(ほしいい)(乾飯)は有名。

[眞柴弘宗]


道明寺(菅原伝授手習鑑)
どうみょうじ

菅原伝授手習鑑

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百科事典マイペディア 「道明寺」の意味・わかりやすい解説

道明寺【どうみょうじ】

大阪府藤井寺市道明寺にある真言宗御室派の寺。土師寺(はじでら)とも。推古朝に土師氏(菅原氏の祖先)が氏寺として建立し,聖徳太子が命名したと伝える。菅原道真の伯母覚寿尼が住してより尼寺となる。寺内の天満宮は維新後土師神社と改称。本尊の十一面観音立像(国宝)は,ヒノキの一木造で,高さ98cm,檀像風の彫刻で,9世紀末ころの作。道明寺糒(ほしいい)(乾飯)は尼僧の考案による携行食として有名。
→関連項目氏寺藤井寺[市]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「道明寺」の意味・わかりやすい解説

道明寺
どうみょうじ

大阪府藤井寺市東部の地区。地名は,本尊『十一面観音立像』 (平安時代,国宝) で有名な土師氏の氏寺で,真言宗尼寺の道明寺があることに由来。東隣に道明寺天満宮があり,境内はウメの名所。付近には允恭天皇陵をはじめ古墳が多く,古市古墳群の北端をなす。河内国府跡もあり,史跡が多い。近畿日本鉄道道明寺駅は長野線と南大阪線の分岐点。

道明寺
どうみょうじ

道明寺糒 (ほしいい) のこと。道明寺でつくられた乾飯 (かれいい) が始りといわれ,この名がある。現在用いられているのは,もち米を蒸したうえ,熱風で乾燥させ,細粉また粗びきにしたもので,つばき餅,桜餅,道明寺お萩などの菓子の材料のほかに料理にも用いる。昔は貯蔵用,特に携行食糧であった。

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デジタル大辞泉プラス 「道明寺」の解説

道明寺

大阪府藤井寺市にある尼寺。真言宗御室派。山号は蓮土山。推古天皇の時代に建立された土師(はじ)氏の氏寺が起源と伝わり、土師寺ともいう。本尊の十一面観世音菩薩像は菅原道真の作といわれ、国宝に指定。道明寺糒(ほしい)(道明寺粉の原料)の発祥地として知られる。

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