クライン(Abraham Moses Klein)(読み)くらいん(英語表記)Abraham Moses Klein

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クライン(Abraham Moses Klein)
くらいん
Abraham Moses Klein
(1909―1972)

カナダ詩人、法律家。ユダヤ系。処女詩集『ユダヤ人も持たざるや』(1940)と『詩集』(1944)でユダヤ人の豊かな、しかも苦渋に満ちた世界を歌い、長詩『ヒトラーリアッド(ヒトラーの歌)』(1944)でナチス暴虐を激しく糾弾し、『ゆり椅子(いす)』(1948)でフランス系カナダの人と風物を穏やかに描いた。ただ一編の小説『第二の書』(1951)は、はるかに「第一の書」である旧約の世界と呼応し、イスラエル建国に至るまでのユダヤ民族の苦しい歩みを情熱の沈潜した詩的な文章で感動的に描き、20世紀カナダ文学最高の作品という定評がある。また優れたジョイス研究家でもあった。1950年代なかばに病を得て世間との交渉を絶った。

[平野敬一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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