デジタル大辞泉 「青」の意味・読み・例文・類語
あお〔あを〕【青】
1 色の名。三原色の一つで、晴れた空のような色。
2 馬の毛色で、青みがかったつやのある黒。また、その馬。
「―に乗って、峠を越すと」〈漱石・草枕〉
3 「青信号」の略。
4 「
[接頭]名詞や形容詞に付いて、未熟な、若い、などの意を表す。「
[類語](1)真っ青・
( 1 )アカ・クロ・シロと並び、日本語の基本的な色彩語であり、上代から色名として用いられた。アヲの示す色相は広く、青・緑・紫、さらに黒・白・灰色も含んだ。特にミドリとは重なる部分が多く、「観智院本名義抄」の「碧・緑・翠」には「アヲシ」「ミドリ」などの訓が見える。
( 2 )色名としてのアヲは、ミドリ(これも若やいだ状態を表わす意が早い)が緑色(グリーン)の色名として定着するにつれ、狭く青色(ブルー)を示すようになるが、なお、ブルー以外の色にも使われ続けている。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
色名の一つ。日本工業規格(JIS)では10種の有彩色,5種の無彩色,計15色名を基本色名に定めているが,青は有彩色の基本色名の一つである。スペクトル色(可視光線の単色光の示す色刺激)は,人によって色感覚も異なり,その波長も一定でないが,青は波長ほぼ450~455mmの範囲にある。
靑(青の正字)という漢字は生と丹の合成字であり,生は草木の茂る形,丹は顔料をとる石,ひいては色の意,すなわち青は生い茂る草木の色である。そこで若々しく生き生きしたさまを象徴する色彩となる。青松,青春,青年などの青がそれである。さらに未熟の意味ともなり,青田,青梅,青侍などという表現が生まれる。これらの場合,青は緑と同一視されているが,それは両者の混用ではなく,青からしだいに黄色を帯びて緑に至るすべての色を一括して青と呼んでいるのであって,この用法は今日の青信号という語などにも残っている。青はまた空の色である。空の色は東西南北で変化があるが,《淮南子(えなんじ)》天文訓によれば,とくに東方を蒼天といい,《説文(せつもん)解字》は,青を東方の色と明記している。四方を守るいわゆる四神のうち,青竜は最も貴いものとして東方に位置する。仏教では極楽浄土の七宝の池に咲く4種の蓮の花のうち青色が第1とされ(《阿弥陀経》など),アジャンター壁画の著名な菩薩も青蓮華を手にしている。インドでは,クリシュナ神が常に青で彩られるが,ほかにシバ神,ラーマなども青く彩られることがある。古代エジプトでは天の神アモンの肌が青である。天界の支配者としての神は蒼天の上に立つ者として描写されることが普通で(旧約聖書の《出エジプト記》24:10および《エゼキエル書》1:22,《ヨハネの黙示録》4:6など参照),キリスト教絵画では,神(キリスト,聖母子)の像はしばしば純粋な青地に表される。またこの青は,赤と組合せになって神の属性(智,赤は愛)を象徴するものと解されており,さらに神の侍者としての天使ケルビムは青(セラフィムは赤)に彩られる。聖母マリアが赤い衣に青い外衣で表されるのも,聖母において示された神の智と愛を表現するものと思われる。青は宝石ではサファイアの色であり,かくてサファイアはこの色のもつ象徴的意味によって,十字架,司教指輪などに多く用いられる。日本では,筑前(福岡県)宗像神社の沖津宮(沖島)の御神体が青玉であったことが《筑前国風土記》逸文に見える。
執筆者:柳 宗玄
日本語〈あお(あを)〉は,青空,青海,青葉,青草と熟されるように,青blueと緑greenとにまたがる表現域をもっている。現代の色名帳ないし色名辞典の〈あおいろ〉系統にも,青,緑,藍(あい),縹(はなだ),紺(こん),群青(ぐんじよう)などが含められているのが普通である。それで,昔から語源究明を試みる多くの学者らによって,〈あを〉は草木の〈生(お)ふ〉から〈多(おほ),大(おほ)〉に転じ,それが大空,大海の〈あを〉に通じたのだと説明され,この説明に一般的合意が集まっている。なるほど,繁茂する草木の色から,仰(あお)ぎみる天空の色や,見はるかす大海の色まで,全部いっしょに説明づけるとしたら,これ以外には理屈のつけようもなかったであろう。しかし,社会科学的観点に立つかぎり,〈あお(青)〉の色名によってblueとgreenとの両者を概念させた起源は,7~8世紀に律令国家が成立したとき,中国から制度文物を直輸入し,色彩に関しても五行(ごぎよう)思想に基づいた五色(青,赤,黄,白,黒)を基本的な色とみる考え方が採用されたことに求められなければならない。じっさいに,記紀万葉にあらわれた色名を調査した学者(城戸幡太郎,佐竹昭広,伊原昭など)によると,上代日本語のなかで純粋に色の概念として抽象できていたのは,青,赤,黄,白,黒に限定されるという。いかに五色の考え方に規制されるところが大きかったか,ということを知る。加えて,平安期をも含めた古代宮廷社会においては,衣服から装身具まで,位階や身分に応じて使用すべき色(当色(とうじき))や使用不許可の色(禁色(きんじき))が厳格に定められてあったから,必然的に,色彩の感じ方にも尊卑観念のつきまとうことは避けられなかった。そして,位袍(いほう)のシステムにおいて,一~三位が紫または黒,四・五位が赤,六・七位が緑,八・初位が縹と定められていたから,〈あお〉の色は,greenおよびblueをひっくるめて尊貴の色に遠いという感じ方が固定してしまった。縹とは,藍染により得られる色で,古くは山藍の葉や鴨頭草(つゆくさ)を摺りつけたものらしいが,まもなく中国から〈藍建て〉の染色技術が渡来し,中世以降には一般庶民の労働着から晴着にまで広く愛用され,安価,鮮明,堅牢,虫よけ(蛇をさえ寄せつけないとされた)の効用により戦前まで永く使用されつづけた。赤や紫に比べて青(緑をも含めて)が地味で沈鬱と感ずる人がいたら,それは律令制以来の伝統的文化構造のなせるわざである。
執筆者:斎藤 正二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「あお」ということばは古くから使われていたが、色名として用いられた場合に日常生活では、かならずしも「みどり」と厳格に区別して使用されているとはいえない。これは現在の日常生活でもそうであって、たとえば、交通信号のあおが、みどり色であっても、あおとよんであまり抵抗を感じない場合があるのは、それであろう。また、あおは、形容することばとしても使われる。あおあおした芝生という表現など、いくつもある。
ところで、色は、光刺激が目に入ってきたときに感じることは周知のとおりである。青にほぼ対応する光の波長は467~483ナノメートルの部分である。また表面色の色表示体系上において、日本工業規格(JIS(ジス))での一般色名の青は、次のような範囲の色につけられている。すなわち、色相が10.0PBにおいて、明度3.5~6.5、彩度7~9および明度3.5~5.5、彩度9~13の範囲である。
青から連想されるものは、空、水が代表的なものであり、青が象徴しているものとしては、静寂、涼しさ、深さ、さみしさなどがあげられる。青色を見たときの感じも連想、象徴とは無関係でなく、澄んだ、冷たい、強い、やや男性的などといったものであり、この感じは角形の図形の感じと類似している。このようなことから青は、寒色系の色に入り、ある意味では寒色系を代表する色といえよう。青系統の色彩は一般的に人々に受容されやすい。色彩の好みの調査でも、青系統の色が上位を占める。したがって、青も人々にあまり嫌われない色といえよう。また青は赤などに比べ、同じ位置に置かれても、やや後ろにあるように見えるところから、後退色ともいわれている。
[相馬一郎]
…キューバのホセ・マルティとならぶ,モデルニスモ詩の代表者。当初は中編小説《はかない物語》(1882)を発表して散文作家として出発したが,その後ミュッセ,ゴーティエ,ベルレーヌなどの影響を受けたモデルニスモ詩を,みずから1894年発刊した雑誌《青》に発表し続けた。同誌は,ラテン・アメリカのモデルニスモ詩運動を語るさい,看過できない重要な刊行物である。…
…キューバのJ.マルティとメキシコのグティエレス・ナヘラをモデルニスモ詩の創始者とすれば,ダリオはその継承者であると同時に,完成者であるともいえよう。11歳のときから詩作活動に入った早熟の詩人であり,1888年に発表した《青》の中で音楽的リズムと華麗な文体とを通じて,スペイン語詩の主潮であったロマン主義にみられる感傷的な詩風を刷新し,若くしてモデルニスモ詩運動の代表的詩人としての地位を確立した。そして96年,先駆的な詩としての《青》をより完全なものにした《世俗の詠唱》を世に問い,フランスのロマン派,高踏派,象徴派の詩風をスペイン語詩の伝統に注入して,その〈近代化〉をいっそう確実なものにした。…
…中華人民共和国西北部にある省。略称は青。北東は甘粛省,北西は新疆ウイグル自治区,南西はチベット自治区,南東は四川省と接する。…
…私たちは物を見るときその形を知覚するが,黄だとか青だとか,あるいは赤だとかの色も同時に知覚する。このように色とは私たちの目が光に対して感ずる知覚の一つであると表現することができよう。…
…スペクトル色(可視光線の単色光の示す色刺激)は,人によって色感覚も異なり,その波長も一定でないが,緑は波長ほぼ480~510nmの範囲にある。
[象徴としての緑]
緑は青と黄とを重ねた色であるが,その概念は古今東西はなはだあいまいで,青から黄にいたるさまざまの色を含み,しばしば青および黄とも混同される。それは,自然界において緑色を呈するものが主として草木の葉であり,それが青から黄にいたるさまざまの色を示すからであろう。…
※「青」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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