( 1 )①は、もと水兵・水夫の着る軍服および仕事着であった。一八五七年にイギリス海軍が制服に定め、一九世紀には世界中に広まった。
( 2 )②は、一八六四年にイギリスのエドワード王子が着てから子供服として流行し、日本でも明治一八年(一八八五)に明宮(はるのみや)(=大正天皇)が着用し、上流階級の子供服として広まった。
水兵・水夫(セーラーsailor)の着る軍服および職能服。またそれをまねた子ども服,婦人服とくに女学生制服をいう。前をV字形に開き上背部を覆う四角い襟と,スカーフやタイを,襟をくぐらせて前で結ぶのが特徴。この襟の起源は,18世紀ヨーロッパの男の辮髪(ピッグ・テール)による服の汚れを防ぐためにつけた別布で,海上では襟を立てると音声が聞き取りやすいので髪形変化後も存続し,セーラーのシンボルとなった。スカーフははじめ汗拭き布であった。19世紀中期~20世紀前期の海軍水兵服の一組は,庇がなく平らな形で鉢巻に艦名入りのリボンを巻いた水兵帽,頭からかぶって着るセーラー襟がついた上衣,その下に着るボートネックのシャツ,裾広がりで前あきがドロップ・フロント(蛙股)のズボンで代表される。色は春秋冬が濃紺,夏は白,襟は青で白線の縁飾をめぐらす。スカーフは黒。袖に階級兵科などを示すマークを縫いつける。1857年にイギリス海軍はこの服を制服に定め,19世紀中には世界中で模倣され,伝統的海軍服として定着した。細部のデザインは国ごとに異なり,たとえば1940年のイギリス海軍では襟の白線は3本で,帽子のリボンは左脇で飾結びにする。アメリカ海軍では線に加えて両角に星章を入れ,三角のスカーフは長く結び垂れ,白木綿のゴブ・ハットをかぶる。フランスでは水兵帽の頂に赤いポンポンをつけ,ドイツ海軍の帽子のリボンはひじょうに長い。同様に長いリボンをさげたソビエト水兵のシャツは横縞である。日本では幕末に幕府海軍の一部で用いた。維新後イギリス式を採用した日本海軍は,作業衣として水兵服を支給したが,1872年(明治5)〈海軍服制〉で正式に制定した。襟の白線は1条,シャツには青い縁取りがある。水兵服を日本海軍の俗語でジョンベラといった。現在の海上自衛隊では海士長以下の服として,ズボンはふつうのズボンの作り方に,襟もとにのぞいたシャツは胸当てに変化した。
子ども服としては,1864年にイギリスのエドワード王子が,水兵の献上した服を着てから,世界中に流行し,活発な愛らしさでズボンをスカートにかえて少女服,若い女性の遊び着ともなった。20世紀初頭に,海軍御用テーラーのピーター・トムソンがワンピースの通学服にデザインして売り出し,多数の女生徒がこれを着た。日本では欧化熱のさかんな1880年代に上流階級は子どもに洋服を着せ,85年に明宮(はるのみや)(大正天皇)が水兵服を着用したところから一般にも広がり,明治・大正・昭和と一貫して学齢前の子ども服の主流を占めた。第1次世界大戦直後に和服の非活動性が論議されはじめ,1919年にはセーラー服など洋服の女生徒通学着を発売する既製服店もあらわれ,運動服に採用する女学校もあった。関東大震災(1923)後,お茶の水女高師付属高女,雙葉高女などセーラー服着用を許可するところはかなりの数となり,昭和初頭にかけて制服に定める女学校は急速に増え,大都市から地方へと伝播した。女学生のセーラー服は,水兵服型の上衣と紺色のひだスカートのツーピースで,襟の線やタイの色は学校によって独自のくふうをこらしている。
執筆者:柳生 悦子
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セーラーカラー(水兵襟)のついたスーツ。前がVネックで後ろが四角の襟をセーラーカラーといい、一般にブレードの縁どりがつき、スカーフやリボンを伴う。19世紀後期に制定されたイギリス海軍の水兵服からきており、海浜着として子供服や婦人服にこの襟が用いられ、その後スポーツ服に広がっていった。日本でも20世紀初頭の子供服に散見され、昭和初期にはひだスカートと組み合わせて、女子学生服に採用されていった。
[辻ますみ]
…だがこの洋装化は短期間で終わり,90年代前半には和服に復帰し,体操の必要から独特の女袴が開発され,それが20世紀初頭から高等女学校,女子師範等の制服として普及した。運動服としてセーラー服型は1906年文部省から府県に通知されたが,服装の民族性を配慮した植民地の学校や国内のキリスト教主義学校を除いて,〈婦徳〉養成の観点から和服への執着が続いた。しかし関東大震災(1923)の経験から和服の非機能性が問題視され,30年代ころから運動服としてのセーラー服型が女子用通学服として制服化されるに至った。…
※「セーラー服」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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